61 / 111
史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!
夢のような出会い
しおりを挟む
「そんな大層な相手が、オレでいいっていうのかよ……」
わたくしにここまで言わせておいて、未だに疑っているなんて……表向きの態度は尊大な癖に、自己評価が低すぎるのではありませんか?
「あなたでいい、ではなくて。わたくしは、あなたでないとダメなのよ。あなたのように、自分の命に真摯に向き合って。一日一日を大切に生きている人を、わたくしは他に誰も知らないわ。……ごめんなさい。残酷なことを言って」
「……いいや。そういう背景も含めてこそのオレだから。……オレはな。こういう体に生まれたなら、誰かと特別な関係になったり出来ねえと思ってたんだ。ただ自分がしたいことだけをして、後腐れなく人生を終える。それが『義務』だと思ってた」
「そんな……」
「……だからな。レナが、そういうオレだからいいんだって言ってくれるのは……オレにとっても、夢みてえな話、なんだよな……」
彼と過ごしたこの三年間。彼の言動と、内に秘めていた想いのひとつひとつに、わたくしの中で急速に理解が広がっていきます。
どんなにわたくしが想いを伝えても、シホは。自分の存在がわたくしの中に残り続けることそのものに、罪悪感を抱いているのです。それが今や、「心の中」だけではなくて。「わたくしの体の傷痕」という目に見える形として刻まれてしまった。その事実が、彼を後悔に苛ませている。
わたくしが今日までに、もっと強くなれていたら。今日の試合で憎むべき者から傷を受ける前に勝利して、シホに自責の念など抱かせずに済んだかもしれないのに。
先ほどの試合を終えて、わたくしは初勝利の歓喜の涙を流したというのに。今はただただ切なくて、自分の弱さが悔しくて。再び、涙が溢れてしまいました。たまらず、震える両腕を伸ばして、指先をシホの頬へ向かわせます。
わたくしの体が今は自由に動かないからかもしれませんが、シホは自らが動いて、わたくしの頭の後ろを抱き寄せてくれました。拒まずに、受け入れてくれました。
「かっ……勘違い、しないで……ずっと一緒にいられないあなたでいいなんて、ただの結果論で……叶うのなら、ずっと……いつまでも、あなたと一緒にいたかったんだからぁ……っ」
「……どうだろなぁ」
ごく普通の体に生まれてたら、今の自分とは違った性格かもしれない。だとしたらメイディッチにも引けを取らない、単なる性悪になってたかもしれないぜ? シホはそう、自虐しますけれど。
もし、あなたがこのような運命の下ではなく、ごく普通の体に生まれていたとしても。きっと根底にある優しさや誠実さは、今とそう変わりなくて。そんなあなたと出会っても、わたくしは今と変わらず、あなたに恋していたと思うのです。わたくしは、そう信じていました。
わたくしにここまで言わせておいて、未だに疑っているなんて……表向きの態度は尊大な癖に、自己評価が低すぎるのではありませんか?
「あなたでいい、ではなくて。わたくしは、あなたでないとダメなのよ。あなたのように、自分の命に真摯に向き合って。一日一日を大切に生きている人を、わたくしは他に誰も知らないわ。……ごめんなさい。残酷なことを言って」
「……いいや。そういう背景も含めてこそのオレだから。……オレはな。こういう体に生まれたなら、誰かと特別な関係になったり出来ねえと思ってたんだ。ただ自分がしたいことだけをして、後腐れなく人生を終える。それが『義務』だと思ってた」
「そんな……」
「……だからな。レナが、そういうオレだからいいんだって言ってくれるのは……オレにとっても、夢みてえな話、なんだよな……」
彼と過ごしたこの三年間。彼の言動と、内に秘めていた想いのひとつひとつに、わたくしの中で急速に理解が広がっていきます。
どんなにわたくしが想いを伝えても、シホは。自分の存在がわたくしの中に残り続けることそのものに、罪悪感を抱いているのです。それが今や、「心の中」だけではなくて。「わたくしの体の傷痕」という目に見える形として刻まれてしまった。その事実が、彼を後悔に苛ませている。
わたくしが今日までに、もっと強くなれていたら。今日の試合で憎むべき者から傷を受ける前に勝利して、シホに自責の念など抱かせずに済んだかもしれないのに。
先ほどの試合を終えて、わたくしは初勝利の歓喜の涙を流したというのに。今はただただ切なくて、自分の弱さが悔しくて。再び、涙が溢れてしまいました。たまらず、震える両腕を伸ばして、指先をシホの頬へ向かわせます。
わたくしの体が今は自由に動かないからかもしれませんが、シホは自らが動いて、わたくしの頭の後ろを抱き寄せてくれました。拒まずに、受け入れてくれました。
「かっ……勘違い、しないで……ずっと一緒にいられないあなたでいいなんて、ただの結果論で……叶うのなら、ずっと……いつまでも、あなたと一緒にいたかったんだからぁ……っ」
「……どうだろなぁ」
ごく普通の体に生まれてたら、今の自分とは違った性格かもしれない。だとしたらメイディッチにも引けを取らない、単なる性悪になってたかもしれないぜ? シホはそう、自虐しますけれど。
もし、あなたがこのような運命の下ではなく、ごく普通の体に生まれていたとしても。きっと根底にある優しさや誠実さは、今とそう変わりなくて。そんなあなたと出会っても、わたくしは今と変わらず、あなたに恋していたと思うのです。わたくしは、そう信じていました。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる