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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!
女王の許可
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それからのシホ様は、かつてご自分でおっしゃっていたように、これまでの破竹の勢いではなくなって、勝率が落ちていきました。これは悪い意味ばかりではなくて、ロンゴメリ様の時にそうしたように「策を弄して勝ちにこだわる必要がなくなり、正攻法で剣闘士らしく戦うようになった」ゆえのことでした。実際、ロンゴメリ様との再戦も何度かあり、正面から戦ったシホ様は技術で劣り敗北を重ねています。
それでも、機運に恵まれて優勝したことは数度あり、イルヒラ様との再戦もありました。しかしすでに手の内が明かされているため、イルヒラ様に勝利してエリシア様との再戦の権利を得てはおりません。
予選会の頃は特例、最初の本戦出場では姑息な手口で勝ち上がる姿を見せてきたシホ様は、決して剣闘場の選手や観客界隈から快い目で見られてはいませんでした。ですが、元からシホ様は社交的で人当たりの良い方です。真面目に剣闘士として取り組むようになってからは人々の見る目も変わって、試合前後に対戦相手へ積極的に交流されるので、剣闘士の親しい仲間も増えてきたようでした。
本戦で十文字槍を隠す必要がなくなってからはシホ様も剣闘場併設の鍛錬場で、親しくなった剣闘士の皆様と打ち合い稽古をするようになり、人目を避けるため夜に町の外へ出る必要はなくなったはずです。わたくしも、拾得した魔法剣のことを打ち明けて使って良しと認められたのだから同様です。……なのですが、お互いに何らかの気持ちがあって、わたくし達は相変わらず月明かりに恵まれた晩にはこうして共に過ごしていました。
「エリシアから認められて、予選会への出場が決まったんだって? おめでとうさん」
シホ様がグランティスへ来て、二年。正式に剣闘士になってから一年が経過した頃。わたくしにも、新しい世界へ一歩踏み出す日が訪れたことをシホ様にご報告していました。
「あ、ありがとうございます。わたくしのような未熟者が恐縮なのですが」
「十五歳になってすぐ予選会に出る新人は誰でも最初は未熟者さ。ところで、エリシアからの鍛錬と予選会出場を認める条件ってのは何だったんだい」
「それはですねー……」
わたくしは一度立ち上がり、シホ様にもそうしていただけるよう促します。彼が立ち上がるのと入れ替わりに、今度は膝を抱えてしゃがみます。あくまでしゃがむのであって地面に膝を着けてはいけませんし、足裏は踵までしっかり土を踏みしめます。
「シホ様。わたくしの肩の上に膝を乗せていただけますか?」
それでも、機運に恵まれて優勝したことは数度あり、イルヒラ様との再戦もありました。しかしすでに手の内が明かされているため、イルヒラ様に勝利してエリシア様との再戦の権利を得てはおりません。
予選会の頃は特例、最初の本戦出場では姑息な手口で勝ち上がる姿を見せてきたシホ様は、決して剣闘場の選手や観客界隈から快い目で見られてはいませんでした。ですが、元からシホ様は社交的で人当たりの良い方です。真面目に剣闘士として取り組むようになってからは人々の見る目も変わって、試合前後に対戦相手へ積極的に交流されるので、剣闘士の親しい仲間も増えてきたようでした。
本戦で十文字槍を隠す必要がなくなってからはシホ様も剣闘場併設の鍛錬場で、親しくなった剣闘士の皆様と打ち合い稽古をするようになり、人目を避けるため夜に町の外へ出る必要はなくなったはずです。わたくしも、拾得した魔法剣のことを打ち明けて使って良しと認められたのだから同様です。……なのですが、お互いに何らかの気持ちがあって、わたくし達は相変わらず月明かりに恵まれた晩にはこうして共に過ごしていました。
「エリシアから認められて、予選会への出場が決まったんだって? おめでとうさん」
シホ様がグランティスへ来て、二年。正式に剣闘士になってから一年が経過した頃。わたくしにも、新しい世界へ一歩踏み出す日が訪れたことをシホ様にご報告していました。
「あ、ありがとうございます。わたくしのような未熟者が恐縮なのですが」
「十五歳になってすぐ予選会に出る新人は誰でも最初は未熟者さ。ところで、エリシアからの鍛錬と予選会出場を認める条件ってのは何だったんだい」
「それはですねー……」
わたくしは一度立ち上がり、シホ様にもそうしていただけるよう促します。彼が立ち上がるのと入れ替わりに、今度は膝を抱えてしゃがみます。あくまでしゃがむのであって地面に膝を着けてはいけませんし、足裏は踵までしっかり土を踏みしめます。
「シホ様。わたくしの肩の上に膝を乗せていただけますか?」
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