8 / 8
エピローグ
しおりを挟む
「こんな世界だったんだ……」
急いで服を着たふたりがゲストルームのドアから外に出ると、快太の目に、初めて見る異世界の風景が飛び込んできた。
この世界に来てセシリアと出会い、なんだかんだ、外に出ていなかったのだ。
ほんの数時間だがものすごく濃密な時間だったと彼は思う。
太陽は高いところにある。
窓はあったので時間帯はなんとなく察していたが、他の建物を見るのはこれが初めてだった。
田畑が豊富で、木造の家屋がまばらに建っている。
のどかな農村といった風情だがーー
「あれは……?」
ところどころ、へんな物体がある。
たとえばすこし離れたところに建つ家には、屋根のうえに謎の鉄柵が見える。
木材がメインの建築物にはそぐわない異物だ。
快太の視線の先を見て、セシリアが言う。
「あれは聖典のシチュエーションのために作ってもらった柵だな。あの柵に両手を突いて……」
「あ、学校の屋上のつもり?」
「そう、学校の屋上だ。さすが詳しいな。昔なじみの大工のおじさんに、頼み込んで作ってもらったんだ」
「へえ……」
セシリアの家だった。
ちょっと引いた快太だったが、感想を言うのはやめておく。
こういうところも可愛い。たぶん可愛い。
(それに、屋上シチュもそのうち……)
楽しみが増えた。
「快太、そんなことより今は、新たな転生者のほうだ」
「うん、リリアンはどっちにーー」
きょろきょろ探していると、
「こっちです! 今みんなで、どこに運ぶか相談しているところ」
リリアンの声のするほうにふたりで走り出す。
相談をしているのか、ざわざわと数人が集まっている声もする。
「あっ、またお腹のところに本が入ってる!」
ざわつきが大きくなる。
走りながらセシリアが「聖典か⁉︎」と叫んだ。
リリアンたちの姿が見えてきた。
10人ほどの村人たちの間から、倒れている転生者の姿が見えた。
女の子だった。
黒い髪を左右にまとめ、眼鏡をかけている。
服装は落ち着いた感じのセーターとロングスカート。
近づくほどに、村人たちの興奮する声が聞こえてきた。
「これ聖典じゃないか?」
「そうだ、新しい聖典が増えたんだ」
「また新しいやり方でヤれるぞ」
彼らが転生者から拾い上げた聖典の表紙が、快太からも見える。
「? 何て読むんだろ。『セニョール』? え、あの絵……もしかして、BL雑誌?」
新たな性の発見に興奮するおじさんたちの後ろで、快太は自分のお尻にすーっと寒気が走るのを感じていた。
ー完ー
急いで服を着たふたりがゲストルームのドアから外に出ると、快太の目に、初めて見る異世界の風景が飛び込んできた。
この世界に来てセシリアと出会い、なんだかんだ、外に出ていなかったのだ。
ほんの数時間だがものすごく濃密な時間だったと彼は思う。
太陽は高いところにある。
窓はあったので時間帯はなんとなく察していたが、他の建物を見るのはこれが初めてだった。
田畑が豊富で、木造の家屋がまばらに建っている。
のどかな農村といった風情だがーー
「あれは……?」
ところどころ、へんな物体がある。
たとえばすこし離れたところに建つ家には、屋根のうえに謎の鉄柵が見える。
木材がメインの建築物にはそぐわない異物だ。
快太の視線の先を見て、セシリアが言う。
「あれは聖典のシチュエーションのために作ってもらった柵だな。あの柵に両手を突いて……」
「あ、学校の屋上のつもり?」
「そう、学校の屋上だ。さすが詳しいな。昔なじみの大工のおじさんに、頼み込んで作ってもらったんだ」
「へえ……」
セシリアの家だった。
ちょっと引いた快太だったが、感想を言うのはやめておく。
こういうところも可愛い。たぶん可愛い。
(それに、屋上シチュもそのうち……)
楽しみが増えた。
「快太、そんなことより今は、新たな転生者のほうだ」
「うん、リリアンはどっちにーー」
きょろきょろ探していると、
「こっちです! 今みんなで、どこに運ぶか相談しているところ」
リリアンの声のするほうにふたりで走り出す。
相談をしているのか、ざわざわと数人が集まっている声もする。
「あっ、またお腹のところに本が入ってる!」
ざわつきが大きくなる。
走りながらセシリアが「聖典か⁉︎」と叫んだ。
リリアンたちの姿が見えてきた。
10人ほどの村人たちの間から、倒れている転生者の姿が見えた。
女の子だった。
黒い髪を左右にまとめ、眼鏡をかけている。
服装は落ち着いた感じのセーターとロングスカート。
近づくほどに、村人たちの興奮する声が聞こえてきた。
「これ聖典じゃないか?」
「そうだ、新しい聖典が増えたんだ」
「また新しいやり方でヤれるぞ」
彼らが転生者から拾い上げた聖典の表紙が、快太からも見える。
「? 何て読むんだろ。『セニョール』? え、あの絵……もしかして、BL雑誌?」
新たな性の発見に興奮するおじさんたちの後ろで、快太は自分のお尻にすーっと寒気が走るのを感じていた。
ー完ー
0
お気に入りに追加
56
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉
ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。
餌食とするヒトを。
まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。
淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
開発済みののじゃロリエルフは絶対服従
プルルペルル
ファンタジー
見た目は幼いがその年齢は余裕で四桁を超えるの彼女はエルフ。
千年以上ゴブリンやオークに侵され続けたり、街の肉便器として使わていた彼女はありとあらゆる快楽を叩き込まれた。
男根を見せられれば腰が抜け、服従してしまうほどの調教を施されている彼女は今、平穏を手に入れていた。
千年以上請い願った平穏。
大賢者と呼ばれ世界最高の学び舎の学長となった彼女の平穏は、ほんの少しの油断で奪われてしまうのだった。
※思い付きと勢いで書いているので物語性は薄いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる