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2 俺はどうやら神子らしい
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「おい! 一体どういうことだ!? 召喚は成功したと言っていたではないか!?」
「せ、成功のはずです! 手順通りに儀式は行いましたし、それでアレが現れたのですからっ……」
「であればなぜ召喚されたのが化け物なのだッ!?」
どうやら俺の事で派手な男とその他大勢が言い争っている。いや、言い争うというより派手な男が1人で喚いていると言った方が正しいか。
これが夢じゃなければ俺はこの世界に「神子」として召喚されたらしい。
だけど普通異世界から呼ばれた神子って歓迎されるもんだよな。やっぱり、こんな俺じゃどこに行っても歓迎されることはないんだろう。
「これからどれほど神子としての力があるのか調べますからっ……!」
「ではさっさとこいつを連れて行って調べてこいッ! もしこやつが神子ではなかったら、お前たちの命はないと思えッ!」
「か、かしこまりましたっ……!」
派手な男はそう叫ぶとドタドタと大きく足音を鳴らしながら部屋を出ていった。
はぁ……俺と違って綺麗な顔してるのに、あんな乱暴な性格してて勿体ない。まぁ俺には関係ない事だけど。
「おいお前ッ! お前が本当に神子かどうか調べるから付いてこい!」
さっき派手な男に乱暴な態度を取られていた男が、俺の顔を汚物でも見る様な目で見ながら叫んだ。
ここにじっとしていてもしょうがない。俺が立ち上がると周りは「ひぃっ!」と後ずさった。ここにいる全員、俺を化け物として見ている。こんな目は久しぶりだ。ずっと部屋に引きこもって誰とも会わないようにしていたから。
家族ですら顔を顰めてしまう程の俺の顔。俺の腰から上の右半身は、大きな火傷の跡がある。
13歳の時に火事に遭い、俺は逃げ遅れ右半身に大やけどを負った。奇跡的に命は助かったものの、一生残る大きな火傷の跡が残ってしまった。顔も爛れ、これを見た人は全員俺の事を「化け物」と言う。
仕方がないと思う。俺も自分の顔を見た時は、自分で自分の事を「化け物」だと思ったから。
元々俺の顔は良い方ではない。不細工でもないけど特段イケメンでもない。フツメンだ。なのに、こんな火傷の跡が出来たことで不細工を通り越して化け物になってしまった。
皆が化け物だと思う事は仕方がないと自分でもわかっている。だけどその目を向けられることは未だに慣れることはない。その目を向けられる度、そんな顔を見せられる度、心臓の奥がぎゅっと絞られるように痛むんだ。
だから俺はそんな目から逃れるようにして引き籠る様になってしまった。
家族だって俺の命が助かって良かったと泣いてくれたが、俺の顔に残った傷跡を見て顔を顰める。憐れんだ目で見られる。家族から向けられるそんな目も俺は嫌だった。
「わ、私と一定の距離を保って付いてこい!」
白い服を着た男にそう言われ、ゆっくりその後ろを付いて行く。俺が召喚された部屋から出て歩くことしばらく。長い廊下を抜けて一つの部屋へと入った。
「お前はそこで待っていろ」
部屋の真ん中あたりへ来るとそう言われ、言われるがまま立ち止まる。白い服を着た男は丸い水晶玉のような物をテーブルの上に置いた。そして5歩ほど下がると俺にその玉の上に手を置けと言う。
水晶玉に近づきその上に自分の手を置いた。するとカッ! と眩しいくらいの光が水晶玉から放たれ、部屋は真っ白になってしまった。俺も驚いてしまい、手を離したいが放しても良いかわからずとりあえずそのままの状態で待機していた。
「な、なんてことだっ……寄りにもよって、こいつが……」
「あの、もう手を離しても……?」
「あ、ああ。もう十分だ」
そっと水晶玉から手を離すと眩しいくらいの光はあっという間に霧散した。ところでこれで一体何がわかったというのだろうか。
「信じられんことだが、お前は神子で間違いない。しかも歴代の神子を軽く凌ぐほどの魔力の持ち主だ」
