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第六章
『作中情報まとめ3』
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作中内の風土記。
情報が多く成って来たので、まとめの三回目になります。
文中にある判り難い事に多少の注釈を加える形で載せただけなので、あまり読む意味はありません。
『作中の食文化に関して』
基本的な調理法や食材の調達概念などは存在する。
ただし、賢者・技術者の秘匿は普通に行われているため、国家間でその差が激しい。基本技術が最も高い東の夏王朝、それも黄(央)都や最古とされる青(東)家では様々な技術・知識で溢れて居るが、それは『みんな知っている』知識の知見が広いためである。反対に西側は大陸中央に決して劣っているわけではないが、秘匿が当然の文明なので世に見える技術は低い様に見える。
なお食事の満足度に関しては魔王軍の跳梁で大きく下降。
歴史ある夏王朝では穀倉地帯でアンデッドの災禍が起き、飢饉が続き民は飢えに喘いでいる。工業で巻き返しを図った西の王国や帝国は地毒の類を抜くために煮沸するので、食料の栄養が大きく失われている。これは地域担当の魔将が儀式魔法や魔物の種類を工夫し、夏王朝の穀倉地帯を巡って戦いが何度も起きている事を利用しているとか、西は西で鉱山から出る毒を水源に誘導しているなどの為である。
こういった経緯から、食材の改良や肥育に関しては後回しにされている場合が多い。王都はともかく地方領主は育て易い豚の他、自ら狩った獣や地鳥をその地方で獲れる香草なり香辛料もどきで味付けして食べる程度が普通である。蒸し料理は薪が惜しいとか、地方によっては塩は貴重なのでケチるという事が頻繁に行われ、塩釜蒸しや練り物などはむしろ忘れられているレベルかもしれない。
『呪文構文』
この世界の魔法は詠唱、または刻印で使用する。
言葉による詠唱はその都度に変更可能だが、ファジーな分だけ強度が低い。特殊な物に刻むないし特殊な染料で書き込む刻印は時間と労力を擁するが、その分だけ正確で強度の高い呪文を使用可能である。これは意味のある文言の他は、かなりの部分が補助用の表現で、行っている労力=浪費になっている部分が存在するためである。極論を言えば最重要な部分のみを詠唱し、あるいは刻んで最低限の効果で発揮することは可能である。
こういった経緯から、最低限の文章を述べる簡易詠唱と、複雑な文章なり紋様を用いる儀式魔法陣に昨今の研究トレンドは移行している。前者は『3の1の1。FA』で10mほど飛ぶ火の矢が発動し、後者は最初から強化用の補助呪文や、結果から派生する次の内容に移行する為の文言を練り込み、そこから第三・第四の呪文に繋がるような長大な文章ないし壮大な絵と化しているとか。なお、この火の矢の構文を『4の1の1。WA』にすると風の矢に代わり、『3の1の3。FB』と変更すると5mほど炸裂する火球の呪文に成る。これは最初の数字が属性で真ん中の数字が形態で付け足すのが強化である為。『火よ飛べ炎の矢』というような言葉でも発動する。
・補助呪文による強化
上記の研究で判明した強化用の補助。
射程を延ばしたり時間を延長したりもちろん威力も強化できる。最重要なのは『一段階拡張ごとに、同じ意味を有する、別のルール』を付け加える事。前述の火の矢であれば、数字の詠唱と文章での詠唱を同時に行うとか、同じ意味になる動作を用いるなど、様々な方法で行う。リズム感に優れた者は歌を謡うように、方向感覚に優れた者は包囲を用いるなど、自分が得意な分野(または正確に導入できる内容)を用いるのが普通である。当たり前ながら刻印の方が最初の努力で楽に行えるため、導師(5レベル以上)ともなれば自分専用の魔法陣を用意している事が多い。ただし、刻印は前述の取り準備が全てなので、新しい研究であったり共同研究になると、全てを1から研究する必要が出て来るので注意が必要である。逆説的に強化ではなく省略に舵を切り、言葉や文言を全て他のナニカに置き換えると、全く詠唱しなくとも動作などで呪文が放てる(いわゆる九字印)。
