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しおりを挟む待ってくれ…。聖女召喚の理由が、魔王と結婚!?
聞き間違いか?え?………ダメだ…俺の頭は理解することを拒否している…。
「あのー…もう一度、言ってもらえます?」
「ええ。ですから、魔王様と結婚していただきたい、と申し上げました。」
「結婚…。」
「はい、結婚です。」
聞き間違いじゃなかった!! え?なんで!?何がどうなって結婚なワケ!?
「あのー…つかぬことをお聞きしますが…結婚とは、そのー…夫婦になる、と?」
「ええ、その通りです。」
青髪の青年は首をコテンと傾げて、こいつ何当たり前なこと言ってんだ?って顔してる…。
「……なぜ、とお聞きしても?」
「魔王様が探しておられた、魂の伴侶だそうです。」
魂の…伴侶…。
「まずは魔王様にお会いになって下さい。魔王様も聖女様にお会いできることを、それはそれは待ち望んでおられましたから。」
そう言って、めちゃくちゃいい笑顔で言われてしまった。
なんだこの展開は…!? 初めての事で、流石に召喚されまくった俺でもついていけん!!
てか魔王に会うの!? え、この建物にいるの!?
会った瞬間、バトルにならない!? 大丈夫!?
不安に思う俺をよそに、青髪の青年は俺を連れて召喚の間を出た。
「あ!そういえば自己紹介がまだでしたね。申し訳ありません。私はこのエマシュタル国の第一王子、ラルフィー・エマシュタルと申します。」
「あ、俺は長谷川 尊。あ、と。こっちじゃタケル・ハセガワになるのかな。」
「タケル様、ですね。よろしくお願い致します。」
まさかの展開で、すっかり抜けてた自己紹介を済ませて、魔王様がいらっしゃるというサロンへ。
うん…さっきからさ…もう魔王様の力がバンバン伝わってくるんだよね…。
召喚の間に居た時は混乱状態でわからなかったけど、少し落ち着いた今、もうそれはそれは恐ろしい程の力をバンバン感じる…。
これ程強いとは…。エマの時の魔王に匹敵するほどの力だぞ…。本当に大丈夫か?
「タケル様、着きました。こちらに魔王様がいらっしゃいます。」
うん、だよね。この扉の向こうからヤバいくらい力が漏れ出てるもん…。わかるよ。
すーはーと深呼吸して、いざご対面。
「お待たせいたしました、魔王様。聖女様をお連れいたしました。」
ラルフィーの後に続いて中へ入る。正直俺の心臓はバックバクだ。
「ああ、ようやく会えた。我が聖女。」
声が聞こえた方へ目を向ければ、サラサラの長い黒髪に赤い瞳の……。
「っ!?」
ヤバいヤバいヤバい!! コイツ…エマの時の最凶最悪の『魔王サナトス』!?
嘘だろっ!? なんで!? コイツは俺が、エマが倒したはずっ!!なんでここにいるんだよ!?
俺は動けなくなって、冷や汗が止まらずカタカタと震え出した。
さっきラルフィーが、魔王と結婚してくれって言ってたけど絶対間違いだろ!?…エマの時は、とにかく破壊して、虐殺して、世界を破滅に追い込もうとしたヤツだぞ!
まずいまずいまずい!これは…倒せたとしても、俺も、死ぬ。
「どうした?我が番。早くその可愛らしい顔を見せてくれ。」
色気たっぷりに微笑んで、手を差し出す。
どうしよう…どうする?このまま行ったら確実にヤバい。頭ん中で警鐘が鳴り止まない。
動かない俺に焦れたのか、魔王サナトスは一歩一歩と俺に近づいてきた。
動けない俺は、ゴクっと喉を鳴らすしかなくて…。とうとう目の前に魔王が。
「あ、の……。」
何か話そうとしても、恐怖で声が出せない。俺は、死ぬのか…。何も出来ないなんて…。いや、諦めるな。どうせ死ぬなら、また相打ちに持ち込んでやる。
「ああ、我が聖女。我が番。会いたかったぞ。」
そう言って、魔王は、俺を…
抱きしめた。
え?え?え??
力加減は物凄く優しく、まるで羽根で包み込む様にふんわりと。
「愛しい人よ。そなたに会えることをどれだけ待ち望んだことか…。」
は? 愛しい人?
誰が?俺が?
「あ、の…。俺……何かの、間違い…では?」
頭が混乱して上手く話せない!そんな俺をよそに抱きしめた腕を離したと思ったら、顔をそっと包まれた。
「何を言う。間違いでは無い。…そなたも気づいておるだろう?我がサナトスだと。のう、エマよ。」
「!?」
やっぱり…サナトスだ。そして、俺のことも、ちゃんとわかってる。
「ふふ。そんな可愛い顔をして。我を試しておるのか?」
「あ…あの…。」
試す?何を!? 俺は何にも試してません!!
「魔王様、積もるお話もございましょう。一度おかけいただいてゆっくりとされては?」
「おお、そうだな。我とした事があまりにも感動してしまい、愛しい人を立たせたままにしておった。……さ、こちらへ。」
そう言って魔王サナトスは、俺を横抱きにしてソファーに腰掛けた。俺を膝に乗せたまま。
…え、何これ。俺は何も出来ずされるがまま。
「エマよ。そなたの今の名前は何という?」
「……タケル、です。」
「タケル…ふむ。良い名だ。」
そっと頬を撫でて、優しい顔で微笑んだ。
「タケルよ。そなたを我の伴侶として迎えようと思う。応えてくれるな?」
「え…あの……その…。」
伴侶。伴侶って…。さっきラルフィーも言ってたけど、やっぱり間違いじゃ、ない?
「伴侶って、結婚するってこと、ですよね?」
「そうだ。そなたに、エマに初めて会った時からそなたの魂に惹かれた。何と美しい魂だろうかと。だが、我はそなたにやられてしまったがな。だがやっと復活し、そなたを探し求めていたのだ。今度こそ伴侶にする為に。」
「あの…俺は…エマじゃ、ありません。エマを探して、いたんですよね?」
「何を言っておる?わかっておる。そなたはタケルであろう?……だが魂は同一の物。エマと同じ魂だ。だからそなたで間違いない。」
俺で、間違いないのか…。え、これどうしたらいい?
「でも、あの…魔王様は男性、ですよね?」
「そうだな。」
「あの、俺も、男、なんですけど…。」
「そうだな。エマは女であったが、そなたは男だな。それがどうした?」
「いや、男と結婚…するんです、か?」
「?? 何か問題でもあるのか?男でも女でも関係ないであろう?」
あれ?そういうもん?ん?…なんか、わかんなくなってきた…。
「え、いや。あの、俺の生まれた世界は、男同士の結婚てかなり少なくて…ちょっと、想像がつかないと、言いますか…。」
「ほう。タケルの世界では当たり前ではないのか。それはまた難儀だな。」
「こちらでは当たり前、なのですか?」
「そうだな。……確かに1500年前は少なかったかもしれんが、今は当たり前になっておる。」
「…そう、なんですね。」
なら大丈夫、なのか?あれ?そういう問題だっけ?
いや、違う違う!そうじゃない!俺は魔王と結婚なんてしたいわけじゃない!地球に戻って、普通の生活を送りたいんだ。ここで、サナトスと結婚なんて……。
いや待て。これ、断ったらどうなる?俺、殺される、よな?最凶最悪の魔王だぞ。思い通りにいかなかったら、殺そうとするだろう。
どうする、どうする…どうしたらいい!?
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