どうやら俺は間違いなく『神子』とやららしい。ならすぐに殺されるということはないんだろう。だけどそれがいいのか悪いのか。この先の事が不安だ。辛い思いをし続けるくらいなら、いっそのこと殺してくれた方がマシな気がする。
「あの……俺はこれからどうすれば」
「口を開くなッ! お前がこれからどうするかはこちらから指示する。お前はただ言われた通り動けばいい」
白い服を着た男は水晶玉を片付けると、また付いてこいと言い部屋を出ていった。俺は大人しくその後に付いて行くと、一つの部屋へと入れられる。
「ここがお前の部屋だ。お前みたいな化け物でも一応神子だからな。食事も用意してやる。今日はこのまま部屋から出ることを禁止する」
白い服を着た男は早口でそう捲し立てると乱暴に扉を閉めて部屋を出ていった。そしてガチャンと音が聞こえたことから恐らく外から鍵を掛けたらしい。部屋から出るなと言うか、出られなくされてしまった。
「はぁ……」
どうしてこんなことに。大きなため息をつくと、ゆっくりと部屋を見渡した。
部屋の広さは6畳ほど。ベッドとテーブルに椅子が一つずつ置いてあり窓はない。部屋の中に扉を見つけ、その扉を開ければトイレと浴室があった。とりあえず、トイレを我慢しなくても良さそうでほっとした。
「まるでビジネスホテルみたいな感じだな」
とりあえず掃除はされているようで埃が溜まっているということはない。最低限の清潔さもあって、これならなんとかなりそうだ。窓がないから息苦しさは感じるけども。
「家で夕飯食べておいて良かった」
今が何時なのかわからないけど、少し前に母さんのご飯を食べれて良かった。お陰で空腹を感じることはない。
だけど次は母さんのご飯をいつ食べられるんだろうか。もう2度と食べられないんだろうか。
ふと見ればテーブルの上には水差しが置いてあり、コップに水を注いで匂いを嗅いでみた。変な匂いがしないことから大丈夫だろうとその水を飲む。普通に美味しい水だった。
なんだか精神的に疲れてしまって俺はベッドに横になった。ベッドは想像していたより少し固めだった。
また意味もなくぐるりと部屋を見渡してみる。部屋の中には備え付けの家具以外何もなく、今は特にすることもない。
「目が覚めたら家に戻っていますように」
これが悪い夢であって欲しいと祈りながらその日は寝る事にした。
「せ、成功のはずです! 手順通りに儀式は行いましたし、それでアレが現れたのですからっ……」
「であればなぜ召喚されたのが化け物なのだッ!?」
どうやら俺の事で派手な男とその他大勢が言い争っている。いや、言い争うというより派手な男が1人で喚いていると言った方が正しいか。
これが夢じゃなければ俺はこの世界に「神子」として召喚されたらしい。
だけど普通異世界から呼ばれた神子って歓迎されるもんだよな。やっぱり、こんな俺じゃどこに行っても歓迎されることはないんだろう。
「これからどれほど神子としての力があるのか調べますからっ……!」
「ではさっさとこいつを連れて行って調べてこいッ! もしこやつが神子ではなかったら、お前たちの命はないと思えッ!」
「か、かしこまりましたっ……!」
派手な男はそう叫ぶとドタドタと大きく足音を鳴らしながら部屋を出ていった。
はぁ……俺と違って綺麗な顔してるのに、あんな乱暴な性格してて勿体ない。まぁ俺には関係ない事だけど。
「おいお前ッ! お前が本当に神子かどうか調べるから付いてこい!」
さっき派手な男に乱暴な態度を取られていた男が、俺の顔を汚物でも見る様な目で見ながら叫んだ。
ここにじっとしていてもしょうがない。俺が立ち上がると周りは「ひぃっ!」と後ずさった。ここにいる全員、俺を化け物として見ている。こんな目は久しぶりだ。ずっと部屋に引きこもって誰とも会わないようにしていたから。
家族ですら顔を顰めてしまう程の俺の顔。俺の腰から上の右半身は、大きな火傷の跡がある。
13歳の時に火事に遭い、俺は逃げ遅れ右半身に大やけどを負った。奇跡的に命は助かったものの、一生残る大きな火傷の跡が残ってしまった。顔も爛れ、これを見た人は全員俺の事を「化け物」と言う。
仕方がないと思う。俺も自分の顔を見た時は、自分で自分の事を「化け物」だと思ったから。