例として、夏王朝では色彩・数字・方位などを基本形として導入している。これは中央の大王家である黄家と、東西南北の小王である青・白・赤・黒の四家が存在している事で、イメージとして判り易い事もあげられるだろう。これに四季や四大を合わせ、基本形とすることで研究自体が簡略化されているという。もちろん、判り易く組んでいる為、他国の者でも専門家なら魔法陣を読み解いて偽物を作ったり、研究を盗むこともやり易いとも言われる(対抗で嘘を混ぜるのも普通)。ここから門派ごとにリズムや絵を使い、あるいは独自のナニカ(香りや踊りなど)を組み合わせて使うという。
『ゴーレムに関する四大魔力の細分化』
付与門派のマイナージャンルなので、研究はさほど進んでいない。どれだけマイナーかと言うと、各属性ごとの瞬間強化は肉体強化なり付与強化と比べたら、比較的に早く割り出すことが出来ると思われる。しかし、ゴーレムのパンチを強化するとかその足を速くする、防御力を上げる……ただそれだけのために時間を費やす者が居ない。現場の第一人者である主人公たちは強いゴーレムを作っているし、その師に当たる人々はより高度な(知性とか特殊能力とか)ゴーレムを付与するために研究している。もちろん主人公たちの後に続こうとする者が少ないのも致命的である。主人公がケンタウルス型ゴーレムを作り、そのライバルが重装甲型と判り易い形で争い続けた為、オロシャを中心に末端のゴーレム魔術が増えてから研究が固まって行くだろう。
・質の向上
付与魔術の中に存在はしているが、その意味合いは失われている呪文。マジックアイテムを作る時は全文を丸コピーした高度な物か、最低限の内容のアイテムを作るだけなので、いちいちその都度に唱えられない為である。ゴーレム創造魔法でも同様なのだが、特化型ゴーレムを作る際にピックアップされた。そしてその事で、質の向上とは『イメージする象徴的内容』であり、複数組み合わせても良いが、機能するのは露出している部分だけであることが判明している。もちろん、単純なゴーレムを作る場合、この項目を削る事でもっと簡単に建造できるようになるだろう(水車ゴーレムなど戦わない作業ゴーレムとして)。どちらかと言えば、強化呪文の研究と合わせて全てが解明される過程と言える。
『ペレストロイカ』
オロシャにおける国家再開発計画。
大元は南にあるプロシャとポーセスが国情不安を抱え、自派閥の功績喧伝の為に魔物を討伐したと評して追い出していった。その結果、南部から徐々に魔物がオロシャ国へ侵入したことに端を発する。そもそも貴族は別に領内の魔物を討伐する必要も、それを報告をする理由も無い事から問題化してしまった。許容範囲を越えて、衆人が危険であると理解した時にはあちこちに魔物が溢れており、かつ各領主は中央集権化を嫌って王権への援軍要請など行わない情勢下のままである。そこで表向きの理由として用いられたのが、比較的に王党派の多い東部で行われた街道と農地の再開発計画である。
この計画は新街道開拓と大規模農業をゴーレムで行うというゴルビー男爵の提案で施行された。大戦の英雄でもある彼はこの件で伯爵への昇爵をほど決定付けたと言われる。彼は東部に流れる大河のバルガス河流域を含めて再開拓を行い、これによって戦争しての領土拡張よりも、開拓による領内整備の方を望む声が増えたとも言われる。大戦の影響や前述の魔物の害により、国内の疲弊が続いていたこと、その影響がこの計画で去りつつあることから声が次第に大きくなっていったという(領地を獲得しても、荒れた土地を嫌がる貴族が多かったと言える)。
