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あなたとの時間は、全てが宝物のようでした。

愛してるⅠ

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 予選会の選手であるためにきちんと鍛えてきたはずのわたくしなのに、お休みしてはや数か月。不調も重なって、ちっとも体に力がこもりませんが、どうにか彼の頭を引き寄せました。口は塞がず、ただ、お互いの額だけをこつりとくっつけます。

「あ、あなたは同じ言葉を、返さなくて、いいから……もう一度だけ、言わせて……わ、わたくしは、あなたを、あいしてる……いつまでも、ずっと」

「……ああ。もらってばかりで、一言も返せなくて、情けねえな」

「そ、そんな言葉を残していくなんて、いや……」

 愛の言葉なんて求めないから、わたくしの思い出に出来るような言葉を残してよ。そうお願いしたら、わかりやすい愛の言葉なんかよりよっぽど難しくねえか? とシホは苦笑しました。

「だったらまあ、素直にな。この国に来て、レナに出会えて良かった。いつか、レナは剣闘士になるって夢を叶えられるって、オレは信じてるからな。頑張ってくれよ、これからも」

「……うん。絶対に、途中で諦めたり、しないから……わたくしのことを、見ていてね……ずっと……」

 最後にもう一度だけ、口づけをして。彼が出ていく背中を見送って、扉が閉じるのを待ちました。

 無事を祈ったりしなくていいから、安静にしていてと望まれたというのに、わたくしは身を起こしました。こればっかりは、彼の希望でも、安穏と眠っていたいと思えません。寝台の上に手を着いて、お尻を擦りながら壁に背中をつけて、布団の中で膝を丸めます。

 そうして、体が限界を迎える、夜深きまで。わたくしはその場で祈り続けるのでした。

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