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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!
覚えていてくれた、約束
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自分より体格のある男性を、不安定な体勢で。ですが、わたくしとてエリシア様から予選会出場を認められているのです。それを「お墨付き」と判断されたのか、シホ様は「どれどれ」と言いながら、お願いした通りに行動してくださいます。
鍛え上げられた膝が、わたくしの肩に食い込みます。シホ様の膝裏に手を差し入れて落ちないように気を付けて、わたくしは立ちあがります。
「このような体勢で成人男性を担いで難なく立ち上がれるようになれば、必要な筋力は身に着けたと認めると、当初からエリシア様との約束だったんです。打ち合いの際に姿勢を保てないほどに未熟な足腰では話にならない。剣技に関しては最低限の動きが出来れば、後は実戦で『負けながらでも』培っていけばいいと」
「なるほどねぇ。勝てる算段がついてから出場なんてやってたら、お姫様がお婆様になるまで出られねぇもんな」
「あっ、シホ様! あの約束、忘れてないですよね? わたくしが予選会に出場したら、名前で呼んでくださるって!」
「忘れてねえよ。レナ」
「……はいっ!?!」
「そうしろって言っておいて、その通りにしたら何をそんなに驚くんだよ」
「だって、あんなに……一年にも渡って渋っておられたのに、いざとなったらあっさりしてるから」
「オレの方から言い出したことだからなぁ」
「……シホ様は、どうせわたくしは試合になど出られないと、約束を叶えられない前提で言ったのではなくて。わたくしが一歩踏み出せるように、目指すべき動機をひとつ増やしてくださったのですよね?」
一年も前のことなんて覚えてねえ、なんて嘯いておられますが、わたくしはそう確信していました。
「レナこそ、いつまでもオレをシホ様って呼んでるじゃねえか」
「それはシホ様に限らず、剣闘士の皆様、全員に対してそうしていますので」
わたくしは剣闘大臣。予選会出場にあたってその役職は他の王族に譲ることにしましたが、剣闘士の皆様が戦ってくださり、剣闘場という場が成立するからこそ成り立つ役職に就いていました。王族であっても、目上の方々と思って尊敬を持って接するのは当然と考えておりました。
「今まではそれで構わなかったが、今後は予選会に出る以上は改めた方が良い。『誰々様、本日の対戦では宜しくお願い致します』なんてやってたら、相手はレナを王族、姫として意識して打ち合いにも遠慮が入るぜ」
「それは……確かに、あなたのおっしゃる通りです」
「つまり?」
鍛え上げられた膝が、わたくしの肩に食い込みます。シホ様の膝裏に手を差し入れて落ちないように気を付けて、わたくしは立ちあがります。
「このような体勢で成人男性を担いで難なく立ち上がれるようになれば、必要な筋力は身に着けたと認めると、当初からエリシア様との約束だったんです。打ち合いの際に姿勢を保てないほどに未熟な足腰では話にならない。剣技に関しては最低限の動きが出来れば、後は実戦で『負けながらでも』培っていけばいいと」
「なるほどねぇ。勝てる算段がついてから出場なんてやってたら、お姫様がお婆様になるまで出られねぇもんな」
「あっ、シホ様! あの約束、忘れてないですよね? わたくしが予選会に出場したら、名前で呼んでくださるって!」
「忘れてねえよ。レナ」
「……はいっ!?!」
「そうしろって言っておいて、その通りにしたら何をそんなに驚くんだよ」
「だって、あんなに……一年にも渡って渋っておられたのに、いざとなったらあっさりしてるから」
「オレの方から言い出したことだからなぁ」
「……シホ様は、どうせわたくしは試合になど出られないと、約束を叶えられない前提で言ったのではなくて。わたくしが一歩踏み出せるように、目指すべき動機をひとつ増やしてくださったのですよね?」
一年も前のことなんて覚えてねえ、なんて嘯いておられますが、わたくしはそう確信していました。
「レナこそ、いつまでもオレをシホ様って呼んでるじゃねえか」
「それはシホ様に限らず、剣闘士の皆様、全員に対してそうしていますので」
わたくしは剣闘大臣。予選会出場にあたってその役職は他の王族に譲ることにしましたが、剣闘士の皆様が戦ってくださり、剣闘場という場が成立するからこそ成り立つ役職に就いていました。王族であっても、目上の方々と思って尊敬を持って接するのは当然と考えておりました。
「今まではそれで構わなかったが、今後は予選会に出る以上は改めた方が良い。『誰々様、本日の対戦では宜しくお願い致します』なんてやってたら、相手はレナを王族、姫として意識して打ち合いにも遠慮が入るぜ」
「それは……確かに、あなたのおっしゃる通りです」
「つまり?」
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