39 / 111
史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!
女王の許可
しおりを挟む
それからのシホ様は、かつてご自分でおっしゃっていたように、これまでの破竹の勢いではなくなって、勝率が落ちていきました。これは悪い意味ばかりではなくて、ロンゴメリ様の時にそうしたように「策を弄して勝ちにこだわる必要がなくなり、正攻法で剣闘士らしく戦うようになった」ゆえのことでした。実際、ロンゴメリ様との再戦も何度かあり、正面から戦ったシホ様は技術で劣り敗北を重ねています。
それでも、機運に恵まれて優勝したことは数度あり、イルヒラ様との再戦もありました。しかしすでに手の内が明かされているため、イルヒラ様に勝利してエリシア様との再戦の権利を得てはおりません。
予選会の頃は特例、最初の本戦出場では姑息な手口で勝ち上がる姿を見せてきたシホ様は、決して剣闘場の選手や観客界隈から快い目で見られてはいませんでした。ですが、元からシホ様は社交的で人当たりの良い方です。真面目に剣闘士として取り組むようになってからは人々の見る目も変わって、試合前後に対戦相手へ積極的に交流されるので、剣闘士の親しい仲間も増えてきたようでした。
本戦で十文字槍を隠す必要がなくなってからはシホ様も剣闘場併設の鍛錬場で、親しくなった剣闘士の皆様と打ち合い稽古をするようになり、人目を避けるため夜に町の外へ出る必要はなくなったはずです。わたくしも、拾得した魔法剣のことを打ち明けて使って良しと認められたのだから同様です。……なのですが、お互いに何らかの気持ちがあって、わたくし達は相変わらず月明かりに恵まれた晩にはこうして共に過ごしていました。
「エリシアから認められて、予選会への出場が決まったんだって? おめでとうさん」
シホ様がグランティスへ来て、二年。正式に剣闘士になってから一年が経過した頃。わたくしにも、新しい世界へ一歩踏み出す日が訪れたことをシホ様にご報告していました。
「あ、ありがとうございます。わたくしのような未熟者が恐縮なのですが」
「十五歳になってすぐ予選会に出る新人は誰でも最初は未熟者さ。ところで、エリシアからの鍛錬と予選会出場を認める条件ってのは何だったんだい」
「それはですねー……」
わたくしは一度立ち上がり、シホ様にもそうしていただけるよう促します。彼が立ち上がるのと入れ替わりに、今度は膝を抱えてしゃがみます。あくまでしゃがむのであって地面に膝を着けてはいけませんし、足裏は踵までしっかり土を踏みしめます。
「シホ様。わたくしの肩の上に膝を乗せていただけますか?」
それでも、機運に恵まれて優勝したことは数度あり、イルヒラ様との再戦もありました。しかしすでに手の内が明かされているため、イルヒラ様に勝利してエリシア様との再戦の権利を得てはおりません。
予選会の頃は特例、最初の本戦出場では姑息な手口で勝ち上がる姿を見せてきたシホ様は、決して剣闘場の選手や観客界隈から快い目で見られてはいませんでした。ですが、元からシホ様は社交的で人当たりの良い方です。真面目に剣闘士として取り組むようになってからは人々の見る目も変わって、試合前後に対戦相手へ積極的に交流されるので、剣闘士の親しい仲間も増えてきたようでした。
本戦で十文字槍を隠す必要がなくなってからはシホ様も剣闘場併設の鍛錬場で、親しくなった剣闘士の皆様と打ち合い稽古をするようになり、人目を避けるため夜に町の外へ出る必要はなくなったはずです。わたくしも、拾得した魔法剣のことを打ち明けて使って良しと認められたのだから同様です。……なのですが、お互いに何らかの気持ちがあって、わたくし達は相変わらず月明かりに恵まれた晩にはこうして共に過ごしていました。
「エリシアから認められて、予選会への出場が決まったんだって? おめでとうさん」
シホ様がグランティスへ来て、二年。正式に剣闘士になってから一年が経過した頃。わたくしにも、新しい世界へ一歩踏み出す日が訪れたことをシホ様にご報告していました。
「あ、ありがとうございます。わたくしのような未熟者が恐縮なのですが」
「十五歳になってすぐ予選会に出る新人は誰でも最初は未熟者さ。ところで、エリシアからの鍛錬と予選会出場を認める条件ってのは何だったんだい」
「それはですねー……」
わたくしは一度立ち上がり、シホ様にもそうしていただけるよう促します。彼が立ち上がるのと入れ替わりに、今度は膝を抱えてしゃがみます。あくまでしゃがむのであって地面に膝を着けてはいけませんし、足裏は踵までしっかり土を踏みしめます。
「シホ様。わたくしの肩の上に膝を乗せていただけますか?」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~
キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。
事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。
イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる
どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。
当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。
どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。
そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。
報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。
こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。
お約束の異世界転生。計画通りに婚約破棄されたので去ります──って、なぜ付いてくる!?
リオール
恋愛
ご都合主義設定。細かい事を気にしない方向けのお話です。
5話完結。
念押ししときますが、細かい事は気にしないで下さい。
【完結】試される愛の果て
野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。
スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、
8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。
8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。
その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、
それは喜ぶべき縁談ではなかった。
断ることなったはずが、相手と関わることによって、
知りたくもない思惑が明らかになっていく。
証拠はなにもないので、慰謝料は請求しません。安心して二人で幸せになってください。
ふまさ
恋愛
アデルの婚約者、セドリック。アデルの幼なじみ、ダーラ。二人がアデルの目の前で口付けを交わす。
そして。
「このままアデルが死ねば、きっとなんの障害もなく、きみと一緒になれるのに」
セドリックの台詞に、ダーラが「……セドリック様」と、熱っぽい眼差しを向ける。
「軽蔑したかい?」
「いいえ、いいえ。あたし、同じことを思っていました。だってこのまま、例え意識を取り戻さなくても、アデルが生きていたら、セドリック様はずっと縛られたままなんじゃないかって……」
「流石にずっとこのままじゃ、それはないと思うけど。でもやっぱり、死んでくれた方が世間体もいいしって、考えてしまうよね」
「そう、ですね。でもあたしたち、酷いこと言ってません?」
「かもね。でも、きみの前で嘘はつきたくないから。その必要もないし」
「ですね」
クスクス。クスクス。
二人が愉快そうに笑い合う。
傍に立つアデルは、顔面蒼白なまま、膝から崩れ落ちた。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる