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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

対等になっていく、ふたり

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「……わかりました。わたくしも、剣闘士の皆さんに対等に思っていただけるよう、接し方に気を付けようと思います。ですよね、……シ、……シホ……、あうぅ」

 自分からは求めておいて、いざ同じことをしようとするとこそばゆくて、目が回ってしまいそうに緊張しました。

 「対等」というもののなんたるかをわたくしは理解が及んでいなかったみたいです。エリシア様とイルヒラ様は、エリシア様の方が圧倒的な強者でありながら、イルヒラ様を対等と認めておられます。それは、イルヒラ様の精神的な強さをきちんと認めておられて、自分の不得手な部分を安心して任せられるからです。いわば、お互いの背中を委ねられる関係ということ。

 剣闘士を目指すというのは、皆様と同じ立場になるのだということ。剣闘場の中にいる時分、わたくしは自分が王族であることを忘れるべきなのだとようやく思い至りました。

「普通に名前を呼ぶだけでそんな気合が必要なんて、王族ってのも難儀なもんだねぇ」

「あ、ありがとうございます。シホのおかげで、予選会の初戦を迎えるまでに認識を改めることが出来ました」

「お役に立てて良かったよ。明日の試合、オレも楽しみに見させてもらうから頑張れよ」

「はい! 精いっぱい、頑張りますっ」



 ……最初に申しあげておきたいのですが、我がグランティスの剣闘場では、対戦相手の組み合わせを恣意的に行うことは一切ありません。厳正なる抽選の結果によって選ばれています。

 わたくしの予選会最初の対戦相手は、「予選会に参加してから二年間、一度も勝利したことのない、最弱の剣闘士」と呼ばれている方でした。……ええ、シホの剣闘士になって初大会の組み合わせが彼にとって都合の良すぎるものであったことと、今回。二度も同じようなことがあって疑うなと言う方が難しいかもしれません。でも、誓って本当に、八百長などではないのです。

 わたくしども、剣闘場運営側よりも、もっと大きな何か。いわば、これも「運命」というものの采配なのかもしれません。


 最弱の現役選手と、最弱の新人剣闘士。勝つのはいったいどちらでしょうか。明日の対戦が皆様にお楽しみいただけるよう、わたくしも全力で頑張りたいと思います。
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