魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

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生まれてくる「証」

奇妙な来客

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「シホにも関わりのある奴だから、ふたりも一緒に会ってみたらいいと思うんだけど。どうする?」

「赤い髪ってことはそいつ、傀儡竜なのか?」

 イルヒラ様達のご友人で長く生きておられるということならば、二十年しか健勝でいられない傀儡竜ではないとわたくしは思うのですが。シホは自分自身が生まれた時から、「赤い髪を持って生きてきた傀儡竜」なので、冷静に考えるより咄嗟にそう考えてしまったのかもしれません。

「あいつの赤い髪は傀儡竜じゃないよ。そういや、物理的に染めてるんだか、『そう見えるように操作してるのか』って、どっちなのかを改めて訊いたことがなかったなぁ」

「見えるように操作、とは?」

「コウ・ハセザワは夢幻竜だから。あらゆる人間の見ているものを、自分の都合よく認識を変えられるはずなんだ」

 なんで髪を赤くしているのかなんて実際に会って話しているうちにどうでもよくなってきて、結局いつも聞き忘れて今日に至る、と。実際、わたくしとシホもそのお方と対面した瞬間に、髪が赤いことなど全く認識の外になってしまいました。それよりも強烈な印象を抱かせる要素があったから。


「どうも」


 イルヒラ様がわたくしとシホを紹介してくださると、その人は表情も体も微動だにせず、まっすぐわたくし達を見つめてたった一言、口にします。ですが、「まっすぐ、こちらを見ている」はずなのに、どうにも「どこを見ているのかわからない」のです。目の表情いろが真っ暗で、真っ黒で、光を一切受け付けない暗闇のようなので。

 その得体のしれない表情に加えて、手には「空色の毛並みの、くまのぬいぐるみ」を抱えています。体のどこにも力を入れていないような弛緩した佇まいなので、害意は感じません。ですが、計り知れない不気味さを感じてしまいました。

「今日は何の用事? と、言いたいところだけど。コウもあれだろ? シホの情報をどっかで見て来た」

「ああ。もうすぐ二十年目を迎える傀儡竜が、グランティスの剣闘場で命の限りまで活躍しますって記事。あれってもしかして、ソウ兄太陽竜をおびき寄せるためにやってるのか?」

「やっぱ、コウにもわかるよな。想像してる通りだよ」

 グランティスが各国との親善のために配布している広報情報資料では、剣闘場の現在の様子をお伝えしています。今となっては剣闘場は、他国からも注目を集める我が国の花形です。

 シホの情報は、優勝した際には名前や戦績、エリシア様との模擬試合での様子などが記載されていました。ですが、シホに限らず選手の個人情報は詳細に出してはおりません。

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