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第七章
『環状型産業構想』
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俺たちは北部の雄であるコンスタン・ティン伯のシェルン領に来ていた。
シェルンは耕作地の多さも森林の多さもゴルビーとは比較にならない。王都や他の要地への距離に至っては、北辺であるゴルビーとは比べ物にする方がおかしかった。
ただ、それはそれとして何か特徴があると言うとそうでもない。
別に穀倉地帯でもなく、ゲオルギア地方の様な山と森しかない場所でもなく、またレオニード伯も北部貴族に含まれることを考えると……どうにも際立って見るべき場所が無いのだ。まず謀反を疑われないというのがせめてもの特徴だろうか。
「お久しぶりですコンスタン・ティン伯」
「うむ。ゴルビー男爵が手広くやって居るとは聞いた。だが随分と妙な物でやって来たな。ゴーレムはともかく荷車の車列とは思いもせなんだ」
俺の挨拶もそこそこに伯爵は列車を眺めた。
ソブレメンヌイが四つ足なのは前々から聞いていただろうが、新たに作った百足列車に目を引かれたようだ。奇妙さが勝る反面、馬車や荷車である事を重視したという事だろう。
やはり列車の持つ輸送力と言うのは関心が大きいのだと思われた。
「陛下の許可待ちですが、いずれ定期便を用意する予定です」
「新街道を北部から南部へ。要望があれば東部から西部にも」
「今はそのテストケースというところです。正直な所、荷車と乗せる荷物や人数に適正な数値も判りません。もしかしたら馬車だけの方が早かったり、荷車だけの方が大量に運べるかもしれません。そんな状態ではレポートにも載せられませんからね」
此処で問題に名乗るが、『質の向上』の影響もあった。
仮に荷車ばかりなら重量が運べるが遅い、馬車ばかりなら早いとしよう。そうなったら適正な組み合わせを考えるか、あるいは専用の車列を二つ以上用意する手もある。そうなれば、極論だが人と貨物を分けて考えれば良い。
とはいえ、今の所は過重に反比例して遅くなる程度に考えておく。
「ふむ。それで木材を調達にワシの元へ来たのか」
「概ねそのような所です。もっとも、以前に提案した植林に関しても嘘ではありませんよ。新街道が発展すれば加速度的に建築が早まり、やがて木材の値は上がるでしょう。しかし、次々に切り倒していては、いつか枯渇しますから。それに、ゴルビーにも少しずつ植えて行きたいところです」
シェルンは暑い北部にしては森がかなり多い。
しかし、西部のゲオルギア程ではないし、好景気に駆られて好き放題に売りに出せば、禿山になって雨が降ると地崩れが起きかねなかった。だから今のうちに植林を事業にしたいのは確かだし、ゴルビーに植えていきたいというのも嘘ではない。
もっとも、今の段階では植林は大した商売にならないし、ゴルビーに植えても肥料もロクに無いのでは枯れるだけだろう。
「理解はできる。木が高くなるのはありがたいし、植林が必要であるというのもな。合わせれば今からやって行く方が良いのと言うのも確かなのじゃろう。それは判る」
「何か問題があるのでしょうか? 適正な取引を御願いする予定ですが」
「そこは疑っておらんよ。現に植林という名目で金を出してくれておろう」
「他に理由があると? 多少であれば御相談に乗れますが」
以前に治水に関して助言する代わりに木材を高めに購入している。
名目は植林だが、それは今でも続いている。元から大した量を購入していないし、定期的にコンスタン・ティン伯へ送金して、『借り』を返すまでは支払うと言う事に成っているからだ。だが、伯爵はそれだけでは無理だという。
もし、金の問題なら問題ない。それこそ植林に関して経験が詰めるまでくらいなら問題ないからだ。しかし、それだけとは思えなかった。
「五年、あるいは十年後はまだ良い。じゃが、その後にこのシェルンに何がある? ここは新街道からも王都からも離れておる。この大百足を見るのも今だけじゃろう。それならばいっそ、高く売れるなら売れるだけ売ってしまい、残りを全て畑にでもした方が良いのではないかと思うのじゃよ」
(田舎の沿線添いがシャッター街になるのを懸念する様なものかな)
どうやら特徴がない町と言うのを伯爵も気にしていたようだ。
もちろん、これまで通りに『自分の土地は己の一族だけで収める。お前たちは黙って居ろ』という旧来の貴族の姿勢を貫けるならばよいのだ。田舎貴族と呼ばれようとも、地方の雄と呼ばれるならば自尊心だって保たれる。だが、今は激動期だ。魔王を倒し魔族の軍隊を撃退し、俺のせいでもあるが急激に交通が発達している。
安全なだけでは意味もなく、風光明媚でも無い以上は別荘地にもならない。ならば、何を持って領地を発展させていくかが掴めないのだろう。
「それとも大百足の拠点を此処に作ってくれるかね? いや、そうもいかんだろう。同じような土地と言えどレオニードの所に作る義理はあっても、ワシの所に作る義理はあるまい。まだ森すべてと引き替えに、畑で埋め尽くしてくれと言う願いの方が聞けるはずだ」
(最後のが今の所の展望かな? ただ、それをやっても未来はない……と)
此処に駅を作るのは簡単だが、豊かな産業が無ければ意味が無い。
新街道の途中ならば、ここに宿場町を作るだけでも意味があるのだ。宿に金は落ちるし、料理に合わせた野菜でも牧場でも作れば良いだろう。だが、特に産業のない田舎町である。しかも歴史が極端に古いわけでもなく、否かと言うには多少大きい程度でしかない。
その点、レオニード伯も同じだが、もっと王都に近い上に、彼は王党派の家系だ。国軍や騎士団に人材を輩出している事だろうし、それだけでも人々は往復する。特に焦る必要はないのに、俺が彼の寄り子になっているので黙っていても駅と開墾地が作られる可能性すらあった。コンスタン・ティン伯でなくとも言いたい事はあろう。
(こちらの話を聞くだけなら金で良い。だが、もっと良い提案はないか?)
(話によっては聞いてやる。レオニード伯より優先するなら厚遇するぞ)
(あるいは本命の御願いは別にあって、大きな要求をまず出してる?)
(さて、この要望に対して俺はどう答えるかな? 希望に沿うのは簡単だけど、それではせっかく好転した金回りが悪くなるだけだし、うちに何の得も無い。ついでに言うと、俺が面白くないな。やはり流されてホイホイ頷くべきじゃない)
泣き言を言っているようにも聞こえるが、そうとも思えない。
借りにも地方の雄であり、この辺りの大立者である。ゴルビーが指から手首までだとしたら、手首から肘くらいまでの影響力がある相手だ。何も無いから俺一人でもらえたゴルビーに対し、コンスタン・ティン伯は周囲をずっとまとめ上げていたのである。方向性としては正しくとも、何かしらの糸が隠されているのだと思われた。
だが、重要なのは彼の真意よりも、俺が何をしたいかではないだろうか?
