魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

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生まれてくる「証」

可能性

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「神竜と竜族以外の目には見えないから、あんたが傀儡竜になってからなら見えるんだろうけど……そうなってからだと、それどころじゃないだろうな」

「その口ぶりじゃあ、傀儡竜になった人間がどうなるのか、見たことでもあるのかね? 夢幻竜さんはよ」

「オレの弟が傀儡竜で、神罰を受けてからソウ兄に殺された。でも、ソウ兄にとっても弟とは長年仲良くしてきた相手で、直接に手にかけるのは辛かったはずなんだ。自分の持つ『太陽竜の神器』以外で傀儡竜の神罰を終わらせることが出来ないから、自分でやるしかない。そう言ってたから、ソウ兄が手を汚す以外の手段を考えられないかって。オレ達はその話し合いがしたいんだよ」

「傀儡竜が助かる手段に、心当たりがあるのですか!?」

 こんな朗報があるとは夢にも思わなかったので、わたくしは思わず前のめりになってしまいました。ですが、シホの反応はいたって冷静で、動きを見せません。

「三大陸の真ん中の海上、空の中に浮かんでる聖地グラスブルー。その内側にある影の世界の中には、時の流れがない。傀儡竜が二十歳になる前にその中に入れば、神罰は発動しないまま過ごせるはずだ」

 聖地グラスブルーの内側にある影の世界というのは、夢幻竜が作ったとされる、死後の人々が安息に過ごせると信仰されている場所です。実在するのかは地上で存命のわたくし達人々にとっては、「本当にあるのかなぁ」という、まさしく「信仰」でしかありませんでしたが……。夢幻竜その人がこうおっしゃるのなら、実際にあるということなのでしょうか。

「時の止まる世界に行って、命が助かって。それで、傀儡竜の負ってる神罰とやらはどうなる?」

「それはまだ、どうにか出来るのかわかってない」

「今後、世の中に生まれてくる傀儡竜を、神罰を帳消しに出来ないまま何人も『影の世界』とやらに集めたら、最終的にどうなる? 『太陽竜に安楽死させられる』から、『自分が生き延びるために、自分以外の傀儡竜と殺し合う』に変わるだけじゃないのか」

「……そうかな」

 傀儡竜が神罰を負って生まれてくるのは、「はじまりの神竜戦争」で負った神殺しの罪を償うためです。ゆえに、全ての罪を償い終えるまで、この世に傀儡竜は生まれ続けます。

 傀儡竜として生まれてしまった者が生き延びるためには……「自分以外の傀儡竜に全ての罪を償わせた上で、自分が最後に生き延びること」が条件になってしまいます。

「オレの槍は、自分より弱ぇ奴を殺して生き延びるための相棒じゃない。あんたの提案は目先の最期おわりからは逃れられるだろうが、オレからしたら地獄を先延ばしにするだけに思えるな」
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