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しおりを挟む「アシェル~今日は何食べる~?」
「うーん…今日は、Bランチにしようかな。」
「うふふ~。僕と一緒~!オークステーキ美味しいよね~。」
いつものようにノーマン様とハミッシュ様と学園内の食堂で昼食を食べにきた。ここの食堂のご飯は、父さんや母さん程じゃないけどとても美味しい。
……父さんと母さんが作ったご飯食べたいなぁ…。みんな元気にしてるかな。
僕が『魔法科の銀の天使』と言われるようになってから、愛人候補として声をかけられる事が少なくなった。それはなぜかというと…。
「アシェル様!こちらにお席をご用意致しました!」
「あ…ありがとうございます。あの…僕は平民なので様付けはやめていただければ…。」
「とんでもない!この様に美しい方を呼ぶのに様付けは必要です!」
「………ははっ。」
なんと親衛隊なるものが出来てしまったのだ。もう乾いた笑いしか出ない。でも彼らは、誰かが僕に愛人候補として声をかける前にその人物を止めてくれているようなんだ。助かってるのは事実だし無碍にも出来ない。
「アシェル、笑え笑え。『天使の微笑み』忘れてるぞ。」
ハミッシュ様にそう言われて、とりあえずにこっと笑っておく。すると。
「きゃぁぁぁ!アシェル様の天使の微笑み!美しくて魔法の腕も素晴らしくお優しく人としても素晴らしいアシェル様が!微笑んでくださったぁ!」
……一体僕をどうしたいの。なんでこんなことになってるの…。
「……僕は平民として慎ましく生きているはずなのに、なんでこんなことになってるの…。」
「は?それ本気で言ってる?」
「ないね~。それだけ目立つのに、慎ましくとか無理だよね~。」
「派手な事をしてないつもりでも、入学試験で既に派手な事しでかしてるし。」
うぐっ!
「見た目が既に派手だもんね~。控えめにしてたって控えめになんてならないし~。」
ぐはっ!
「「だから慎ましく生きるなんて無理!」」
「……もうやめて。僕死んじゃう…。」
恥ずかしすぎて死にそうだ…。もう何処かに隠れたい…。
「アシェル!」
呼ばれてふっと見上げると、デリック様とローレンス兄上がいた。
「よしよし。親衛隊はちゃんと働いてるな。」
え?どういうこと?そう思ってローレンス兄上を見る。苦笑したローレンス兄上からとんでもない言葉が出た。
「あのね、この親衛隊、デリックがけしかけたんだよ。」
な、な、なんだって!?おかしいと思ってたんだ!こんな急に親衛隊なんて出来るなんて!まさかデリック様のせいだったなんて!!
「あはは!『魔法科の銀の天使』って噂になっただろ?これは使えるって思って、お前のファンに親衛隊作ったらどうか?って言ってみたんだよ。
そうすればアシェルに会えるし話せるかもしれないし側にいられるかもなって。そしたらあっという間に出来上がってさ!俺もびっくり!あはは!」
あはは!じゃない!う~……。
「でも実際助かってるでしょ?僕もいい手だと思うよ。」
「うぅぅ…。それは確かに、助かってはいるのですが…。ローレンス兄上、父さん達には内緒にして下さい。」
「あ、ごめん。もう手紙出しちゃった。えへ。」
えへ。て可愛いけど可愛くない!嘘でしょ!?コレ、僕の家族皆に知られちゃってるの!?…もうヤダ…。恥ずかしくて死にそう…。本当に死んじゃう…。お願いだから平民として慎ましく生きさせて…。
「あー…アシェル、その顔やめような。…うん、ヤバいぞ。」
「…真っ赤な顔して、涙目でうるうるはヤバい…。」
そんな事言われたって!そんな風にさせたのは貴方達じゃないか!なんて思っても立場上言えない…。
顔を隠す様にしてテーブルに突っ伏した。
それからもそもそと食事を摂る。これ卒業まで続くのかなぁ…。家に帰ったら皆になんて言われるんだろう。母さんのことだから絶っ対ギルドの皆にも話してるはず…。………長期休み帰るのやめようかな。
「あ、アーネストだ。……相変わらずノルベルはアーネストにべったりだな。」
ハミッシュ様がそう呟く。ハミッシュ様の視線を追うと、少し離れたところでアーネスト様ともう1人知らない誰かが一緒にいた。あの人がアーネスト様の婚約者か。……なんだ、やっぱり婚約者がいたんだ。
そう思っていたら、パチっとアーネスト様と目が合った。ドキッとしてふいっと目を逸らす。
…なんで僕目を逸らしたんだろ。そもそも僕を見てたかどうかなんて分からないのに。……子供の頃に告白されたからって意識しすぎだよね。僕、自意識過剰かも。馬鹿みたい。
「あ、あの人僕知ってる~。ノルベル・パーキンス伯爵令息様でしょ~?すごく可愛い顔してるから、お茶会とかでも人気だったんだよ~。僕は男爵家だから一緒にお茶会したことないけど、噂は良く聞いてた~。へぇ、スタンディング様の婚約者になったんだ~。」
へぇ、そうなんだ。遠目だからはっきり見えないけど、確かに可愛らしいお顔をされてると思う。
あれ?なんか一瞬、パーキンス様と目が合った?…というか、睨まれた??
なんだろ…気のせいかな。うん、気のせい、だよね。だって僕、会ったこともないし話したこともないし。
「アシェル、一応伝えとくだけ伝えとくな。」
ん?ハミッシュ様が声を落として話しかけてくる。
「さっきノーマンが言ってたように、ノルベルは小さい頃結構チヤホヤされてたんだ。確かに顔は可愛いんだけど、ちょっと性格がな。自分が1番可愛いと思ってるからアシェルの存在が気に入らないかもしれないんだ。親衛隊も出来たしな。だから何かあるかも知れない。…ま、杞憂かも知れないけど一応知らせておくな。」
え、なにそれ。そんな事になったら僕何も出来ないよ。
「大丈夫。もしそうなったとしても僕達がちゃんと守るから。ね、アシェル、そんな顔しないで。」
不安になった僕に明るくローレンス兄上が声をかけてくれて頭を撫でてくれた。
「…ごめんなさい、ローレンス兄上。ありがとうございます。」
僕、皆に迷惑かけちゃってるな…。兄上達に頼るのは本当に困った時だけにしよう。なるべく穏便に、波風立たせないようにしよう。
でもそんな僕の思いとは裏腹に、いろんなことに巻き込まれるようになっていった。
* * * * * * *
~ローレンスから手紙を受け取った家族の会話~
「お、ローレンスからの手紙だ。」
「ローレンス兄上からの手紙!?兄ちゃんの事書いてある?」
「多分な。えーっと…なになに……………はぁ!?マジかよ!?」
「エレン、どうしました?何が書かれているんです?」
「…アシェルが、学園で噂になってるって。それも『魔法科の銀の天使』だって。それで親衛隊も出来たって……。」
「親衛隊!?え、なにそれ!?どういう事!?」
「……確かにエレンにそっくりですからその評価も当たり前ですね。」
「……ぶっ…あははははは!!アシェルっ…親衛隊って…さすがの俺もそんなもんなかったぞっ…ぷくくくくっ……さすがはアシェルっ…あはははは!」
「エレン、そんなに笑う事ですか?」
「だって…だって親衛隊だぞ!? くくく、王道じゃん!学園物と言えば親衛隊だろ!…生徒会じゃねぇけどなっ…くくっ、どこの世界でも一緒なんだな!……あはは!」
「え?何が王道なの?意味わかんない。父さんわかる?」
「いや。俺もよくわからん。」
「こうしちゃいられねぇ!俺、ギルドの皆に知らせてくる!!」
「あ!母さん!?」
「……やれやれ。俺たちも行こうか。」
「そうだね。それにしても母さんてたまに意味のわからない事言うよね。あと皆が知らない事知ってるし。」
「そうだな。」
「父さんは理由知ってる?」
「知ってるが、内緒だ。」
「ケチ~。」
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