魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

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グランティスの未来のために

こんなことになってしまうなんて

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「後はまあ、これを出されたらあんたシホは詰むっていうか、どうにもしようがなくなるんだけど……魔法防御壁ね。普通の魔法使いには、物理攻撃を受け付けないような頑強なものは作れない。そのために必要な魔力の消費が大きすぎるから、だったら避けるか物理的な盾でも持ってた方が効率的だもの。でも、太陽竜と源泉竜だけは違うのよ」


 源泉竜は戦乱の時代、グランティスとクラシニア、そして太陽竜が力を合わせて討ち取った神竜です。無限に湧き続けて尽きることのない魔力を誇っていました。

「シホが太陽竜と出会った瞬間、物理攻撃も受け付けない防御壁の内側に引きこもって、あんたが傀儡竜になる瞬間までただただ待ちの体勢。時間稼ぎ。なんてされちゃったらもう、シホに出来ることは何ひとつないからね。ただ、太陽竜がそういうセコイ手を使うかっていうと可能性は低いけど」

「どうしてそのように思われるのですか?」

「猛獣が子猫を狩ろうって時に、全力出したりしないでしょ。あいつだってこれまで、よっぽどの強者とだったら別だけど、その辺の人間の個人と戦おうって時に全力を尽くそうとはしてきてないはずよ。最初は甘く見積もってくるのは確実だけど、シホをどれだけ侮ってくるかっていうのが第一の関門よね」

「下に見られていればいるほど、オレの付け入る隙があるからな」

「そう。万が一、壁を出される前に、瞬間でご自慢の長槍をあいつの懐に突っ込む。それが完璧に出来るようになってなきゃ、万にひとつもシホの勝ち目はない」

 シホが二十歳に……傀儡竜に成る。その日まで、一年間。使える時間は全て使って、エリシア様と模擬を重ねてシミュレート、勝機を掴む。方針は、固まりました。

 わたくしは、ふたりの「決定」に、口を挟むことが出来ません。グランティスの未来を懸けた、命懸けの戦いに対する備えなのですから。

 ですが、シホにとっては「人生で最後の一年間」は、とてつもなく貴重なのです。このような、安らぎ、息つく暇さえないような徹底した鍛錬に、その一年間を費やさなければならないなんて。わたくしはその非常過ぎる現実に、胸が張り裂けてしまいそうな思いでした。
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