『冒険者ギルドの設立』
今日では当たり前になった冒険者ギルドであるが、その大元は各地の傭兵団にある。これらは大戦時にはあちこちで戦力として期待されたり、使い捨ての駒として用いられてきた。その多くは食い詰め者の農民が多少の訓練で兵士化したものであり、徴兵した雑兵よりマシなレベルであったという。これらは戦争が無くなると帰農したり、あるいは盗賊となるのが定番であったが、ゴルビー男爵らが提唱した、情報調査や護衛に魔物退治専門の『ミニマムな傭兵集団』として出発した。後に魔物由来の素材などに価値が見出されることに成ったことで、冒険者ギルドの財源にも一定の弾みがついたという。なおこの組織を形だけ真似た西部諸国では自営の代わりに無税、教国と呼ばれる信仰系国家では完全国営と言う風に、各国ごとに大きな差がある。オロシャや当方の夏王朝では半官で補助金を出す代わりに政府の依頼は優先度が高い物に成っている。
『登場人物の追加』
ヨセフ・スティーリン・ジュガス伯
西にあるゲオルギア地方の雄であり国内でも大きな派閥の盟主。
野心を隠そうともせず、力こそが正義とばかりの言動を繰り返すマッチョな男。本人の自称は『鉄のヨセフ』でありセカンドネームもそのためのペンネームであるが、その剛腕ぶりと蓄えた髭と豊かな髪の毛から渾名は『熊公』である。なお、野心的で我儘な性格から嫌われてもいるが、力こそが全てと考えるタイプなので部下を身分で差別などしない為、それなりに慕われてはいる模様。
クレメンス・クリメント・ヴォロス。ウッラール伯(騎士団長)
東部を守るウッラール騎士団の長。
いかついモノクルの老紳士で、軍歴の為か外見に反してその言動はやや厳つい。わがままを言う国内貴族に振り回されたタイプで、付き合ううちに殴り合って押さえつける様な論調に成ったのだと思われる。
アンドリオ。ウッラール子爵(副団長)
ウッラール騎士団の副団長。
以前にも言った通り、子爵と言うのは後継者や副長など次長を示す言葉なので、彼がウッラール騎士団の次代の長である。物腰が柔らかく人の話をよく聞くことから、クレメンス団長を支える形で経験を積んでいたものと思われる。家名を名乗らbない事ととネーミングセンス的にはオロシャの形式ではない為、主人公は何かあるのかと考えていた。実際、その通りで母親は滅びたイラ・カナンから嫁入りした後妻である。ただし、彼自身はオロシャで生まれた事もあり、特に向こうの貴族としての継承権はない。兄であるアンドレアスと継承権争いを避ける為、早めに家を出て独立したようだ。
ナスターシャ
バルガス同胞団の王都での口利き役。
流域出身者で固められた傭兵団を運営する為、王都で取次ぎをやっていた。同胞団はその団結で優良な傭兵として温存されるタイプだったが、能力も信頼性も高い分だけ報酬も多額を要求しており、そのコスト的に次第に仕事が減りつつあった。ペレストロイカ計画で冒険者ギルドに関して一枚噛むと同時に、新規の開拓地を得たという。ちなみに先代バルガス伯爵の三男を婿に迎えており、その三男が現在の同胞団団長であるという。
イゴール
バルガス同胞団の王都での構成員。
上記の流れに従ってペレストレイカ計画に必要な情報を集め、同時に魔物を狩って冒険者ギルドとしての実績を稼いでいた。このままギルドが順調に発足すれば、彼が初期の冒険者パーティを率いるものとして期待されている(そして何代目かのギルドマスターも)。
ガブリール・ボーゼス
学院出の魔術師で王都魔術師団の一人。
