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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

王族の義務

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 きっちり否定しても、シホは「うん……」と、今までに見たことのないような弱り切った態度で表情が晴れません。……なんだか、「十八歳の青年相応なシホの言動」を、わたくしは初めて目の当たりにしている気がします。

 横になったままではシホの杞憂は晴れない気がするので、身を起こそうかしらと考えた矢先のことでした。シホは床に膝を着き、わたくしの顔を間近に覗き込んできます。ためらいがちに、手を動かして。わたくしの前髪をかきあげました。

 傷痕の上の前髪はあの時一緒に切られてしまったので、無事な方の前髪の下には何もないはずですが。シホはまさに、その、「何も傷がない額」を見ることが目的だったみたいで。

「オレがグランティスに来たから、レナは予選会に出るようになって。腕にはいくつも傷が残って、顔にまで……オレがこの国に来てなかったら、レナの体は綺麗なままだったのにな……」

「……あなたの生まれた国の常識では、女の体に傷があってはいけないのかもしれない。けれど、グランティスでは違うのよ。先ほどの試合でも、わたくしはそう言ったわよね? 戦いで負った傷は、戦って生きることを自ら選んだ、勇気の証だって。……あなたまで、わたくしの体の傷痕を否定するというの……?」

「……そうだな。殊更に気にする方がよっぽど、レナに対して無礼だった」


 ごめんな、と、聞き逃してしまいそうにか細く呟いて、彼は産毛に触れるようなささやかさでわたくしの額を撫でました。

「それにしても……姫っていうのはもっと、夢のある暮らしをしてるもんだと思ってたんだけどな。あんな見下げ果てた野郎を接待しなきゃいけないものなんだな」

「……だから、わたくしは強くなりたかったのよ。ああいう手合いに対して、一方的に従わなくて済むように」
 実際、ポーラのように、グランティスの王族を非難する者は少なくないのです。わたくしの幼い頃、まだそのような行為について理解していなかった……いえ、理解していないからこそ、「どうせわからないだろう」というつもりで、そのような言葉をかけられたのかもしれません。

 その時のわたくしにはまだわからなくても、自分を見下げられる言動は心の奥底に深く根を張って、大人になるまですくすくと成長し続けていたのです。


「グランティスの王族に生まれてそれが出来る体である以上、強いひとの子供を残すのは『義務』なのよ。ならば、わたくしは……誰かの言いなりではなくて。わたくしが心の底から尊敬出来る人を選びたかった。わたくしの方から愛おしく思える誰かと出会いたいと、ずっとずっと、夢見てきたの」
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