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第十一章
『国内の態勢固め』
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とうとうイル・カナン国より救援要請が来た。
オロシャ国の主だった有力貴族には非常呼集が掛けられ、個人用に取り置きしている二機の量産型の四つ足ゴーレムにそれぞれ馬車を引かせて街道を突っ走る。もちろん居候して研究三昧のガブリールの奴も専用馬車で同行だ。
いきなり戦闘になる可能性は少ないが、移動面も含めてこちらの方が早いからである。
「流石はゴルビー伯、早いな」
「コンスタン・ティン伯! 閣下も列車でおいででしたか」
「今となってはこちらの方が早いでな」
通常の運航便はまだ持続しているようで百足列車が走っている。
偶々北から南に向かう便があった為か、コンスタン・ティン伯は新街道で途中まで移動し、農業圏構想を回る便があればそれで王都入りする予定だったらしい。
こうなると物のついでなので、こちらから話をしよう。
「よろしければ私の馬車に乗られますか? こういう時に勘繰られることもないでしょうし、こちらはまだ余裕があります」
「そうさせてもらおうかの。部下たちはおっつけ馬でやって来るじゃろ」
基本的に装飾に凝る気がないので馬車はバランス型の四人乗りにしている。
いざと成れば座席を取り外して、簡易寝台を一つくらいなら入れられる程度の大きさだ。まあ毛皮の敷物を敷いて座りながら寝た方が良いレベルではあるけどな。なのでコンスタン・ティン伯と護衛くらいなら乗れるし、なんだったらガブリールの馬車にも一人か二人くらいは乗せられるだろう(やらんけど)。
そして乗り換えで去って行く百足列車を眺めてコンスタン・ティン伯は感慨深い目で見ていた。
「まさかこれほどの速度で有力諸侯が集まるとは、王都在住の連中も思いもせぬだろうな。変われば変わる物だ……。時に、アレは連れて行かないのかね?」
「技術を試している所ですからね。砦攻めがあるなら連れ出します」
街道と言うのは本来、ウネウネと蛇行したり都市の位置を誤魔化すものだ。
だが、新街道と農業圏構想で街道整備と農地開拓を大々的に行ったため、沿線各領地はかなり整備されて見易くそして移動し易く成って居る。各領主が躊躇せずに利用すれば、ほどなく招集された全員が集まるだろう(読んでない奴も含めて)。
ちなみにアレというのは空飛ぶゴーレムであるUn-15ソヴィエトである。
「砦攻めが楽になるじゃろうの。正門を簡単に奪える。いや、横の壁も壊せるか? だとすると戦いが根本から変わってしまうわい」
「現状ではそこまでの強さは持たせられませんよ。魔法の槍でもあればかな」
何か言おうとしてコンスタン・ティン伯は難しい顔をした。
おそらく『なんじゃ出来るのではないか』と言おうとして、ゴーレムサイズの魔法の槍を作る労力と、ソレを他の何に役立てるのかという無意味さに気が付いたのだろう。それこそドラゴンでも出てこない限りは使い道はないし、ドラゴンが居るなら最初からと連れ出すなら有能な魔術師を連れてけば良いのである。何しろ攻撃呪文が得意な魔術師は遥か遠距離から攻撃できるからな。
それを考えたら巨大な魔法の槍を作る労力と費用など、無意味でしかない。なんというか現状では空を飛ばせるよりは、城壁を跳び越えて門の裏側に移動するだけの方が良いだろう。
「話を変えるとして、今回の戦いはどうなりそうかのう?」
「イル・カナン行政府の現状認識次第でしょう。人伝手に聞いた話ですと、奪っても居ないイラ・カナンの土地分配で揉めて居たそうです。話が付いたのか、それとも日和見で大変な目にあった小領主が悲鳴を上げたのかで異なるでしょうよ」
結局、あっちの国も貴族の大所帯に過ぎない。
