上 下
53 / 53

52 最終話〜それから〜

しおりを挟む
「ユウマ様、こちらが先代の10代目神子、ヒカル様のお墓になります」

 光が召喚されてから300年の時が流れて、ヘインズ家に置かれた召喚陣から11代目の新たな神子が召喚された。高橋悠真、23歳。時代は違うが光と同じ日本人だ。

 光が作った浄化石と結界石は長い時間、ずっと機能していたが徐々に壊れていき、この世界はまた瘴気に脅かされるようになった。ギリギリまで自分たちの力で何とか魔物を討伐してきたが、これ以上はもう無理だろうというところでヘインズ家は神子の召喚に踏み切ったのだ。

「この人がこの世界の事を色々と変えていったんですね」

「はい。先日お話した亡国サザラテラ王国の長きにわたる悪しき習慣を止め、神子としての本来の姿をこの世界にもう一度覚えさせた方です。今ユウマ様がお住いのこのお屋敷もヒカル様が住んでいらしたお屋敷です」

 召喚陣は王都の外にあるヒカルの屋敷に移されていた。そしてこの場所はヘインズ家と、ヘインズ家に認められた者だけが立ち入ることが許された特別な場所となっている。
 そして光が眠る墓もこの屋敷の敷地内に作られており、悠真は今日ここへ案内してもらったのだ。

 悠真は召喚された時かなりパニックになってしまっていた。それをヘインズ家の人間が召喚した事への心からの謝罪と、焦らせることなくゆっくりと事情を説明したことで悠真は落ち着きを取り戻すことが出来た。
 そして次代の神子が召喚された時に渡して欲しいと言われていた、光が残した手記も悠真に手渡していた。


 最初は落ち込みが凄かった悠真も光の手記を読むにつれ段々と気持ちの整理も付いてきた。そして一番最初に10代目神子である光について教えて貰ったのだ。

「ヒカル様の願いは、神子がいなくても正常に機能する世界でした。それで浄化石と結界石をお作りになり、300年程は神子様の召喚を行わずとも良くなりました。ですが、今ではそれも機能を失いつつありユウマ様を召喚することになったのです」

 300年の間に神子を召喚することもなく、またこの世界が神子と神獣人の事を再度改めて認識し直したおかげなのか。魔力持ちがまた段々と増えていった。そしてそれに合わせて先祖返りの存在もぽつぽつと現れ出したのだ。

「光さんの手記には『あなたを召喚してごめんなさい。神子の力を使いたくなければ使わなくてもいい。神子は道具じゃない。その選択はあなたにある』と書かれていました。光さんは世界の為じゃなく、このヘインズ家の為に神子としての力を使ったんですよね?」

「そうです。ヒカル様は『自分が守りたいと思う人がいるからそのために力を使った』そうです。ヒカル様と同じお墓に入っているオースティン様は先祖返りであり、ヒカル様の伴侶でございました。最後まで仲睦まじくされていたと記録に残っております」

 それを聞いて悠真は2人が眠る墓にそっと手を合わせた。

「じゃあもし僕が神子としての力を使いたくないって言ったら、ジョディはそれでいいの?」
 
「ええ。それがユウマ様の選択ならば。我々ヘインズ家は神子様の選択に異を唱えることは致しませんし、無理に強要するつもりもございません。もしユウマ様が神子としての務めを果たさなくとも、我々は最後までユウマ様をお守りいたします。それが貴方をこの世界へと召喚した責任でございますから」

「そっか……」

 ヘインズ家は光が亡くなったその後も、ずっと神子と神獣人の事をしっかりと学びその認識を歪ませることなく続いてきた。それは今代の当主であるジョディ・ヘインズも変わらない。

「僕もまだ神子として働けって言われて納得できていないけど、とりあえずこの世界の事と、光さんのことをたくさん知ろうと思う」

「はい。まずはそうなさってください。我々も隠すことなく全てをお話させていただきます」

 悠真は光の墓をそっと撫でると「見守っていてください」と小さく呟き、屋敷の中へと戻っていった。

 この世界の今後は、11代目神子の選択により決まる。

 その後どうなったかは神のみぞ知る――。





~Fin~






* * * * * * * *

最後までお読みいただきありがとうございました!

正直ここまで長くなる予定ではなくて、ヒカルとオーサももっと早くにくっつく予定でした。
書いているとキャラが勝手に行動し出して、最初に作ったプロットから外れていくので途中どうしようかと焦りました…(完結できないんじゃないかと…)

なんとか完結出来て一安心です。

1話の長さを3000文字以下で書いてみたのですが、やっぱり5000字くらいの方が良さげな…
話の展開がモミモミしてましたしね。
でも読者様の感覚としてはあっさり読めて良かったのかな?ここも難しいところですね…( ˙-˙ )
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(50件)

四葩(よひら)