付与魔術の使い手で、肉体系の強化呪文や錬金術なども多少ながら嗜んでいる。推測域へアタリを付けて行う大胆な研究と、自分のやりたい事への好奇心が旺盛で、なんにでもすぐ首を突っ込みたがるタイプ。そう言った経緯から共同研究やら協力の申し出などには直ぐに飛びついてくる。ただし、後述のエリーに技術をパクられた経緯から、ややトラウマになっているのか、流石に情報管理には気を付けるようになったようだ。なおガタイがでかくて筋肉質な事から、紙を刈り上げにして鎧を着たら騎士に間違われるだろう。もちろん戦闘に用いる技はないので強いわけではない。
エリー・ティーヌ
学院出の魔術師で、ゴーレム創造魔法の使い手。
既に滅びたミド・ラーンの商人の娘で魔法の才能があったことから学院で修業をしていた。彼女がゴーレム創造魔法の使い手に成ったのは、ミド・ラーンの王族出身の魔術師がおり、その人物の命令で戦力になる物を学ばされていたと言える。主人公であるミハイルたちと共に新型ゴーレムの研究をしていたが、そのデータをパクってミド・ラーンに流出した為に犯罪奴隷となった。その後は競売にかけられるはずだったが『その王族とやらが買って人材にするだけでしょう』という理屈でミハイルが購入する形で賠償権を放棄込みで資金や魔術特許を出した。その後は年季明けか魔王討伐の早い方で解放される契約に成っていたが……。今ではヨセフ伯の元でジュガス2を設計した。
『新作のゴーレム』
・広域魔物探知システム
複数のゴーレムを使った伝達システム。
最初のゴーレムが魔物が来たことを魔法知覚で確認し次第、近くにいるゴーレムに情報を送信する。それは丁字暗号通信と同じで、棒の角度を曲げる程度の暗号通信である。それをリレーしてかなり離れた位置にある詰め所や、そこから更に通信なり早馬で騎士団本部へと情報を送るシステムに成っている。機構の成立状仕方が無いが、誤情報を割り込ませることは一応可能である。
・エアハンマー
送風の呪文を封入したマジックアイテムをゴーレム化した物。
マジックアイテムの時は大丈夫だったのに、ゴーレム化すると最大出力での稼働しかしなくなった失敗作。この為、武装型ゴーレムへと仕様変更された。広範囲に風をばらまくバリアーモードと、一点集中で加速する大打撃モードがある。
・SBー8ソブレメンヌイ
ケンタウルス型のゴーレムの試作機。
名前はオロシャ語で新しい作品とか今風のとか言う意味がある言葉。様々な機構を試しているせいか、やや壊れやすい傾向にある。ウッドゴーレムながら縦4mで全長が5mくらいある為、ストーンゴーレムより強力である。その機動速度は他の追随を許さず、新街道を瞬く間に走り抜ける性能がある。アダマンティンの更新を持ってお役御免となり、ユーリ姫に譲られることに成った。その後は王都で騎乗型ゴーレムの雛形に成る予定である。
・SBー9ルサールカ
人魚型ゴーレムに成る予定の水中用試作機。
重石と浮きを利用することで潜航と浮上を行うが、その要は意外とアナクロな吸気ポンプである。現時点では吸気ポンプの構造上、どうみても首長竜に見える。一応は秘匿兵器で、戦闘よりは海上探索や船の護衛に役に立つはずである。
・ボジャノーイ
水中作業用に若干のカスタムを行われたストーンゴーレム。
・JSー2ジュガス二世
形式番号は主人公が勝手につけた物。重量級ゴーレム。
名前はヨセフ伯の家名から取られているが、虚栄心を満足させると同時に、『ジュガス子爵をお披露目します』というダミー情報で世間を欺くためだった。五つの腕を持ち腹と頭を守りながら、上段からの振り下ろしを行う対軍仕様のアイアンゴーレム。騎士隊長やエース級の騎士くらいの戦闘力だが、その仕様上、彼らまでならば有利に戦う事が出来る。堅いだけではなく、新機軸の魔石による強化システムを付けていた。ただし、現時点では欠点があるのかギリギリまで隠蔽していた模様。
