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39 謁見の約束
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それから少しだけ雑談して解散となった。ずっと長距離移動していたし、王宮で謁見もしたし疲れただろうとレオナルドさんがそう言ってくれた。
確かに体はかなり疲労している。しばらくはずっと気を張った状態だったし、ベッドでゆっくり寝られたわけじゃなかったから。
ヘインズ公爵家の皆も移動で疲れているだろうから片付けはゆっくりやろうと伝えて、案内された部屋へと向かった。
「急な事だったので十分なご用意が出来ていなくて申し訳ございません」
レオナルドさんの執事さんが申し訳なさそうにそう言うが、急に大勢で押し掛けたのはこっちだ。気にしなくていいからと伝えてソファーに腰掛ける。
双子たちも疲れているはずなのに、俺の為に部屋の準備を整えようとして慌ててそれを止めた。だが「ヒカル様の為に働けることが幸せなので止めないでください」と言われてしまって「程々にね」としか言えなくなった。
本当に皆優しいよな。じゃあそんな皆に労いを込めて俺がお茶を淹れてみよう。いつも双子たちがやっているのを見ているから出来るだろうと、お茶のセットを用意してもらった。茶葉を入れてお湯を注いで。それを4つのカップに注いで用意は出来た。
お茶を淹れたから休憩しようと言って皆にも座ってもらった。皆は「ヒカル様手づから淹れて下さったお茶を飲めるなんて!」と感激しながら一口。俺も一緒になってカップに口を付けた。
「しっぶ! まっず! 待って! 飲んじゃダメ!!」
俺が初めて見様見真似で淹れたお茶は、とても渋くてまずかった。お茶淹れるって簡単なようでこんなに難しかったんだ。いつも美味しいお茶を淹れてくれる双子たちが本当に凄いのだと実感する。
とんでもなくまずいので飲むのを止めさせようとしたのに、皆「絶対に嫌です!」と言って飲み切ってしまった。
「体壊すよ!?」
「ヒカル様のお茶を飲んでそうなるなら、むしろ本望です!」
「いやダメでしょ!?」
「ダメじゃない! 最高だよ!」
「いや、なんで!?」
「ぶふっ……!」
俺と双子のやり取りを見て噴き出したランドル。それを見て俺達も堪えきれず声を出して笑った。
ヘインズ公爵家の皆といると本当に心が温かくなる。嬉しい、楽しいと気分が上がる。
皆でこの国へ逃げてくることが出来て良かった。皆の笑顔を守れてよかった。
そしてしばらく俺達は笑って過ごしたのだった。
それから夕食が用意できたと言われ食堂へと向かう。ずっと野営で簡単な食事だったし、もちろんそれに不満はないけどちゃんとしたご飯が食べられるのは嬉しいし楽しみだ。
因みに移動中のお風呂問題は魔法で解決。魔法万歳。万能すぎ。
食堂へ向かえば、皆丁度今来たところみたいで入り口で会う事に。皆ちょっと疲労が残ってはいるけど、表情はとても明るかった。そのまま席に案内され椅子に座る。
カトラリーと共に俺の箸もちゃんと用意されていてそれが嬉しかった。ブレアナさんとオーサも同じ。
ブレアナさんもオーサも箸が出来次第、教えて欲しいと言われ使い方を教えていた。あれから毎日練習していたようで、今じゃ結構上手に箸を使えるようになっている。
実は双子やランドル達、ヘインズ公爵家の皆は箸を持っている。今じゃ皆箸で食べるようになったから、食事もステーキなんかあらかじめ切ってあって食べやすい様にしてくれていた。
「おや? その細長い棒? は一体……?」
早速それに気が付いたレオナルドさんが不思議に思って訪ねて来た。
「ふふふ。これはヒカル様が元の世界にいらしたときに使われていた食器だ。慣れるまでに時間を要したが、今ではこれで食事をすることが楽しいのだ」