王家も大きな権限を有すると言うだけで、最大の発言力を持つ有力者の顔色を伺う事しかできないのだ。オロシャ王国も似たようなものだが、現時点では王党派が俺とレオニード伯の功績もあって優位に立っているに過ぎない。それでも政府見解が通り易いだけでもマシと言う辺り、忠誠だからと言って王様は絶対ではないのである(だからこそ権威を破壊させるような無礼者を許さない)。
そんな話をした時、コンスタン・ティン伯は肩をすくめて苦笑した。
「ひとまずこの間、魔物が溢れたような時が参考になるかもしれません。領内への侵入を許してくれないのに、『何をしている。さっさと魔物を根絶しろ』とか言い出す感じですかね。援軍だから強制される理由はありませんが、我々を後進国だと信じている末端の連中が何処まで話を聞いてくれるかは分かりません」
「何処も似たようなものだが実に馬鹿馬鹿しい結末になりそうじゃな」
国王ですら貴族に強制することが出来ないのが封建制度である。
イル・カナン行政府として大臣や有力諸侯が援軍要請しろと押し切る事は出来ても、その後にどこまで援助するかは判らないのである。そのまま駐留されたら困るし、食料提供だの最低限の宿手配くらいから交渉開始されたら御の字だろう。喜び勇んで何も考えずに頷いたら、『援軍の維持費や報酬など求められなかった』と手弁当での参戦を求められるに違いない。
それを越えても魔物退治に動く我々を、下っ端の貴族や郷士たちが自分達の領地に大人しく案内してくれるかどうかは別なのである。
「せめて我が国が貧乏籤に陥らぬようにするしかあるまいて」
「幾ら儲けてもそれ以上の出費をすれば意味がありませんからね。問題はイル・カナンの貴族がこちらの一抜けを許してくれるかどうかですけれど、こちらも一枚岩ではないので乗る者も出るでしょう」
例え金貨百枚を得ても、何万枚もの出費をすれば意味が無い。
この話の面倒な所は、『放置するとオロシャにも魔物が流れて来る』という事と、『互いに貴族の寄り合い所帯だから、被害のない者同士で手が組める』という事があるのだ。少なくとも東部の貴族であるキーエル家やバルガス家と、それに付き従う寄り子たちは迷惑だろう。ウッラ-ル騎士団と追う一つの騎士団が常駐していた経緯からも、その被害範囲は結構広いのではないだろうか?
そしてヨセフ伯ら西部の貴族にはまるで被害がないので、高みの見物で戦力を派遣しなかったり、積極的に攻めて報酬を『オロシャ王家』に強請ったり現地を飛び地として切り取る野望を抱けるのである。もちろん実際に血を流すのは、魔物が居ると困る東部貴族だろう。
「ゴルビー伯爵。貴公ならばどうするね?」
「基礎的な報酬と駐留費用に関しては上の人たちに任せるという仮定になりますが……。これまでやった事の焼き直しを提案して、それで良いかをイル・カナン行政府に呑ませるくらいですかね。例えばそう……」
俺に何かできるかと言われれば、やはり経験則でしかない。
オロシャ国内でも基本的に話を聞いてくれない現地貴族ばかりだった。それでも何とかなったのは、王党派を中心として話を聞く貴族たちに、新街道添いの新規開拓という利益を用意したからだ。目に見えて利益を我々が上げ、魔物も減ってきたことで諸侯も重い腰を上げたことが影響している。
ただ、先行して土地を切り拓いているイル・カナンだと難しいだろう。それこそ街道を整備するのにも一苦労な気がする。
「沿岸部の貴族で話の分かる誰かと報酬抑え目で取引し、まずは拠点を確保」
「暫く魔物の上陸を防ぎつつイル・カナン国内を可能な範囲掃除するとして」
「冒険者という魔物退治専門の傭兵を紹介し、冒険者ギルドを設置します」
「後は本人たちに任せるくらいですかね? もちろんイラ・カナンの地を勝手に復興させても良いなら、後継者を丸抱えして切り取るのもアリなんですが、利権で揉めるくらいなら無理でしょう。強行した場合は下手をすると傀儡政府や他の国と手を組んで、『オロシャは援軍と称して不当に我が領土を占有している』と言い出しかねません」
基本的にイル・カナンの連中を信用するのは間違いだろう。
こちらは長期的スパンで魔物の流入を避けるように話を持っていくのが妥当だと思われる。その上で出来るだけ双方の出費を抑えるプランを提示し、そこまではお互いに元が取れる段階だとして、それ以上を要求するなら何らかの報酬を提示させる訳だ。土地の切り取りに関してもイル・カナン行政府とイラ・カナンの後継者両方の承認を受けるとか、それを第三者にも確認してもらうのが妥当だろう。後で反故にされても困るからな。
最悪の場合だが……イル・カナン行政府の目が届かない位置に拠点を設け、何処かの島を後まで続く飛び地として管理するのも手かもしれない。それこそ旧イラ・カナンより南だったら、それはもう別の国の領地だしな(そこも滅びているので、元になるが)。
「そんなところじゃろうのう。後はその案をこちらで押し通せるかじゃ」
「レオニード伯は事前に話をしておけば問題ないでしょう。問題なのはヨセフ伯と、味方である筈のキーエル家とバルガス家ですね。あそこは意見が割れ易いですから、領地なり利益に不満を抱えている奴が動く可能性はあります」
お互いの政府が交渉するなら、仮に言い負けても多寡が知れる。
後払いの報酬で『先祖伝来の貴重な宝石を譲ろう!』とか言われて済まされない限り、現地での食料やら拠点での居住は保証されるだろう。その場合に気を付けるなら矢表に立たされてしまう事だけだが、まあ最初から単独で戦う気でいれば問題ない。
問題なのは是が非でも切り取り放題にしたい連中や、報酬を有耶無耶にされたとしても代わりに実効支配したい連中になるだろう。力があれば何でもしてよいという連中は何処にでもいるからな。
「……レオニード伯の許可を取ってからですが、キーエル夫妻は俺が何とか動かそうと思います。老バルガスを通じてバルガス家を動かせますか?」
「やってみよう。じゃが報酬までは出せんぞ?」
「その辺りはこちらで何とかしますよ。今は複数の派閥を一つにしないと」
午前会議までの残り時間は少ない。
コンスタン・ティン伯とここで同乗出来たのは大きいだろう。早めに態勢固めをして、少なくとも安全策で押していくべきだ。途中でヨセフ伯たちが何か言うにしても、絶対多数を抑えられないとどうしようもないからな。
こうしてイル・カナン救援問題にかかわる為に王都へと乗り込むのだった。
とうとうイル・カナン国より救援要請が来た。
オロシャ国の主だった有力貴族には非常呼集が掛けられ、個人用に取り置きしている二機の量産型の四つ足ゴーレムにそれぞれ馬車を引かせて街道を突っ走る。もちろん居候して研究三昧のガブリールの奴も専用馬車で同行だ。
いきなり戦闘になる可能性は少ないが、移動面も含めてこちらの方が早いからである。
「流石はゴルビー伯、早いな」
「コンスタン・ティン伯! 閣下も列車でおいででしたか」
「今となってはこちらの方が早いでな」
通常の運航便はまだ持続しているようで百足列車が走っている。
偶々北から南に向かう便があった為か、コンスタン・ティン伯は新街道で途中まで移動し、農業圏構想を回る便があればそれで王都入りする予定だったらしい。
こうなると物のついでなので、こちらから話をしよう。
「よろしければ私の馬車に乗られますか? こういう時に勘繰られることもないでしょうし、こちらはまだ余裕があります」
「そうさせてもらおうかの。部下たちはおっつけ馬でやって来るじゃろ」
基本的に装飾に凝る気がないので馬車はバランス型の四人乗りにしている。
いざと成れば座席を取り外して、簡易寝台を一つくらいなら入れられる程度の大きさだ。まあ毛皮の敷物を敷いて座りながら寝た方が良いレベルではあるけどな。なのでコンスタン・ティン伯と護衛くらいなら乗れるし、なんだったらガブリールの馬車にも一人か二人くらいは乗せられるだろう(やらんけど)。
そして乗り換えで去って行く百足列車を眺めてコンスタン・ティン伯は感慨深い目で見ていた。
「まさかこれほどの速度で有力諸侯が集まるとは、王都在住の連中も思いもせぬだろうな。変われば変わる物だ……。時に、アレは連れて行かないのかね?」
「技術を試している所ですからね。砦攻めがあるなら連れ出します」
街道と言うのは本来、ウネウネと蛇行したり都市の位置を誤魔化すものだ。
だが、新街道と農業圏構想で街道整備と農地開拓を大々的に行ったため、沿線各領地はかなり整備されて見易くそして移動し易く成って居る。各領主が躊躇せずに利用すれば、ほどなく招集された全員が集まるだろう(読んでない奴も含めて)。
ちなみにアレというのは空飛ぶゴーレムであるUn-15ソヴィエトである。
「砦攻めが楽になるじゃろうの。正門を簡単に奪える。いや、横の壁も壊せるか? だとすると戦いが根本から変わってしまうわい」
「現状ではそこまでの強さは持たせられませんよ。魔法の槍でもあればかな」
何か言おうとしてコンスタン・ティン伯は難しい顔をした。
おそらく『なんじゃ出来るのではないか』と言おうとして、ゴーレムサイズの魔法の槍を作る労力と、ソレを他の何に役立てるのかという無意味さに気が付いたのだろう。それこそドラゴンでも出てこない限りは使い道はないし、ドラゴンが居るなら最初からと連れ出すなら有能な魔術師を連れてけば良いのである。何しろ攻撃呪文が得意な魔術師は遥か遠距離から攻撃できるからな。
それを考えたら巨大な魔法の槍を作る労力と費用など、無意味でしかない。なんというか現状では空を飛ばせるよりは、城壁を跳び越えて門の裏側に移動するだけの方が良いだろう。
「話を変えるとして、今回の戦いはどうなりそうかのう?」
「イル・カナン行政府の現状認識次第でしょう。人伝手に聞いた話ですと、奪っても居ないイラ・カナンの土地分配で揉めて居たそうです。話が付いたのか、それとも日和見で大変な目にあった小領主が悲鳴を上げたのかで異なるでしょうよ」
結局、あっちの国も貴族の大所帯に過ぎない。
王家も大きな権限を有すると言うだけで、最大の発言力を持つ有力者の顔色を伺う事しかできないのだ。オロシャ王国も似たようなものだが、現時点では王党派が俺とレオニード伯の功績もあって優位に立っているに過ぎない。それでも政府見解が通り易いだけでもマシと言う辺り、忠誠だからと言って王様は絶対ではないのである(だからこそ権威を破壊させるような無礼者を許さない)。
そんな話をした時、コンスタン・ティン伯は肩をすくめて苦笑した。
「ひとまずこの間、魔物が溢れたような時が参考になるかもしれません。領内への侵入を許してくれないのに、『何をしている。さっさと魔物を根絶しろ』とか言い出す感じですかね。援軍だから強制される理由はありませんが、我々を後進国だと信じている末端の連中が何処まで話を聞いてくれるかは分かりません」
「何処も似たようなものだが実に馬鹿馬鹿しい結末になりそうじゃな」
国王ですら貴族に強制することが出来ないのが封建制度である。
イル・カナン行政府として大臣や有力諸侯が援軍要請しろと押し切る事は出来ても、その後にどこまで援助するかは判らないのである。そのまま駐留されたら困るし、食料提供だの最低限の宿手配くらいから交渉開始されたら御の字だろう。喜び勇んで何も考えずに頷いたら、『援軍の維持費や報酬など求められなかった』と手弁当での参戦を求められるに違いない。
それを越えても魔物退治に動く我々を、下っ端の貴族や郷士たちが自分達の領地に大人しく案内してくれるかどうかは別なのである。
「せめて我が国が貧乏籤に陥らぬようにするしかあるまいて」
「幾ら儲けてもそれ以上の出費をすれば意味がありませんからね。問題はイル・カナンの貴族がこちらの一抜けを許してくれるかどうかですけれど、こちらも一枚岩ではないので乗る者も出るでしょう」
例え金貨百枚を得ても、何万枚もの出費をすれば意味が無い。
この話の面倒な所は、『放置するとオロシャにも魔物が流れて来る』という事と、『互いに貴族の寄り合い所帯だから、被害のない者同士で手が組める』という事があるのだ。少なくとも東部の貴族であるキーエル家やバルガス家と、それに付き従う寄り子たちは迷惑だろう。ウッラ-ル騎士団と追う一つの騎士団が常駐していた経緯からも、その被害範囲は結構広いのではないだろうか?