作中内の風土記。
情報が多く成って来たので、まとめの三回目になります。
文中にある判り難い事に多少の注釈を加える形で載せただけなので、あまり読む意味はありません。
『作中の食文化に関して』
基本的な調理法や食材の調達概念などは存在する。
ただし、賢者・技術者の秘匿は普通に行われているため、国家間でその差が激しい。基本技術が最も高い東の夏王朝、それも黄(央)都や最古とされる青(東)家では様々な技術・知識で溢れて居るが、それは『みんな知っている』知識の知見が広いためである。反対に西側は大陸中央に決して劣っているわけではないが、秘匿が当然の文明なので世に見える技術は低い様に見える。
なお食事の満足度に関しては魔王軍の跳梁で大きく下降。
歴史ある夏王朝では穀倉地帯でアンデッドの災禍が起き、飢饉が続き民は飢えに喘いでいる。工業で巻き返しを図った西の王国や帝国は地毒の類を抜くために煮沸するので、食料の栄養が大きく失われている。これは地域担当の魔将が儀式魔法や魔物の種類を工夫し、夏王朝の穀倉地帯を巡って戦いが何度も起きている事を利用しているとか、西は西で鉱山から出る毒を水源に誘導しているなどの為である。
こういった経緯から、食材の改良や肥育に関しては後回しにされている場合が多い。王都はともかく地方領主は育て易い豚の他、自ら狩った獣や地鳥をその地方で獲れる香草なり香辛料もどきで味付けして食べる程度が普通である。蒸し料理は薪が惜しいとか、地方によっては塩は貴重なのでケチるという事が頻繁に行われ、塩釜蒸しや練り物などはむしろ忘れられているレベルかもしれない。
『呪文構文』
この世界の魔法は詠唱、または刻印で使用する。
言葉による詠唱はその都度に変更可能だが、ファジーな分だけ強度が低い。特殊な物に刻むないし特殊な染料で書き込む刻印は時間と労力を擁するが、その分だけ正確で強度の高い呪文を使用可能である。これは意味のある文言の他は、かなりの部分が補助用の表現で、行っている労力=浪費になっている部分が存在するためである。極論を言えば最重要な部分のみを詠唱し、あるいは刻んで最低限の効果で発揮することは可能である。
こういった経緯から、最低限の文章を述べる簡易詠唱と、複雑な文章なり紋様を用いる儀式魔法陣に昨今の研究トレンドは移行している。前者は『3の1の1。FA』で10mほど飛ぶ火の矢が発動し、後者は最初から強化用の補助呪文や、結果から派生する次の内容に移行する為の文言を練り込み、そこから第三・第四の呪文に繋がるような長大な文章ないし壮大な絵と化しているとか。なお、この火の矢の構文を『4の1の1。WA』にすると風の矢に代わり、『3の1の3。FB』と変更すると5mほど炸裂する火球の呪文に成る。これは最初の数字が属性で真ん中の数字が形態で付け足すのが強化である為。『火よ飛べ炎の矢』というような言葉でも発動する。
・補助呪文による強化
上記の研究で判明した強化用の補助。
射程を延ばしたり時間を延長したりもちろん威力も強化できる。最重要なのは『一段階拡張ごとに、同じ意味を有する、別のルール』を付け加える事。前述の火の矢であれば、数字の詠唱と文章での詠唱を同時に行うとか、同じ意味になる動作を用いるなど、様々な方法で行う。リズム感に優れた者は歌を謡うように、方向感覚に優れた者は包囲を用いるなど、自分が得意な分野(または正確に導入できる内容)を用いるのが普通である。当たり前ながら刻印の方が最初の努力で楽に行えるため、導師(5レベル以上)ともなれば自分専用の魔法陣を用意している事が多い。ただし、刻印は前述の取り準備が全てなので、新しい研究であったり共同研究になると、全てを1から研究する必要が出て来るので注意が必要である。逆説的に強化ではなく省略に舵を切り、言葉や文言を全て他のナニカに置き換えると、全く詠唱しなくとも動作などで呪文が放てる(いわゆる九字印)。