平民シリーズ読み終わって、再度こちらに……何度読んでも良いですね、泣けます。
特に最終回が……鼻ズビズビです💦
レオさん、完全に後ろで手を出して盛ってますね、例のモノを。
そして民を扇動したのは関係者の人達とすると、クーデター早かったのも納得。
結果ヒカルくんはこの世界の人達の意識改革と次代の神子へのガイドライン作ったんですね。自分が召喚され、王族にされた事もぶっちゃけたのかな、他国にも。そして同じような事をしたら天誅起こる可能性も示唆したり。世界を助けるか助けないか選択権はあくまで神子側ともきっちり明言してそうです。そこら辺は徹底的に記録として各国に念押ししたかな。攻撃魔法も使えますしね。オーサさんも隣で威圧したでしょうし。
ヘインズ家の人達、ジョディさんはエリオットくんの子孫かな。あくまで神子を護り神子の代弁者として生きていたんですね。ヒカルくんも、オーサさんと生涯幸せに暮らせたようで良かったです。
召喚も、ヘインズ家の判断に任せる形になったのは良い判断かと。
国で権限持つと、手抜きしそうですよね、楽をするために。それだと元の木阿弥なので、除外して正解です。
箸文化、食文化も変えつつ神子にも暮らしやすい世界を目指したヒカルくんの想い、時を越えてユウマくんにも届いたと思います。
ヒカルくんについて学んだユウマくん、どんな感想を持ったでしょう。会えることなら話してみたい、と思ったのでは?
残念ながらそれは叶いませんが、きっと生きるうえでの指針にはなったかと。
2人の婚姻証明書、まだ残ってたら、凄い事ですよねw
王族全ての署名、他ヘインズ家の皆さんの署名つき🤣
魔法の使いこなし方もヒカルくんの事なので遺してそう。あと、魔力譲渡の方法も念のためw
結果的に世直しに関わった事で神獣人や魔力持ちも産まれる世界になったので、軌道修正も出来た世界、ユウマくんは何を考え、どう生きてこの世界と関わっていくのか、どんな人と恋に落ちるのか……
オーサさんと愛し合い、生涯を共にしたヒカルくんの生き方から何か学び少しでもこの世界で幸せを見つけられたら、と思います。
きっとそこにはヘインズ家の皆さんのあたたかい笑顔と影ながらの協力がある事でしょう。
召還される神子とこの世界に住む善良な人々に幸せな未来が訪れますように…勿論悪い人達にはお仕置きをw

最後に…アナコンダの愛は永遠です✨

華抹茶
2024.06.28 華抹茶

四葩様
またまたお読みいただき、長文感想ありがとうございます😭
あー、嬉しいなぁ…とじっくり読んでいたんですけど、最後の『アナコンダ』に全部持っていかれました🤣爆笑です🤣

ヒカルくんの活躍により、この世界は軌道修正できました。ユウマくんはきっとその意志を継いでくれると思います。
ヒカルくんはきっと魔法の使い方や神子の能力のことも、全部書き記してあると思います。そしてユウマくんもヒカルくんと同じように記録を残していくでしょうね。
それがきっとまた後に召喚される神子に受け継がれていくと思います。
ヘインズ家もこれからもずっと神子を支える一族で居続けてくれると思います。

解除
moku_dama
2023.08.30 moku_dama

うわぁ本当に良かったです...🥲✨
完結おめでとうございます!!!!そしてお疲れ様でした!!!!
一気見させて頂いたのですが飽きずに読めて楽しい時間を過ごせました> < ♡


光くんがオースティン様のために覚醒してそれからの流れがめちゃくちゃ最高でずっと歓声あげ続けてました笑笑
まじでスッキリしてモヤモヤしてた気持ちが晴れました😽

魔力譲渡のDキスは1度昇天しかけました…その後の展開にも驚きすぎてきゃー♡などと発狂しました。美味でした...笑
オースティン様が光くんにデレデレなとこはやっぱ何度見てもニヤニヤが止まりません...🤦‍♀️
ていうかその都度の光くんの反応が可愛らしくて口角が上がって行く一方で頬が痛いです😐

最終的にちゃんと光くんオースティン様に対する自分の気持ちに気づいて、更に気持ちを伝えてくださり心も体もくっついてくれて感謝感激雨あられです😭😭😭
オースティン様が嬉しすぎて気絶したまま朝までやっていたのも面白くて、オースティン様にもかわいい一面がまだまだあられるんだなぁってニッコニコでした:)♡


改めて、135000字お疲れ様でした!
とっても素敵な物語をありがとうございました…!!!!

華抹茶
2023.08.30 華抹茶

moku_dama様
感想ありがとうございます&10万文字を超える作品一気読みお疲れ様でした🙌凄く嬉しいお言葉が沢山!!楽しんでいただけてよかったです✨

ヒカル君が覚醒してからの流れが最高だなんて言っていただけて私が昇天しました…ああ、あれが三途の川か…。おっといかんいかん。現世に戻ろう…。

頬が痛くなるほどニヨニヨしてくれましたか!私がそのお言葉にニヨニヨ…笑
ちょっと変態チックになってしまったオーサを可愛いと受け入れてもらえて嬉しいです!嬉しくて興奮しすぎて正気を失いながらも、ヒカルを孕ませる勢いで抱き潰していましたから…

書きながらこれ受け入れてもらえるかな…といつも不安になるのですが、こんな感想を頂けると本当に安心すると共に書いて良かったと思えます。
本当にありがとうございました😊

