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巨神竜を追いかけて

第一歩

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 シホ様も今は本戦に参加する剣闘士ですので、エリシア様も主賓室から試合を観戦されています。同席していたわたくしは、試合の合間の選手の準備、待機時間を見計らってあの話をご相談しました。

「ゆくゆくは剣闘士目指したくて、予選会から参加したい? いいんじゃないの、別に」

 お返事は、ある意味、わたくしの想像していた通りでした。王族と言えどわたくしが唯一無二の血筋というわけではありませんので、もしわたくしの身に何かあって子孫を残せなかったとしても、大局的な影響はないでしょう。

 とはいえ、「反対はされない」というだけで、わたくしに対して「期待する」という感情は全くありません。いたって淡泊な反応です。エリシア様は「やってみたい!」という意気込みだけで人を評価する方ではありません。きちんと努力と鍛錬を重ねて、そのやる気に相応した実力を備えて初めて評価に値する。そういう判断基準を信条とされています。

「出るっていうなら今すぐじゃなくて、きちんと体を作ってからよ。あんたもグランティスの王族に生まれたんだからわかるわよね」

「はい。相応の鍛錬もせず、ただやってみたいからと試合に出るなんて、現役で戦っておられる選手の皆様に失礼ですから」

「あんまりにも弱っちいままで出られたら王家の恥だから、あたしも時間見つけて鍛えてあげる。ありがたく思いなさい」

「もちろんです。ありがとうございます」

 世界で最強の闘神であられるエリシア様が、「血族だから」という理由ひとつで特別に時間を設けてくださるのですから、こんなにもありがたいことはないでしょう。わたくしは頭を下げました。

 得物は何を用いるのかと訊ねられたので、わたくしは普段は服の内側にこっそり隠している魔法剣トイトイの宝石を差し出しました。あの夜、シホ様に話した事情も打ち明けます。砂漠で拾って、盗んでしまったものだと。

 エリシア様は真剣な眼差しで宝石を隅々まで眺め、触って確かめて、刻印された「トイトイ」の文字を指でなぞります。

「この『トイトイ』に関しちゃ、クラシニアに返す必要ないわ。だからあんたが拾って使ってても問題なし」

「問題なし? どうしてそのようにわかるのですか?」
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