「閣下。ここは逆に考えるべきではないでしょうか? 例えばレオニード伯の所ではなく閣下の所ではなく、閣下の所のみと考えるのではなく、両方に作って双方を繋いでしまうのです」
「何? 両天秤に掛けるのはともかく、それでは何も得られまい」
「そこも含めて逆です。価値はむしろ作り出すと考えるのです」
「価値を作る? こんな何も無い場所にかね?」
せっかくなのでエゴ的な提案をする事にした。
自分本位の提案で、コンスタン・ティン伯の意思よりも俺の利益になる様に話を持ち込む。彼の利益だけではなく、俺の寄り親であるレオニード伯の利益に成る話、そして両方に音が売れるというか……どの道往復することになるので、都合よく新しい道を作る話を持ち出したのである。
もちろんそこに俺以外の利益はないので、彼らには今から利益を用意することになる。
「お二人を含めて何人かの領地を繋いで、円形の街道を作ります」
「すると王都から一定以上離れた領地が、それぞれ移動し易くなります」
「王都均衡は空き地がありませんが、こちらは豊かな土地を意図的に使えますからね。ある者は牧場を作り、別のある者はそこに降ろす餌となる雑穀を作り、それらを肥料に花であったり腐りやすい果物を育てる訳です。穀倉地帯と対抗さえしなければ、商品になる作物を見つけるのはそれほど難しくありませんよ」
この時代、基本的に自分の土地で関係している。
小麦などの主食となる穀物を育て、余った土地で適当に売れそうな商品作物を作っているわけだ。商品作物というのは余剰金を得るのには向いているが、本当に売れるか判らないのでコントロールし難いのもある。だが、地方の領主たちが意図的に手を組んで、集中的に分担したらどうだろう? 雑穀しか作れない土地だが、高く売れない領主も牧場向けに契約を獲れば良い。植物を育てるのに向かない場所でも、牧草くらいならば何とでもなるから(ゴルビーを覗いて)餌に成る雑穀があれば豚や鶏を増やせるのだ。花や果物も王都の近くでないと鮮度の問題で割に合わなかったが、こうやって街道を用意できるならば、むしろ地方の方が育て易いだろう。
そして、こうやって話を用意してコンスタン・ティン伯の主導でやらせるならば、彼のコネを使える分だけ、手伝う俺も今まで無理だった雑穀の種などを手に入れられるのだ。
「悪くはない。悪くはな。だが、それでもレオニードの土地に比べて劣るのでは? 奴だけに利益を渡すのものう」
「倉庫や宿場でも併設しますか? 向こうは近い分だけ意味が無いですよ」
「考えておこう。まあ、全ては陛下の許可が下りてからじゃな」
最後までゴネるのだが、段々老人の我儘に見えて来た。
どうしてうちの派閥に入らないのだと、ヨセフ伯が文句をつけたのと似たような感じでは無いだろうか? そもそも同じような場所にいるのだし、俺が彼の派閥に参加して居たら、何もしなくても利益も名声も入っていたわけだしな。だから代わりにアイデアと利益を齎せと言う事なのかもしれない。
その辺りの話を察したものの、特に反論はせず代わりに俺では手に入れられない種をゲットする道を手に入れたのである。
俺たちは北部の雄であるコンスタン・ティン伯のシェルン領に来ていた。
シェルンは耕作地の多さも森林の多さもゴルビーとは比較にならない。王都や他の要地への距離に至っては、北辺であるゴルビーとは比べ物にする方がおかしかった。
ただ、それはそれとして何か特徴があると言うとそうでもない。
別に穀倉地帯でもなく、ゲオルギア地方の様な山と森しかない場所でもなく、またレオニード伯も北部貴族に含まれることを考えると……どうにも際立って見るべき場所が無いのだ。まず謀反を疑われないというのがせめてもの特徴だろうか。
「お久しぶりですコンスタン・ティン伯」
「うむ。ゴルビー男爵が手広くやって居るとは聞いた。だが随分と妙な物でやって来たな。ゴーレムはともかく荷車の車列とは思いもせなんだ」
俺の挨拶もそこそこに伯爵は列車を眺めた。
ソブレメンヌイが四つ足なのは前々から聞いていただろうが、新たに作った百足列車に目を引かれたようだ。奇妙さが勝る反面、馬車や荷車である事を重視したという事だろう。
やはり列車の持つ輸送力と言うのは関心が大きいのだと思われた。
「陛下の許可待ちですが、いずれ定期便を用意する予定です」
「新街道を北部から南部へ。要望があれば東部から西部にも」
「今はそのテストケースというところです。正直な所、荷車と乗せる荷物や人数に適正な数値も判りません。もしかしたら馬車だけの方が早かったり、荷車だけの方が大量に運べるかもしれません。そんな状態ではレポートにも載せられませんからね」
