魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

姫君の相棒Ⅰ

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「で、では……あらためまして。本日は、宜しくお願い致しますっ」

「は、はぁ。こちらこそ……」

 対戦前に選手同士が会話するのは日常的な光景で何もおかしなところはないはずなのですが、観客席からどっと笑いが起こってしまいました。どうしてでしょう……と言いたいところですが、わたくしもグランティスの王族として長年、剣闘場の対戦を見てきているので、わたくしの口上も佇まいも場違いなのは重々承知しています。何度も試合に出たら、いつかこの場に相応しい貫禄ある選手になれるのでしょうか……。

 貫禄といえば、いくら勝ち星なしとはいえ二年も予選会で戦っているはずなのに、コーリィにもその貫禄が全くありません。彼の得物は剣闘場で貸与しているサーベル。グランティスで生まれ育った彼が、いつか剣闘士になりたいと夢見て国内の剣道場に通うと、特にこだわりがなければサーベルを使って修練することが多いからでしょう。

 そのサーベルをぶら下げている右腕はだらりと弛緩していますし、足は自然体で力の入っていない大股開き。わたくしの様子をおどおどと窺って、なかなかサーベルを構えようとしません。

 もうじき銅鑼も鳴らされるでしょうから、わたくしは先立って、魔法剣の準備を始めました。右手の手甲にしっかりと固定されている、魔法剣トイトイの宝石。こちらには元の持ち主であったトイトイが存命だった頃に、使用者の魔力を内側に封じる魔法紋が刻まれていて、魔力を持たない人であっても呪文だけ唱えれば使用可能です。

 魔力とはすなわち、魂から流れいずるもの。トイトイは遥か昔に落命していますが、この魔法剣の中には彼の魂が、ほんの僅かながら今も残存していることになります。

 ある意味、後世に残った魔法剣をこのように大勢の人前で扱うというのは……身寄りがなく、レノ様以外の誰からも偲ばれなかったというトイトイが、確かにこの世界に生きていたという証を知らしめているのかもしれません。

 試合中のやり取りの結果、死んだとしても対戦相手は責任を問われない。参加するということは、命を懸けるということ。なのですが、やはり王族のひとりであるわたくしに死なれては困りごとも多いので、胸から胴体を覆う鎧を装着するよう求められました。可能な限り軽量化して、わたくしの体型にもぴったり合わせた特注品です。自分で何ら負担しなくともこういうものを用意していただけるというのが、自分の恵まれた立場を思わされて申し訳なく感じてしまいます。


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