解除
四葩(よひら)

すみません、考察そして妄想するのが楽しくて愉しくて😅

ちなみに思考回路似ているかもと言っていただけて、とても光栄です✨好きな作家様にそう言ってもらえるの、本当に感動で😭
華抹茶様の描く世界観、ツボに刺さるので、何度読んでも本当に楽しく。ちなみにエレン編終わり、ただいまアシェル編に滞在しておりますwちょうど学校入った所ですね🤭
ちなみに、エレにゃんで何度も吹き出してしまいますwあそこから、ヴィンまでネコさんになるとは(嬉)……エレパパはナイスアイテムをライアスに渡しましたよね、パパなくしては産まれなかったエピソードなので、感謝です、パパwやっぱりママと兄嫁もつけたのかしら(笑)
アルにもいつかつける、とかのエピソードあったら楽しいです♡♡

物心ついた頃から、活字中毒なもので、電子も紙も、どちらも大好きで💦無人島に持参するなら絶対、本ですね。電子は充電ツールあれば持っていきたい……。
元々、同じ本を何十回と読むので、好きなのはリピート率凄くて……。ディケンズのクリスマスキャロルを小5で読んで泣きましたから😅推理小説は小3デビューでした。
なので、何が言いたいか、アルファポリスさん、素敵な作家様達と出会わせてくださりありがとうございます。と( *´艸`)
華抹茶様にも、もちろんお礼を。いつもありがとうございます、大変お世話になっております🙇‍♀️
これからもよろしくお願いいたします😊

華抹茶
2023.08.28 華抹茶

四葩(よひら)様
何度も繰り返し読んでいただき、いつも本当にありがとうございます!
本当に本を読むのが好きなんですね。凄いです…
思考回路が似てるのを喜んでいただけて良かったです!
四葩様って読解力がすごくて文字として書いていない情報も読み取って下さるので、いつもいつも驚かされます。私の頭の中見えてる?と錯覚するくらいです。
こんなにも私の作品を好きだと言ってくださる方に出会えて本当に嬉しく思います。
書き出してまだ1年と半年くらいの若輩者ですが、これからもまた頑張りたいと思います!

こちらこそ、またよろしくお願いいたします!

解除

あなたにおすすめの小説

異世界トリップして10分で即ハメされた話

XCX
BL
付き合っていると思っていた相手からセフレだと明かされ、振られた優太。傷心での帰宅途中に穴に落ち、異世界に飛ばされてしまう。落ちた先は騎士団の副団長のベッドの上。その副団長に男娼と勘違いされて、即ハメされてしまった。その後も傷心に浸る暇もなく距離を詰められ、彼なりの方法でどろどろに甘やかされ愛される話。 ワンコな騎士団副団長攻め×流され絆され傷心受け。 ※ゆるふわ設定なので、騎士団らしいことはしていません。 ※タイトル通りの話です。 ※攻めによるゲスクズな行動があります。 ※ムーンライトノベルズでも掲載しています。

憧憬

アカネラヤ
BL
 まるで鈍器で殴られたかのような重めの頭痛とともに目が覚めた美波八雲(ミナミヤクモ)に待ち受けていたのは、同社の後輩である藤咲昌也(フジサキマサヤ)による性と快楽の監禁地獄だった。  突然の自分に置かれた状況に混乱しつつもそんな心とは裏腹に、身体は藤咲によって従順に開発されていく。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

変態しかいない世界に神子召喚されてしまった!?

ミクリ21
BL
変態しかいない世界に神子召喚をされた宮本 タモツ。 タモツは神子として、なんとか頑張っていけるのか!? 変態に栄光あれ!!

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

【完結】長い物語の終わりはハッピーエンドで

志麻友紀
BL
異世界召喚されたら、前世の賢者の記憶がよみがえった! 転送の事故により魔力ゼロで玉座に放り出された史朗を全員無視。彼らの目当ては、史朗が召喚に巻き込まれた少女で、彼女こそ救国の聖女だという。 そんな史朗に唯一、手を差し伸べてくれたのは、濃紺の瞳の美丈夫、聖竜騎士団長ヴィルタークだった。彼の屋敷でお世話係のメイドまでつけられて大切にされる日々。 さらに史朗が魔鳥に襲われ、なけなしの魔力で放った魔法で、生命力が枯渇しかけたのを、肌を合わせることでヴィルタークは救ってくれた。 治療のためだけに抱いた訳じゃない。お前が好きだと言われて史朗の心も揺れる。 一方、王国では一年の間に二人もの王が亡くなり、評判の悪い暫定皇太子に、ヴィルタークの出生の秘密もあいまって、なにやら不穏な空気が……。 R18シーン入りのお話は章タイトルの横に※つけてあります。 ムーンライトノベルズさんでも公開しています。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

悪役令息だったはずの僕が護送されたときの話

四季織
BL
婚約者の第二王子が男爵令息に尻を振っている姿を見て、前世で読んだBL漫画の世界だと思い出した。苛めなんてしてないのに、断罪されて南方領への護送されることになった僕は……。 ※R18はタイトルに※がつきます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。