此処で問題に名乗るが、『質の向上』の影響もあった。
仮に荷車ばかりなら重量が運べるが遅い、馬車ばかりなら早いとしよう。そうなったら適正な組み合わせを考えるか、あるいは専用の車列を二つ以上用意する手もある。そうなれば、極論だが人と貨物を分けて考えれば良い。
とはいえ、今の所は過重に反比例して遅くなる程度に考えておく。
「ふむ。それで木材を調達にワシの元へ来たのか」
「概ねそのような所です。もっとも、以前に提案した植林に関しても嘘ではありませんよ。新街道が発展すれば加速度的に建築が早まり、やがて木材の値は上がるでしょう。しかし、次々に切り倒していては、いつか枯渇しますから。それに、ゴルビーにも少しずつ植えて行きたいところです」
シェルンは暑い北部にしては森がかなり多い。
しかし、西部のゲオルギア程ではないし、好景気に駆られて好き放題に売りに出せば、禿山になって雨が降ると地崩れが起きかねなかった。だから今のうちに植林を事業にしたいのは確かだし、ゴルビーに植えていきたいというのも嘘ではない。
もっとも、今の段階では植林は大した商売にならないし、ゴルビーに植えても肥料もロクに無いのでは枯れるだけだろう。
「理解はできる。木が高くなるのはありがたいし、植林が必要であるというのもな。合わせれば今からやって行く方が良いのと言うのも確かなのじゃろう。それは判る」
「何か問題があるのでしょうか? 適正な取引を御願いする予定ですが」
「そこは疑っておらんよ。現に植林という名目で金を出してくれておろう」
「他に理由があると? 多少であれば御相談に乗れますが」
以前に治水に関して助言する代わりに木材を高めに購入している。
名目は植林だが、それは今でも続いている。元から大した量を購入していないし、定期的にコンスタン・ティン伯へ送金して、『借り』を返すまでは支払うと言う事に成っているからだ。だが、伯爵はそれだけでは無理だという。
もし、金の問題なら問題ない。それこそ植林に関して経験が詰めるまでくらいなら問題ないからだ。しかし、それだけとは思えなかった。
「五年、あるいは十年後はまだ良い。じゃが、その後にこのシェルンに何がある? ここは新街道からも王都からも離れておる。この大百足を見るのも今だけじゃろう。それならばいっそ、高く売れるなら売れるだけ売ってしまい、残りを全て畑にでもした方が良いのではないかと思うのじゃよ」
(田舎の沿線添いがシャッター街になるのを懸念する様なものかな)
どうやら特徴がない町と言うのを伯爵も気にしていたようだ。
もちろん、これまで通りに『自分の土地は己の一族だけで収める。お前たちは黙って居ろ』という旧来の貴族の姿勢を貫けるならばよいのだ。田舎貴族と呼ばれようとも、地方の雄と呼ばれるならば自尊心だって保たれる。だが、今は激動期だ。魔王を倒し魔族の軍隊を撃退し、俺のせいでもあるが急激に交通が発達している。
安全なだけでは意味もなく、風光明媚でも無い以上は別荘地にもならない。ならば、何を持って領地を発展させていくかが掴めないのだろう。
「それとも大百足の拠点を此処に作ってくれるかね? いや、そうもいかんだろう。同じような土地と言えどレオニードの所に作る義理はあっても、ワシの所に作る義理はあるまい。まだ森すべてと引き替えに、畑で埋め尽くしてくれと言う願いの方が聞けるはずだ」
(最後のが今の所の展望かな? ただ、それをやっても未来はない……と)
此処に駅を作るのは簡単だが、豊かな産業が無ければ意味が無い。
新街道の途中ならば、ここに宿場町を作るだけでも意味があるのだ。宿に金は落ちるし、料理に合わせた野菜でも牧場でも作れば良いだろう。だが、特に産業のない田舎町である。しかも歴史が極端に古いわけでもなく、否かと言うには多少大きい程度でしかない。
その点、レオニード伯も同じだが、もっと王都に近い上に、彼は王党派の家系だ。国軍や騎士団に人材を輩出している事だろうし、それだけでも人々は往復する。特に焦る必要はないのに、俺が彼の寄り子になっているので黙っていても駅と開墾地が作られる可能性すらあった。コンスタン・ティン伯でなくとも言いたい事はあろう。
(こちらの話を聞くだけなら金で良い。だが、もっと良い提案はないか?)
(話によっては聞いてやる。レオニード伯より優先するなら厚遇するぞ)
(あるいは本命の御願いは別にあって、大きな要求をまず出してる?)
