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傷だらけのシホ sideシホ

最強の神?

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 ひとオレをこんな運命に生み出した慈悲なき神様よ、最後の神頼みくらいはオレに配慮してくれよな。なんて拝みたいところだが、これから戦う太陽竜本人がその、「この世界の最高神」だっつうんだよなぁ。それが今や人間と同じ土台で生きていて、神通力でも使って遠隔で傀儡竜オレ達を殺せるでもなく、律儀に自分のお手手で殺して回ってますっていうのはどういった道理でそうなったんだろうなぁ。まったくもって、意味が分からん。




 かけがえのない最後の時間だっていうのに、信仰してるわけでもねえ神について考えるなんていう無駄遣いをしちまったことに、オレはそいつの姿を視界の先に認めて気が付いた。あ~あ、やっちまった、ってな。

 駆けるよりも、歩くよりも、さらに鈍重な足取り。まるで地面から足を離さずに引きずってるように、一歩一歩が小さい。見ていてうんざりしてくるが、この時間を幸いにオレは心も体も準備を整える。

 待ち時間の防寒のために着ていた皮の上着を脱いだ。きちんと畳んで持ち歩いていた鞄にそいつを収めて、長柄を振るのに松明をひっかけずに済むような場所を選んで移動する。馬鹿げたことに、そんな悠長に「準備」している時間のゆとりがあるくらいに、そいつはウスノロだったわけだ。


「……あんたが、太陽竜か?」

 男は肯きもせず、オレを直視するでもなく、中途半端に地面に視線をやっている。

 もし、こいつが太陽竜なのだとしても、「本当に?」と投げ返したい印象だった。

 太陽を名に冠している癖に、熱というものを一切感じさせられなかったからだ。まあ、それを言ったら「我らの巨神竜様」ときたら、並みの男より小柄な女の体だったわけなんだが。

 髪から身にまとう着物まで真っ白で、目は深く沈みこんだ海の底みてえな青い色。熱もなければ存在感もねえ。故郷のみすぼらしい骨董店入口に飾られていた、女の幽霊画みてえな趣だな。


「見せつけるような情報の流し方といい、グランティスに着いたら巨神竜か大隊が待ち受けて、僕を攻め滅ぼそうとでもしているのかと想像していたが。傀儡竜、君だけか」

「おうよ。グランティスの未来のために、太陽竜はオレが殺す。あんただって、オレを殺すのが目的で現れてんだ。それが正々堂々、対等な条件ってもんだろう」

 宣戦布告ついでに右手だけで相棒を支え、まだ穂先の届かねえ距離にいる太陽竜の額へ差し向ける。

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