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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

絶対に、負けない!

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「このっ……離れなさい!」

 わたくしは渾身の力を込めて、ポーラを押し上げて、距離を開けました。意を決して、右目を開きますと、いつの間にか痛みに慣れていました。額の傷はずきずきと訴えかけてきますが、無視します。

「あなたのような外道にだけは、わたくしは絶対に負けない!」

「……はっ、そんなみっともねえ姿をさらしておいて、よくも強がりを言いやがる!」

 どんなに貶されても、試合の最中に心を挫けさせたりはしない。そう……相手がポーラのような人であるからこそ、このように煽って、利用する。

 わたくしは、思い出していました。予選会や、剣闘士になって一番最初の大会で、シホがこのように戦っていた姿を。今となっては彼は立派な剣闘士として堂々とした戦いぶりですが、わたくしと彼が出会った頃はこんな感じでしたよね。

 忌まわしい男に、大事な体に傷を入れられてしまった、心と体の痛み。今にもこみ上げてきそうな涙はそのせいではなくて、懐かしさゆえでした。

 出会った頃のあなたは、決して正道だけの人ではなかったはずなのに。それでもわたくしは、あの頃からすでに、あなたが好きだった。こんな時に、不思議ですけれど。わたくしは確信しました。

 あなたと出会って、戦士としてこの場に立つと決めたことに、何の後悔もないと。あなたに出会えて、わたくしは幸せだったと。


 ほんの僅かですが目尻に滲んできていた涙のありかは、どうやらポーラには気付かれなかったみたいです。彼もまた、この世の幸いの絶頂を感じているかのようないやらしい笑みを浮かべて、わたくしの魔法剣へハンティング・ソードを打ち込んできました。一、二、三度、受け止めてさしあげたところで。

「……トイトイ!?」

 ふっ、と、わたくしの手甲から伸びていた魔法剣トイトイの光輝く刃が、一瞬にして消えました。わたくしはすばやく後退し、ポーラから離れます。


 魔法剣は、所有者の集中が途切れると、刃を消滅させてしまう。すっかり没落したとはいえ、ポーラもかつて武勲を上げた家の末裔で、その仕組みを聞いたことがあるはずです。

 勝利を確信した顔で、ポーラはハンティング・ソードを打ち合いの体勢から持ち替えました。彼は貴族同士の嗜みとして、レイピアを用いたフェンシング競技の経験が豊富です。剣闘場ではハンティング・ソードを用いますが、ここぞという場面ではレイピアの動きの癖が出てしまうのを、わたくしは何度もこの目で見てきました。

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