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しおりを挟むとなれば、次の問題は…。
「…俺、自分が生まれた世界に戻りたいんです…。だから、ここにはずっといられないというか…。」
そう。俺は魔法が使えるこの世界より、地球で今まで通り生きていきたい。
確かにチート並みの力を持ってはいるけど、それを使って何かしたいというのはない。
向こうは魔法が使えないけど、特に不便でもない。それに魔物や魔王なんて存在もないから比較的平和だ。
そして1番は家族。俺は今まで何度も召喚されてきたけど、家に帰りたかったし家族に会いたかったから自力で帰還した。その力もあったしな。
「なんだ、そんなことか。別に我はそなたと居られるのならどこの世界でもかわまんぞ。」
え、ついてくる気!?
「でも、魔法がない世界ですよ?魔素がないですし、魔王様でも何もできません。」
「ふむ、そうなのか。変わった世界であるな。だが、力が使えぬからと言ってそこまで不便でもなかろう。
ただ、魔力は固めて持って行った方が良さそうだな。何かの時に使えるであろう。たまにこちらに戻る必要もあるし、その時に魔力がないというのは困るからな。」
「え。持っていけるんですか?」
「我を誰と思うておる。最強の魔王ぞ。…ほれ。」
そう言って手のひらに魔力を集めたと思ったら、丸い水晶玉みたいな物が出来上がった。
すごい、これ魔力の塊だ。こんなこと出来るなんて…。
「魔素のない世界であっても、この魔力を取り込めば魔法は使える。いくつか持っていけば問題はないな。」
「…因みに、こちらに戻る必要があるとは?」
「我は魔王だ。魔族の長。そして、今は人間側と友好関係を築いておるが、全ての魔族がそうとは限らん。我が不在の間に人間共へ戦いを仕掛けられても困るのでな。たまに戻り確認せねばならん。…神との約束であるからな。」
そうなんだ。魔王様って、結構真面目だな。
じゃあ俺が向こうに戻ることも問題はない…。これもクリア。
じゃあ次の問題だ。
「あと…俺はまだ結婚とかは考えられないです。それに、男同士っていうのも…。親も認めてくれないだろうし…。」
「ふむ。ならば親に認めてもらい、そなたが我のことを好きになれば良いのであろう?」
え、なんでそんな簡単に?
「あの…俺が魔王様を好きになると、確信してます??」
「当たり前であろう。我らは番。惹かれ合うものだ。先程の口づけは嫌であったか?」
……嫌、じゃない。嫌じゃなかった。嫌悪感もなく、ただ気持ちいいしか無かった。これって…そういうことなのか?
「ふふっ。真っ赤な顔をして。そなたの顔は正直よの。」
「~~~~~っ!!」
穴があったら入りたい!俺のバカバカ!!
気持ちよかった事は認める!でも、魔王様のことを好きかと言うとそれは違う。魔王様みたいな焦がれる程の気持ちは俺にはない。…だから魂の伴侶だ番だと言われても、それに応えられるとは思えない。
「…魔王様。俺は、番とかよくわかりません。だから、魔王様を好きになるかどうかは…。」
「良い。今はそれで。人間はそういう事はわからないものだ。我もその事は承知しておる。だが、そなたを必ず惚れさせて見せよう。覚悟しておれ。」
うっ…。その低音ボイスで耳元で囁かれると、なんかソワソワしてしまう…。俺が知ってるサナトスと違いすぎて落ち着かない。
「してタケルよ。我をサナトスと呼べ。『魔王様』なんぞ堅苦しくていかん。我の名を呼んで欲しい。それと改まった口調もいかん。我らは対等なのだ。」
「……サナトス。」
名前を読んだ途端、「ふぐっ!」と変な声が聞こえて俺を抱きしめる腕に力が篭った。どしたどした?
