魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

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巨神竜を追いかけて

仕切り直し

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「エリシア様のおまけみたいに扱われるのが不服っていうから、あんたを倒せればあっちともそれなりに良い勝負が出来るのかと思ったのに。あんたとあいつの実力、天地ほどの落差があるじゃないか」

「誰がそんな言い方したっつーの。俺は剣闘士と戦えるくらいには鍛えてあるって言っただけで、戦いに関してエリシアと対等なんて言ってない。おまえが勝手に勘違いしただけだろ?」

 言っちゃ悪いけど、戦闘馬鹿のエリシアには俺みたいに頭を使った仕事はこなせないし、お互いの長所で不足を補ってる、対等の関係。それが巨神竜としての自分達の在り方なんだよ。イルヒラ様はそうおっしゃいますが、この場での会話はエリシア様にも筒抜けです。このような言葉選びをして、エリシア様の不興を買うのではと冷や冷やしてしまいます。


「……そんな簡単に果たせると思ってたわけじゃないつもりだったが、心の奥底じゃあ見積もりが甘かったんだろうな。オレに出せる全てを捧げて取り組んできたんだから、きっと報われるはずだ……ってな」

「……わかってると思うけど、使える時間の限りがあるとか努力の内容とかそれぞれ違っても、自分に出せる全てをかけて挑んでるってのは皆同じだからな」

「わかってんよー。その上で、『とにかく最速で望みを果たしたい』って、オレの頭ん中の空論が通用しなかった。今回わかったのはそういうことだな」

 シホ様は座ったまま、指を組んで腕を上や前に伸ばして柔軟運動してから立ち上がりました。

「今後は相棒を隠す必要もないし、ひと試合ごとの勝敗にゃこだわらないで、どの剣闘士とあたっても『自分の技術を磨く目的』で打ち合うことにするわ。どんだけ策をこらしたところで、エリシアの常識はずれの動きの前じゃあ無意味だ。そういうことだったんだろ?」

「親善試合で負けた後で俺が言ったことについてなら、そういうことだよ」

 シホ様はイルヒラ様に先入観を抱かせて意表を突く作戦で、計算通りに勝利を収めました。しかし、全く同じ動作をして、先入観を抱かせることに成功したとしても、相手がエリシア様であれば難なくかわされます。同じ結果にはならないということです。

「明日は予選会で、本戦の試合はなし、か。一日くらいはゆっくり休んでみるかな。そんじゃ、おふたりさん。また剣闘場で」

 ひらひらと手を振るシホ様が歩き出し、グランティスの街並みへ去っていくのを見送りました。

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