【バーチャルドール:共通版①】導入(プロローグ&はじめてのレッスン)

[絵&小説] 愛楽優人 (創作実験室)

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■【チュートリアル】はじめてのレッスン

▶【チュートリアル】はじめてのレッスン「ステータス調整・力比べ」

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次は、『ステータス調整』という、ステータスを変更する能力について教えてもらう事にした。

素の状態のみんなの事をもっと知りたいと思ったので、とりあえずキャラメイクとロールプレイは解除して元に戻ってもらった。

 

カナエ「ステータス調整は、簡単に説明すると、ステータスを任意に調節して、力をアップさせたり、早く走れるようにしたりできる能力です」

 

まずは、ステータス調整をしていない元の強さを知っておきたいと言うと、アスカが目を輝かせて意気揚々と手を上げる。

 

アスカ「はいはいはーい! アスカが相手してあげるわ! ステータス調整なしでも勝てるか、やってやろうじゃないの!」

 

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お互い両手を組み合わせて、押し合う体勢を取る。

バーチャルドールの通常時のステータスは、システィさんが『同じくらいの人間の女の子』を分析して平均値あたりに調整していると言っていたなと思い出す。

 

サクヤ「レディー! ファイト!」

 

合図と共に、ぐっと力が加えられる。

 

アスカ「人間の力を見せてみなさいよー!」

 

見た目通り、アスカの力はそれほど大した事はなく、手加減しても押し負ける事はない。

 

アスカ「ぐぬぬぬぬ……!!」

 

アスカの方は全力らしく、私に頭を押し付けて3点で押しながらぷるぷるしていた。

 

サクヤ「はい、そこまで~♪」

 

アスカ「きぃーっ!! 悔しいーーっ!! 後で見てなさいよー!!」

 

悔しさを体いっぱいに表現するかのように、ダンダンと地団駄を踏んだ後、私を指さして啖呵を切った。

 

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カナエ「マスター、ステータス調節のためのウィンドウの開き方と設定の仕方を、今から教えますね」

 

カナエに教えてもらった通りにすると、私の目の前にステータス調整のウィンドウが表示された。

文字やら数字やら、メニューやらがたくさん並んでいる。

教えてもらいながら、なんとかアスカのパワーを調整する画面に到達する。
複雑なため、これは勉強が必要だなと感じた。

 

アスカ「ここに設定しなさい、ここ」

 

ウィンドウのゲージをトントンと指さす。

私は素直にアスカの言う位置にゲージを動かそうとしたが、サクヤとチサトが同時に私の手をとめて、元の位置から少し上げたくらいの数値にする。

 

サクヤ「少し上げるだけで充分よ♪」

 

チサト「上げすぎると、マスターのアバターは無事では済まなくなるぞ」

 

アスカ「なによ~! ちょっと力の差ってやつを見せつけてやりたかったのに~!」

 

サクヤはともかく、チサトは人をからかったりふざけたりするような子ではないので、疑う事なく言う通りにする。

 

アバターが重度の損傷や完全破壊状態になった場合、バーチャルスフィアのログインの維持ができなくなるため、『現実世界に強制的にログアウトされる』だけで、実際の体がケガを負ったり死んでしまうわけではない。

損傷したアバター以外に手持ちのアバターがなければ、修理が終えるまでバーチャルスフィアにはログインできなくなってしまうというだけだ。

ただ現在のアバターは、ミコトさんとシスティさんに用意してもらった借り物のアバターなので、むやみに壊してしまうわけにはいない。

 

カナエ「ステータスの調整が済んだら、右下にある『OKボタン』を押して、システィに申請してくださいね。申請されたステータスは制御可能かどうかや、安全面などからシスティが判断して承認するんです」

 

OKボタンを押すと、瞬時にウィンドウ上に『承認完了』という文字が表示される。

最後に、カナエにウィンドウの閉じ方を教わり、ウィンドウを閉じた。

 

――――――――――――――――

 

アスカ「さぁ、マスター! もう一度勝負よ! 今度は私が手加減してあげる番ね!」

 

先ほどと同じように、お互い両手を組み合わせて、押し合う体勢を取る。

 

サクヤ「レディー! ファイト!」

 

言うほどあまり強くないなと油断していると、じわじわと少しずつ力が強くなっていく。

 

アスカ「人間がどれくらいの力まで出せるのか興味があるわ。全力を出してみなさい」

 

アスカは余裕の表情で笑う。

 

もうすでに本気でやっているのだが、アスカの見た目からは想像できないほどの強い力で、まるでゆっくり迫ってくるトラックを押し返そうとしているかのような、あらがえないほどの圧倒的な力の差があった。

 

サクヤ「勝負あり。そこまでよ、アスカ」

 

耐えられなくなり、私が2,3歩後ろに下がった所で勝敗が決した。

 

アスカは、ふふんっと満足そうに笑う。

 

ステータスを少し上げただけでこれほど変わるのなら、さらに上げていたらどうなっていたのか、想像すらできなかった。
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