ブレアナさんが自慢げにレオナルドさんに箸を見せて説明している。物を掴んで食べるところを実際に見せるとレオナルドさんもエリオット君も「おお!」と驚いていた。
「なんて素晴らしい! 神子様! 僕もその箸というものを作ってもよろしいでしょうか!? ブレアナ達だけなんてずるい! 僕も神子様と同じように箸で食事がしたいです!」
「ぼ、僕も! 僕も使いたいです!」
「はい。良かったらぜひ。慣れるまでは難しいと思いますけど」
俺がそう言えばレオナルドさんもエリオット君も目をキラキラとさせている。ブレアナさんの屋敷にいた皆も持っていることを伝えると、この屋敷の使用人達にも作らせようとレオナルドさんは張り切っていた。
この屋敷でも箸ブームが起きそうだ。
「ヒカル様、つい先ほど王宮から使いの者が来て陛下からの言伝を預かりました。もし可能であれば2日後に今後の事についてお話したいとのことですが、いかがしますか?」
食事を初めてすぐ、レオナルドさんからそう聞かれる。きっと今後の浄化の旅とかについての話だろうと思う。別に俺はこれといってすることはないから王様に会う事を了承した。
明日以降、そのことについてブレアナさん達と相談しないとだな。
瘴気の浄化は急務だろう。最近は魔物の暴走が多くなって来たって言ってたし。でもそうなると俺は旅に出なきゃいけないのか。うーん、それってどうなんだろう。俺がやらなきゃいけないのかな。
浄化するために世界中を回って旅する。しかもなるべく早く。考えただけで嫌なんだけど。だけどちんたらしてたら他の国がやばいんだよね。
時間を掛けずに早く浄化をする方法。それが出来たら無茶苦茶楽だし、それをこの世界の人達が自分たちでやってくれたら最高なんだよな。
それと召喚陣のこともある。どこに設置したら一番いいのか。もうどこに設置しても争いにしかならなそうだし凄く困る。でも設置しないとこの世界に未来はない。
あーもう! なんでこんなめんどくさいことになってんだ! 結局はどれもこれもあの女神のせいだろ! もし会う事が出来たら一発ぶん殴ってやりたいくらいだ。
確かに体はかなり疲労している。しばらくはずっと気を張った状態だったし、ベッドでゆっくり寝られたわけじゃなかったから。
ヘインズ公爵家の皆も移動で疲れているだろうから片付けはゆっくりやろうと伝えて、案内された部屋へと向かった。
「急な事だったので十分なご用意が出来ていなくて申し訳ございません」
レオナルドさんの執事さんが申し訳なさそうにそう言うが、急に大勢で押し掛けたのはこっちだ。気にしなくていいからと伝えてソファーに腰掛ける。
双子たちも疲れているはずなのに、俺の為に部屋の準備を整えようとして慌ててそれを止めた。だが「ヒカル様の為に働けることが幸せなので止めないでください」と言われてしまって「程々にね」としか言えなくなった。
本当に皆優しいよな。じゃあそんな皆に労いを込めて俺がお茶を淹れてみよう。いつも双子たちがやっているのを見ているから出来るだろうと、お茶のセットを用意してもらった。茶葉を入れてお湯を注いで。それを4つのカップに注いで用意は出来た。
お茶を淹れたから休憩しようと言って皆にも座ってもらった。皆は「ヒカル様手づから淹れて下さったお茶を飲めるなんて!」と感激しながら一口。俺も一緒になってカップに口を付けた。
「しっぶ! まっず! 待って! 飲んじゃダメ!!」
俺が初めて見様見真似で淹れたお茶は、とても渋くてまずかった。お茶淹れるって簡単なようでこんなに難しかったんだ。いつも美味しいお茶を淹れてくれる双子たちが本当に凄いのだと実感する。
とんでもなくまずいので飲むのを止めさせようとしたのに、皆「絶対に嫌です!」と言って飲み切ってしまった。
「体壊すよ!?」
「ヒカル様のお茶を飲んでそうなるなら、むしろ本望です!」
「いやダメでしょ!?」
「ダメじゃない! 最高だよ!」
「いや、なんで!?」
「ぶふっ……!」
俺と双子のやり取りを見て噴き出したランドル。それを見て俺達も堪えきれず声を出して笑った。
ヘインズ公爵家の皆といると本当に心が温かくなる。嬉しい、楽しいと気分が上がる。
皆でこの国へ逃げてくることが出来て良かった。皆の笑顔を守れてよかった。
そしてしばらく俺達は笑って過ごしたのだった。
それから夕食が用意できたと言われ食堂へと向かう。ずっと野営で簡単な食事だったし、もちろんそれに不満はないけどちゃんとしたご飯が食べられるのは嬉しいし楽しみだ。
因みに移動中のお風呂問題は魔法で解決。魔法万歳。万能すぎ。
食堂へ向かえば、皆丁度今来たところみたいで入り口で会う事に。皆ちょっと疲労が残ってはいるけど、表情はとても明るかった。そのまま席に案内され椅子に座る。
カトラリーと共に俺の箸もちゃんと用意されていてそれが嬉しかった。ブレアナさんとオーサも同じ。
ブレアナさんもオーサも箸が出来次第、教えて欲しいと言われ使い方を教えていた。あれから毎日練習していたようで、今じゃ結構上手に箸を使えるようになっている。
実は双子やランドル達、ヘインズ公爵家の皆は箸を持っている。今じゃ皆箸で食べるようになったから、食事もステーキなんかあらかじめ切ってあって食べやすい様にしてくれていた。
「おや? その細長い棒? は一体……?」
早速それに気が付いたレオナルドさんが不思議に思って訪ねて来た。
「ふふふ。これはヒカル様が元の世界にいらしたときに使われていた食器だ。慣れるまでに時間を要したが、今ではこれで食事をすることが楽しいのだ」
ブレアナさんが自慢げにレオナルドさんに箸を見せて説明している。物を掴んで食べるところを実際に見せるとレオナルドさんもエリオット君も「おお!」と驚いていた。
「なんて素晴らしい! 神子様! 僕もその箸というものを作ってもよろしいでしょうか!? ブレアナ達だけなんてずるい! 僕も神子様と同じように箸で食事がしたいです!」
「ぼ、僕も! 僕も使いたいです!」
「はい。良かったらぜひ。慣れるまでは難しいと思いますけど」
俺がそう言えばレオナルドさんもエリオット君も目をキラキラとさせている。ブレアナさんの屋敷にいた皆も持っていることを伝えると、この屋敷の使用人達にも作らせようとレオナルドさんは張り切っていた。
この屋敷でも箸ブームが起きそうだ。
「ヒカル様、つい先ほど王宮から使いの者が来て陛下からの言伝を預かりました。もし可能であれば2日後に今後の事についてお話したいとのことですが、いかがしますか?」
食事を初めてすぐ、レオナルドさんからそう聞かれる。きっと今後の浄化の旅とかについての話だろうと思う。別に俺はこれといってすることはないから王様に会う事を了承した。
明日以降、そのことについてブレアナさん達と相談しないとだな。
瘴気の浄化は急務だろう。最近は魔物の暴走が多くなって来たって言ってたし。でもそうなると俺は旅に出なきゃいけないのか。うーん、それってどうなんだろう。俺がやらなきゃいけないのかな。
浄化するために世界中を回って旅する。しかもなるべく早く。考えただけで嫌なんだけど。だけどちんたらしてたら他の国がやばいんだよね。
時間を掛けずに早く浄化をする方法。それが出来たら無茶苦茶楽だし、それをこの世界の人達が自分たちでやってくれたら最高なんだよな。
それと召喚陣のこともある。どこに設置したら一番いいのか。もうどこに設置しても争いにしかならなそうだし凄く困る。でも設置しないとこの世界に未来はない。
あーもう! なんでこんなめんどくさいことになってんだ! 結局はどれもこれもあの女神のせいだろ! もし会う事が出来たら一発ぶん殴ってやりたいくらいだ。
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