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彼は自らの意思で、わたくしの国を最期の地に選んだのです。

目指すべき、偉大なる女王

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「お姫様、オレはね。二十年しか生きられないからこそ、その時間の全てを自分のために使いたい。オレの生きた証をこの世に残したい。エリシアと戦いたいなんて、いたって不純な動機だよ。エリシアと戦って勝てたとしたら、間違いなく、世界の歴史の一行としてオレの名が書き残されるだろう?」

 ……そも、勝てなかったとしても、「エリシア様と戦えた」というそれだけで。我が国の剣闘場の歴史に彼の名前は残ります。それはつまり、剣闘場の本戦で優勝した証、なのですから。



「……シホ、様。わたくしは……本当は。エリシア様のような、強く気高い女性になりたくて。ずっとずっと、彼女に憧れているんです。……でも、いつまでも憧れるばかりで、実際には何も行動してこなかったんです」

 あなたと違って、自分の命の限りなんて、見つめたことがないから。王族に生まれて、衣食住にも病にも悩まされたことがなかったから。そんな情けない自分が許せませんでした。

「まあ、ねえ。あれだけ偉大な女王様の影にいたんじゃあ、そうなるのも無理はない。そう卑下することはないんだが、いつまでもこのままで甘んじているんなら、人生の最後に後悔するかもしれないな」

「そう、ですよね……」

「下世話を言うようだが、子孫さえ残せばあんたの務めは果たせるのかい? だったらそいつを片付けてからなら、自分のやりたいことに挑戦出来るんじゃないか」

 そいつを終えてからだって、あんたの人生はまだまだ長いはずだろう? 他の誰でもない、彼にそう言われてしまっては……わたくしには、それを否定することなんて、とても出来ませんでした。
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