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グランティスの未来のために

月夜の遭遇

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「やあやあ皆さん、こんばんは。今宵は良い月でございますね。

ま~たおまえか、と思われた方もそうでない方も、ご承知おきください。この世界の物語の終わるところに、私あり。約束の日を迎えるまでは、これは絶対に変わらない『運命』なのですよ」


 運命を司る神、月光竜。決して変わらない運命を視る目を持ち、歴史の影で為政者に未来予知を授けてきたと伝えられています。



「月光竜様のオシゴトは、運命を変えてくれる可能性を感じる『力ある者』に未来予知を授けて回るっつう伝承だったよな。こうやって現れたってことは、オレかレナにそういう可能性を感じた……光栄に思っていいってことなのかね」

 うさんくさい者を見るような目を全く隠さずに、シホは立ち上がりもせず月光竜を見上げます。今宵は彼にとって、「心身ともに穏やかに過ごせる、人生で最後の誕生日」になると思われます。話の内容次第では、そんなかけがえのない一夜を台無しにされてしまうかもしれないからでしょう。

「運命を変える可能性とは、『力ある者』だけに限りません。どんなに恵まれない弱者であろうと、私の目に見えたものとほんの少しでも違えた行動を取るだけで、未来は変わるはず……ですが、不思議ですよねぇ。結果として、誰にどのような伝え方をしても、私の視た運命は一度も変わったことがないのです。

私の行動も存在意義も、全くもって無意味で虚しい。傀儡竜の犯した罪を償うためだけに生まれてきて、無慈悲に命を手放すしかないあなた達と変わりませんね」

「……っ、いくら神竜様といえど、そんな言い方はっ」

 無礼な物言いに、怒りに駆られて立ち上がりそうになりました。そのわたくしの右腕を、シホは左手を伸ばして掴んで引っ張りました。彼もまた、力加減をし損ねたのかもしれません。勢いが付きすぎて、わたくしは彼の座る太股の上に上半身が倒れ込みました。


「多くの傀儡竜は自分の運命を受け入れて、二十年間を穏やかに暮らす選択を取ってきました。神罰は絶対に覆りませんからね。あなたのように、二十年目の終わりを迎えるその時まであがく傀儡竜は稀少でした。誰ひとり、いなかったというわけではないのですが。

決して叶わない目標に人生を捧げる姿というのは、傀儡竜に関わらず誰であっても気の毒に映りますよね。そういう人に対して、私はこう告げることがあるのです。

『あなたの目指しているその目標には、あなたが生涯を捧げても辿り着かない。叶わない。このままそれを続けるのなら、捧げた時間も体力も水泡と帰すばかりですよ』とね」


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