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傷だらけのシホ sideシホ

本心

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 気が付いた時には、地面に肘をついて四つん這いに、うずくまっていた。口から、目から、絶え間なくどろどろとした赤い液が漏れ落ちて地面に溜まっていく。

 言葉にしようがない苦痛が全身を支配していて、この赤いのを流し尽くして死ねたら、と。人間の体だったらそのはずだが、傀儡竜……神竜の体であるから、どんな負傷を与えられても、死ねない。

 手に入れた神器だけは意地でも手放さなかったが、目的を見失いかけていた。この神器は、自分を終わらせるためのもの、ではなくて。

 神器の刃を地面に突き立てて、限界すぎる体を支えさせて、膝立ちする。自分自身の吐き出すもので溺れそうになりながら、倒れる太陽竜を振り返る。立ち上がって、この神器を、急所に突き立てて。


「ぶっ、う゛、あ……うわああぁぁぁん……」


 ゆるりと、身を起こした太陽竜と、まっすぐに目が合った。なんとも悲しげな顔でこっちを見て、すぐには動き出そうとしない。

 ここまで、やったのに。あと一歩だったのに。もう、体が言うことをきかない。指の一本たりと、動かせる気がしない……。


 敗北感とは違う、挫折感に、オレはガキみてえに泣いていた。

 勝負に勝って、試合に負ける。剣闘場界隈の仲間から、たまに耳にした言葉だ。

 オレは、太陽竜に勝った。だから敗北感はない。だけど、望んだ結果は果たせなかった。

 遠い未来、こいつに殺されて朽ちる友人達の運命を変える。そのためだけにこの一年間を費やしたのに、叶わなかった。

 最強の神を倒すっていう目標だけを目指して、短い人生全てを捧げたのに、たどり着けなかった。


 「最弱」が出せる全てを絞り尽くしても、「本当の最強」には、いつも敵わなかった。



 みんなの前じゃあ気にしてねえって笑ったけど、悔しかったんだよ。

 オレだって、費やした全てが報われたって思える最後に、辿り着きたかったよ……。


 心臓のあたりの布はオレに突き刺された痕で裂けているのに、傷痕はすっかり消えていた。太陽竜はゆっくり、手を伸ばしてくる。オレの奪った神器を取り戻すためだろう……。



 羨ましいな。オレは夢を追うために、おふくろが生んでくれた体を傷まみれにしたのに。そんな風に跡形もなく、消えるなんて……。

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