「…なんという甘美な響。番に名を呼ばれる事がこんなにも嬉しいものだとは…。あぁ、タケル、タケル!愛している!」
うわぁ!首元で顔ぐりぐりやらないで!くすぐったいから!…え!? すーはーすーはー聞こえるんですけど!? って、匂い嗅いでる!俺の匂い嗅いでる!ちょ、待って!うわぁ!ペロペロ舐めるなぁ!
「タケル、タケル!すーはーすーはー。ああ、タケルの匂いが我の中に!たまらん!すーはーすーはー、ペロペロ…。」
「んんっ!あんっ、やめっ!」
ひぇぇ!首元舐められて変な声出た!ゾクゾクってするからそれやめてー!
て、うわぁ!また押し倒されてキスされてる!名前呼んだだけで、ここまで大興奮するなんて聞いてない!
「んん…ちゅ…んふ…。」
ヤバい…また気持ち良くなってきて俺の股間が…っ。上にのし掛かられてるから、バレてるよな…。どうしようどうしよう!
「…タケル。ここのも我に…。」
え!? あっという間にズボンもパンツも下ろされて……うひゃぁ!いきなり口に咥えたっ!?
「あ!ちょっ待って!…んあ、あ、あ…ダメぇっ、んん、あっ…」
魔王様、俺の話をちっとも聞いてくれない!口の中があったかくてねっとりしてて、こんなの知らない!舌の動きが気持ち良すぎて、こんなのもうっ!
「サナトス!あ、あっ!…口、放してっ!…出る…出るぅ…っ!」
そしてとうとう我慢できなくて、そのまま解放してしまった。
「ごく…んぐ……。はぁ…何という甘美な蜜よ。素晴らしい!」
……嘘だろ……。俺の、飲んじゃった…。マジかよ…。
しかも魔王様、めっちゃご満悦でいらっしゃる…。
俺、フェラされたんだよな。男に。魔王に。
なのに何で嫌だなんて思わないんだよ!なんでちょっと嬉しいとか思ってんだよ!めちゃくちゃ気持ちよかったよちくしょう!自分でやるより何倍も気持ちよかった!でも男だぞ!?魔王だぞ!?もう自分で自分のことがわかんねぇ!
俺はもうパニックだ…。サナトスに好きだと言われて、プロポーズされて、キスされて、フェラまでされて…。
俺の初めてが、ゴリゴリ奪われてしまった…。
「タケル…愛している。我が聖女、我が番。…すーはーすーはー。あぁ、たまらん!ん~、タケル成分最高だ!」
また後ろから抱きしめられて、匂い嗅がれてる…。サナトスって、こんな奴だったんだ…。なんかあんなに怖いとか思ってたの、なんだったんだ。
……もういいや。キスもフェラもされた事はなくならない。とりあえずこれからどうするかだ。
またあんな事されたら困るから、ベッドから降りて距離を取る。
「あの…サナトス。俺、早く元の世界に帰りたいんだけど。親も心配するだろうし。」
「ふむ、そうか。では、明日帰ることにしよう。我が不在になる間、愚か者共が勝手をしないよう手を打つ必要もあるしな。」
あ、やっぱり付いてくるんだ…。
「でも、明日だと困るというか…。」
「問題ない。帰還の魔法に我が時間の調整をする。ここに呼ばれた時間に戻せるから安心せよ。」
え、そんなことできんの!?
「我は最強の魔王ぞ。召喚や帰還魔法は聖属性になるから我は使えぬが、座標を足したり指定する事は可能だ。だからそなたを召喚する事ができたのだ。」
あ。そういえば、なんで俺をピンポイントで召喚したのか不思議だったんだ。
それをサナトスに聞いたら、エマだった時に創造神から授けられた加護。これは魂に付くから生まれ変わって俺になっても有効なんだそう。だから俺はエマと同じ大聖女の力を持てたんだ。
それで創造神の加護を持つ俺を、別世界に居ることはわかっていたからずっと探してた。それで見つけて召喚を人間にお願いして、俺の座標を追加。で、召喚魔法発動。
魔王様なんでもありだな。これ、絶対逃げられないじゃん…。
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