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その言葉は、費やした全てに報いる sideシホ

小さな姫

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「おう。小姫ちいひめ様か。おはようございます」

 オーデンのおじさんはわたしが生まれるより前から剣闘士をしている大ベテランなんだけど、なんと、わたしの初等教育学校の同級生なの。

 オーデンのおじさんはグランティスではない国で生まれて、そこで初等教育を受けられなかった。大人になった今からでも勉強をし直したいからって、剣闘士をする合間に学校に通う事になったの。

 普通の大人で、オーデンのおじさんくらいに背の高い人はそんなにいない。休み時間には校庭で子供の遊びに付き合ってくれるから、学校の子供達の人気者だった。


 わたしはシホ・グランティス。王族で生まれた子供は王宮で家庭教師に勉強を教わるんだけど、お母さんの方針で、普通の子供と同じ学校に通って教育を受けることになった。

 わたしは恥ずかしがり屋で、お母さんと一緒に王宮の晩さん会に出た時、大人だけじゃなく貴族の子供を相手でもなかなかお話しが出来なかった。「こんばんは」って一言だけの挨拶ならちゃんと出来るんだけど。

 王宮に閉じこもってお世話をしてくれる使用人達だけを相手にしていたら、人見知りが改善しないかもしれない。お母さんが言うには、「恥ずかしがり屋」だけならいいけど、「人見知り、人を避けようとする」のは良くないから。同じ年頃の子供がたくさんいる普通の学校に通って、そういう経験を積んだ方がいいんだって。

 そのおかげで、もっと小さな頃のわたしと比べたらわたしは人と話したり一緒に遊んだりするのが、人並みに楽しく思えるようになってきた。だからお母さんの決めたのは間違ってなかったと思う。今のわたしには街のあちこちに友達がいる。子供の頃から王宮で育ったお母さんにはあんまりそういう人がいないみたいだから、お母さんはわたしがちょっとだけ羨ましいとも言ってた。


「オーデンのおじさん、抱っこして。また一緒に試合が見たいよ」

「今日だけは、ダメだな。今日は姫様が剣闘士になって、最初の試合だ。小姫様は一番近いところから、姫様の晴れの舞台を見てあげないといけない」

「そっか。そうだよね」

「また今度な」

「うん。やくそくね」

「なんか、オーデンと話してる時はやけに素直じゃないですかね、姫様」

「気のせいだよ。ねー?」

「う、う~ん」

「オーデンがこう言うってことは、やっぱ気のせいじゃないんですよね? ね??」
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