そしてヨセフ伯ら西部の貴族にはまるで被害がないので、高みの見物で戦力を派遣しなかったり、積極的に攻めて報酬を『オロシャ王家』に強請ったり現地を飛び地として切り取る野望を抱けるのである。もちろん実際に血を流すのは、魔物が居ると困る東部貴族だろう。
「ゴルビー伯爵。貴公ならばどうするね?」
「基礎的な報酬と駐留費用に関しては上の人たちに任せるという仮定になりますが……。これまでやった事の焼き直しを提案して、それで良いかをイル・カナン行政府に呑ませるくらいですかね。例えばそう……」
俺に何かできるかと言われれば、やはり経験則でしかない。
オロシャ国内でも基本的に話を聞いてくれない現地貴族ばかりだった。それでも何とかなったのは、王党派を中心として話を聞く貴族たちに、新街道添いの新規開拓という利益を用意したからだ。目に見えて利益を我々が上げ、魔物も減ってきたことで諸侯も重い腰を上げたことが影響している。
ただ、先行して土地を切り拓いているイル・カナンだと難しいだろう。それこそ街道を整備するのにも一苦労な気がする。
「沿岸部の貴族で話の分かる誰かと報酬抑え目で取引し、まずは拠点を確保」
「暫く魔物の上陸を防ぎつつイル・カナン国内を可能な範囲掃除するとして」
「冒険者という魔物退治専門の傭兵を紹介し、冒険者ギルドを設置します」
「後は本人たちに任せるくらいですかね? もちろんイラ・カナンの地を勝手に復興させても良いなら、後継者を丸抱えして切り取るのもアリなんですが、利権で揉めるくらいなら無理でしょう。強行した場合は下手をすると傀儡政府や他の国と手を組んで、『オロシャは援軍と称して不当に我が領土を占有している』と言い出しかねません」
基本的にイル・カナンの連中を信用するのは間違いだろう。
こちらは長期的スパンで魔物の流入を避けるように話を持っていくのが妥当だと思われる。その上で出来るだけ双方の出費を抑えるプランを提示し、そこまではお互いに元が取れる段階だとして、それ以上を要求するなら何らかの報酬を提示させる訳だ。土地の切り取りに関してもイル・カナン行政府とイラ・カナンの後継者両方の承認を受けるとか、それを第三者にも確認してもらうのが妥当だろう。後で反故にされても困るからな。
最悪の場合だが……イル・カナン行政府の目が届かない位置に拠点を設け、何処かの島を後まで続く飛び地として管理するのも手かもしれない。それこそ旧イラ・カナンより南だったら、それはもう別の国の領地だしな(そこも滅びているので、元になるが)。
「そんなところじゃろうのう。後はその案をこちらで押し通せるかじゃ」
「レオニード伯は事前に話をしておけば問題ないでしょう。問題なのはヨセフ伯と、味方である筈のキーエル家とバルガス家ですね。あそこは意見が割れ易いですから、領地なり利益に不満を抱えている奴が動く可能性はあります」
お互いの政府が交渉するなら、仮に言い負けても多寡が知れる。
後払いの報酬で『先祖伝来の貴重な宝石を譲ろう!』とか言われて済まされない限り、現地での食料やら拠点での居住は保証されるだろう。その場合に気を付けるなら矢表に立たされてしまう事だけだが、まあ最初から単独で戦う気でいれば問題ない。
問題なのは是が非でも切り取り放題にしたい連中や、報酬を有耶無耶にされたとしても代わりに実効支配したい連中になるだろう。力があれば何でもしてよいという連中は何処にでもいるからな。
「……レオニード伯の許可を取ってからですが、キーエル夫妻は俺が何とか動かそうと思います。老バルガスを通じてバルガス家を動かせますか?」
「やってみよう。じゃが報酬までは出せんぞ?」
「その辺りはこちらで何とかしますよ。今は複数の派閥を一つにしないと」
午前会議までの残り時間は少ない。
コンスタン・ティン伯とここで同乗出来たのは大きいだろう。早めに態勢固めをして、少なくとも安全策で押していくべきだ。途中でヨセフ伯たちが何か言うにしても、絶対多数を抑えられないとどうしようもないからな。
こうしてイル・カナン救援問題にかかわる為に王都へと乗り込むのだった。
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