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生まれてくる「証」

グランティスの作戦

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 太陽竜とシホの戦いは、シホが傀儡竜になる直前に、太陽竜にこちらまで来ていただかなければなりません。もちろん、「こういう事情ですのでご足労願います」なんて呼びかけられるはずがありません。何せ、シホの目的は彼の方を殺めることなのですから。

 なので、剣闘場の広報という形式を利用することにしました。傀儡竜であること、そしてシホの正確な誕生日も記載して。元より傀儡竜は、最弱の神、そして悲劇の神として伝承されています。……シホという個人を想うわたくしや、イルヒラ様をはじめ友人の立場からすると、少々苦々しくはあるのですが。

 「たった五年しか活動出来ない剣闘士が、いかに活躍するか」という事実、それ自体に付加価値を見出す層というのは、確かにおられるのです……気の毒な境遇の方の努力を、その儚さを含めて「観賞」する。同じ努力であっても、ごくごく一般的な体を持って生まれた人よりも、困難を持つ人のそれよりも価値があると考える人は少なくありません……。

 エリシア様、イルヒラ様は太陽竜のことをよくご存じで、「安楽死させるために、傀儡竜の前に現れる」ことは確定しているとおっしゃいます。そのために傀儡竜がどこにいるのかは常に探っているはずで、このような情報を流せばかなり正確な日程を図ってグランティスにやって来るだろうと。苦しませる時間は少しでも短くしたいでしょうから。

 ひとつ、問題があるとすれば。こんなにも露骨な情報の流し方をすることで、太陽竜が「グランティスが自分を誘い出そうとしている」と気付いて、いつもと対応を変える可能性があることでしょうか。

「オレ達はソウ兄が傀儡竜を手にかける前に話し合いがしたいと思って、出来ればソウ兄より先に接触したくて傀儡竜を追ってる。だから情報を見てこっちに来たんだ」

 シホの誕生日まで、残すところ、半年。今回は随分と早く、太陽竜の先回りが出来たみたいですね。

「オレ『達』っていうのはまさか、そのクマチャンも含んでるってわけじゃあねえ、よなぁ」

 ちょっとやそっとでは動じないシホですが、夢幻竜……コウ様のお持ちのぬいぐるみにはさすがに、戸惑いを隠せないようでした。

「いや。あんたの目にはまだ見えないだろうけど、ここにイリサ……母神竜がいる」

「イリサは母神竜の魂でね。俺も、エリシアが受け入れてくれなかったらこんな感じになってたかもしれない」

「イルヒラ様がそうであったように、体を失ってしまったのですね」

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