上 下
40 / 111
史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

覚えていてくれた、約束

しおりを挟む
 自分より体格のある男性を、不安定な体勢で。ですが、わたくしとてエリシア様から予選会出場を認められているのです。それを「お墨付き」と判断されたのか、シホ様は「どれどれ」と言いながら、お願いした通りに行動してくださいます。

 鍛え上げられた膝が、わたくしの肩に食い込みます。シホ様の膝裏に手を差し入れて落ちないように気を付けて、わたくしは立ちあがります。

「このような体勢で成人男性を担いで難なく立ち上がれるようになれば、必要な筋力は身に着けたと認めると、当初からエリシア様との約束だったんです。打ち合いの際に姿勢を保てないほどに未熟な足腰では話にならない。剣技に関しては最低限の動きが出来れば、後は実戦で『負けながらでも』培っていけばいいと」

「なるほどねぇ。勝てる算段がついてから出場なんてやってたら、お姫様がお婆様になるまで出られねぇもんな」

「あっ、シホ様! あの約束、忘れてないですよね? わたくしが予選会に出場したら、名前で呼んでくださるって!」

「忘れてねえよ。レナ」

「……はいっ!?!」

「そうしろって言っておいて、その通りにしたら何をそんなに驚くんだよ」

「だって、あんなに……一年にも渡って渋っておられたのに、いざとなったらあっさりしてるから」

「オレの方から言い出したことだからなぁ」

「……シホ様は、どうせわたくしは試合になど出られないと、約束を叶えられない前提で言ったのではなくて。わたくしが一歩踏み出せるように、目指すべき動機をひとつ増やしてくださったのですよね?」

 一年も前のことなんて覚えてねえ、なんて嘯いておられますが、わたくしはそう確信していました。

「レナこそ、いつまでもオレをシホ様って呼んでるじゃねえか」

「それはシホ様に限らず、剣闘士の皆様、全員に対してそうしていますので」

 わたくしは剣闘大臣。予選会出場にあたってその役職は他の王族に譲ることにしましたが、剣闘士の皆様が戦ってくださり、剣闘場という場が成立するからこそ成り立つ役職に就いていました。王族であっても、目上の方々と思って尊敬を持って接するのは当然と考えておりました。


「今まではそれで構わなかったが、今後は予選会に出る以上は改めた方が良い。『誰々様、本日の対戦では宜しくお願い致します』なんてやってたら、相手はレナを王族、姫として意識して打ち合いにも遠慮が入るぜ」

「それは……確かに、あなたのおっしゃる通りです」

「つまり?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

処理中です...