(さて、この要望に対して俺はどう答えるかな? 希望に沿うのは簡単だけど、それではせっかく好転した金回りが悪くなるだけだし、うちに何の得も無い。ついでに言うと、俺が面白くないな。やはり流されてホイホイ頷くべきじゃない)
泣き言を言っているようにも聞こえるが、そうとも思えない。
借りにも地方の雄であり、この辺りの大立者である。ゴルビーが指から手首までだとしたら、手首から肘くらいまでの影響力がある相手だ。何も無いから俺一人でもらえたゴルビーに対し、コンスタン・ティン伯は周囲をずっとまとめ上げていたのである。方向性としては正しくとも、何かしらの糸が隠されているのだと思われた。
だが、重要なのは彼の真意よりも、俺が何をしたいかではないだろうか?
「閣下。ここは逆に考えるべきではないでしょうか? 例えばレオニード伯の所ではなく閣下の所ではなく、閣下の所のみと考えるのではなく、両方に作って双方を繋いでしまうのです」
「何? 両天秤に掛けるのはともかく、それでは何も得られまい」
「そこも含めて逆です。価値はむしろ作り出すと考えるのです」
「価値を作る? こんな何も無い場所にかね?」
せっかくなのでエゴ的な提案をする事にした。
自分本位の提案で、コンスタン・ティン伯の意思よりも俺の利益になる様に話を持ち込む。彼の利益だけではなく、俺の寄り親であるレオニード伯の利益に成る話、そして両方に音が売れるというか……どの道往復することになるので、都合よく新しい道を作る話を持ち出したのである。
もちろんそこに俺以外の利益はないので、彼らには今から利益を用意することになる。
「お二人を含めて何人かの領地を繋いで、円形の街道を作ります」
「すると王都から一定以上離れた領地が、それぞれ移動し易くなります」
「王都均衡は空き地がありませんが、こちらは豊かな土地を意図的に使えますからね。ある者は牧場を作り、別のある者はそこに降ろす餌となる雑穀を作り、それらを肥料に花であったり腐りやすい果物を育てる訳です。穀倉地帯と対抗さえしなければ、商品になる作物を見つけるのはそれほど難しくありませんよ」
この時代、基本的に自分の土地で関係している。
小麦などの主食となる穀物を育て、余った土地で適当に売れそうな商品作物を作っているわけだ。商品作物というのは余剰金を得るのには向いているが、本当に売れるか判らないのでコントロールし難いのもある。だが、地方の領主たちが意図的に手を組んで、集中的に分担したらどうだろう? 雑穀しか作れない土地だが、高く売れない領主も牧場向けに契約を獲れば良い。植物を育てるのに向かない場所でも、牧草くらいならば何とでもなるから(ゴルビーを覗いて)餌に成る雑穀があれば豚や鶏を増やせるのだ。花や果物も王都の近くでないと鮮度の問題で割に合わなかったが、こうやって街道を用意できるならば、むしろ地方の方が育て易いだろう。
そして、こうやって話を用意してコンスタン・ティン伯の主導でやらせるならば、彼のコネを使える分だけ、手伝う俺も今まで無理だった雑穀の種などを手に入れられるのだ。
「悪くはない。悪くはな。だが、それでもレオニードの土地に比べて劣るのでは? 奴だけに利益を渡すのものう」
「倉庫や宿場でも併設しますか? 向こうは近い分だけ意味が無いですよ」
「考えておこう。まあ、全ては陛下の許可が下りてからじゃな」
最後までゴネるのだが、段々老人の我儘に見えて来た。
どうしてうちの派閥に入らないのだと、ヨセフ伯が文句をつけたのと似たような感じでは無いだろうか? そもそも同じような場所にいるのだし、俺が彼の派閥に参加して居たら、何もしなくても利益も名声も入っていたわけだしな。だから代わりにアイデアと利益を齎せと言う事なのかもしれない。
その辺りの話を察したものの、特に反論はせず代わりに俺では手に入れられない種をゲットする道を手に入れたのである。
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