元々俺の顔は良い方ではない。不細工でもないけど特段イケメンでもない。フツメンだ。なのに、こんな火傷の跡が出来たことで不細工を通り越して化け物になってしまった。
皆が化け物だと思う事は仕方がないと自分でもわかっている。だけどその目を向けられることは未だに慣れることはない。その目を向けられる度、そんな顔を見せられる度、心臓の奥がぎゅっと絞られるように痛むんだ。
だから俺はそんな目から逃れるようにして引き籠る様になってしまった。
家族だって俺の命が助かって良かったと泣いてくれたが、俺の顔に残った傷跡を見て顔を顰める。憐れんだ目で見られる。家族から向けられるそんな目も俺は嫌だった。
「わ、私と一定の距離を保って付いてこい!」
白い服を着た男にそう言われ、ゆっくりその後ろを付いて行く。俺が召喚された部屋から出て歩くことしばらく。長い廊下を抜けて一つの部屋へと入った。
「お前はそこで待っていろ」
部屋の真ん中あたりへ来るとそう言われ、言われるがまま立ち止まる。白い服を着た男は丸い水晶玉のような物をテーブルの上に置いた。そして5歩ほど下がると俺にその玉の上に手を置けと言う。
水晶玉に近づきその上に自分の手を置いた。するとカッ! と眩しいくらいの光が水晶玉から放たれ、部屋は真っ白になってしまった。俺も驚いてしまい、手を離したいが放しても良いかわからずとりあえずそのままの状態で待機していた。
「な、なんてことだっ……寄りにもよって、こいつが……」
「あの、もう手を離しても……?」
「あ、ああ。もう十分だ」
そっと水晶玉から手を離すと眩しいくらいの光はあっという間に霧散した。ところでこれで一体何がわかったというのだろうか。
「信じられんことだが、お前は神子で間違いない。しかも歴代の神子を軽く凌ぐほどの魔力の持ち主だ」
どうやら俺は間違いなく『神子』とやららしい。ならすぐに殺されるということはないんだろう。だけどそれがいいのか悪いのか。この先の事が不安だ。辛い思いをし続けるくらいなら、いっそのこと殺してくれた方がマシな気がする。
「あの……俺はこれからどうすれば」
「口を開くなッ! お前がこれからどうするかはこちらから指示する。お前はただ言われた通り動けばいい」
白い服を着た男は水晶玉を片付けると、また付いてこいと言い部屋を出ていった。俺は大人しくその後に付いて行くと、一つの部屋へと入れられる。
「ここがお前の部屋だ。お前みたいな化け物でも一応神子だからな。食事も用意してやる。今日はこのまま部屋から出ることを禁止する」
白い服を着た男は早口でそう捲し立てると乱暴に扉を閉めて部屋を出ていった。そしてガチャンと音が聞こえたことから恐らく外から鍵を掛けたらしい。部屋から出るなと言うか、出られなくされてしまった。
「はぁ……」
どうしてこんなことに。大きなため息をつくと、ゆっくりと部屋を見渡した。
部屋の広さは6畳ほど。ベッドとテーブルに椅子が一つずつ置いてあり窓はない。部屋の中に扉を見つけ、その扉を開ければトイレと浴室があった。とりあえず、トイレを我慢しなくても良さそうでほっとした。
「まるでビジネスホテルみたいな感じだな」
とりあえず掃除はされているようで埃が溜まっているということはない。最低限の清潔さもあって、これならなんとかなりそうだ。窓がないから息苦しさは感じるけども。
「家で夕飯食べておいて良かった」
今が何時なのかわからないけど、少し前に母さんのご飯を食べれて良かった。お陰で空腹を感じることはない。
だけど次は母さんのご飯をいつ食べられるんだろうか。もう2度と食べられないんだろうか。
ふと見ればテーブルの上には水差しが置いてあり、コップに水を注いで匂いを嗅いでみた。変な匂いがしないことから大丈夫だろうとその水を飲む。普通に美味しい水だった。
なんだか精神的に疲れてしまって俺はベッドに横になった。ベッドは想像していたより少し固めだった。
また意味もなくぐるりと部屋を見渡してみる。部屋の中には備え付けの家具以外何もなく、今は特にすることもない。
「目が覚めたら家に戻っていますように」
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