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巨神竜を追いかけて

イルヒラ様の戦い

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「ごめいさーつ。さっすが、三度の飯より武器が好きなエリシア様の相方だ」

「つくづく、腕よりも頭から入る奴だなぁ。感心するよ」

 ……頭だけだったら、軽蔑するけど。きちんと戦略を立ててから、それを成すための修練を重ねた上で、ここに立っている。それがわかるから、ただただ素直に感心する。イルヒラ様は、シホ様をそう讃えました。相棒と呼ぶ十文字槍を携えるその姿勢だけで、シホ様が頭だけ、小手先だけで自分達に対峙しているわけではないとイルヒラ様も見抜いておられるのです。


「俺達も長く生きてるし、十文字槍と戦ったこともないわけじゃないけどな。面白いじゃないか。こっちからしても、相手に取って不足はない」

 イルヒラ様は腰をやや落とし、脇をしっかりしめて前傾がちの姿勢になり、やや左斜めに戦斧を構えました。斧を振りかぶる際に隙が生じるのは百も承知で、細心の注意を払っておられます。

「普段の試合じゃ勧めないけどな。俺達の体はおまえの武器でどれだけ傷を受けても大した時間もかからず完治するし、死にもしない。体に直接突こうが切ろうが、遠慮はいらないぜ。逆に、こっちからおまえに傷はやらないように気を付ける。殺しかねないからな」

「そりゃあ、遠慮願えれば助かるね。こっちも、一方的に流血させるのは気分も良くないから気を付けるとするさ」


 シホ様も長柄を両手で握り直し、イルヒラ様へ向かって突き出します。お互いの刃が触れあいそうな距離感です。

 通常の試合とは違うので、今回は双方が構えあって、動き出したら対戦開始ということになっています。

 先に動いたのは、イルヒラ様でした。腰を落としたまま素早く、右足、左足と踏み出して、膝をばねのように弾ませて超重量の斧を天高く振りかざし、落としました。

 シホ様は十文字槍の枝で、分厚い斧の刃を受け止めました。が、

「ぐっ……、さっすが、重たいじゃねぇか……っ」

 斧の重量だけでなく、それを使いこなす、人並み外れた腕力。受け止めることが出来ても、全力で落とされたそれを「跳ね返す」ことなど、簡単には出来ません。だから先ほど、イルヒラ様は「出来るのであれば、跳ね返せる」とおっしゃったのでしょう。

 押し返すことの出来なかったシホ様は左足を引いて後ろに下がり、受け止めた斧から穂先を辛くもすり抜けます。柄を握りしめていた手は衝撃を受けて痺れを訴えて、素早く切り返す動きが出来ず。イルヒラ様は油断なく脇をしめて、今度は斧の刃を横にして、水平に振りました。シホ様は後ろに跳躍してそれを避けるしかありません。

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