例として、夏王朝では色彩・数字・方位などを基本形として導入している。これは中央の大王家である黄家と、東西南北の小王である青・白・赤・黒の四家が存在している事で、イメージとして判り易い事もあげられるだろう。これに四季や四大を合わせ、基本形とすることで研究自体が簡略化されているという。もちろん、判り易く組んでいる為、他国の者でも専門家なら魔法陣を読み解いて偽物を作ったり、研究を盗むこともやり易いとも言われる(対抗で嘘を混ぜるのも普通)。ここから門派ごとにリズムや絵を使い、あるいは独自のナニカ(香りや踊りなど)を組み合わせて使うという。
『ゴーレムに関する四大魔力の細分化』
付与門派のマイナージャンルなので、研究はさほど進んでいない。どれだけマイナーかと言うと、各属性ごとの瞬間強化は肉体強化なり付与強化と比べたら、比較的に早く割り出すことが出来ると思われる。しかし、ゴーレムのパンチを強化するとかその足を速くする、防御力を上げる……ただそれだけのために時間を費やす者が居ない。現場の第一人者である主人公たちは強いゴーレムを作っているし、その師に当たる人々はより高度な(知性とか特殊能力とか)ゴーレムを付与するために研究している。もちろん主人公たちの後に続こうとする者が少ないのも致命的である。主人公がケンタウルス型ゴーレムを作り、そのライバルが重装甲型と判り易い形で争い続けた為、オロシャを中心に末端のゴーレム魔術が増えてから研究が固まって行くだろう。
・質の向上
付与魔術の中に存在はしているが、その意味合いは失われている呪文。マジックアイテムを作る時は全文を丸コピーした高度な物か、最低限の内容のアイテムを作るだけなので、いちいちその都度に唱えられない為である。ゴーレム創造魔法でも同様なのだが、特化型ゴーレムを作る際にピックアップされた。そしてその事で、質の向上とは『イメージする象徴的内容』であり、複数組み合わせても良いが、機能するのは露出している部分だけであることが判明している。もちろん、単純なゴーレムを作る場合、この項目を削る事でもっと簡単に建造できるようになるだろう(水車ゴーレムなど戦わない作業ゴーレムとして)。どちらかと言えば、強化呪文の研究と合わせて全てが解明される過程と言える。
『ペレストロイカ』
オロシャにおける国家再開発計画。
大元は南にあるプロシャとポーセスが国情不安を抱え、自派閥の功績喧伝の為に魔物を討伐したと評して追い出していった。その結果、南部から徐々に魔物がオロシャ国へ侵入したことに端を発する。そもそも貴族は別に領内の魔物を討伐する必要も、それを報告をする理由も無い事から問題化してしまった。許容範囲を越えて、衆人が危険であると理解した時にはあちこちに魔物が溢れており、かつ各領主は中央集権化を嫌って王権への援軍要請など行わない情勢下のままである。そこで表向きの理由として用いられたのが、比較的に王党派の多い東部で行われた街道と農地の再開発計画である。
この計画は新街道開拓と大規模農業をゴーレムで行うというゴルビー男爵の提案で施行された。大戦の英雄でもある彼はこの件で伯爵への昇爵をほど決定付けたと言われる。彼は東部に流れる大河のバルガス河流域を含めて再開拓を行い、これによって戦争しての領土拡張よりも、開拓による領内整備の方を望む声が増えたとも言われる。大戦の影響や前述の魔物の害により、国内の疲弊が続いていたこと、その影響がこの計画で去りつつあることから声が次第に大きくなっていったという(領地を獲得しても、荒れた土地を嫌がる貴族が多かったと言える)。
『冒険者ギルドの設立』
今日では当たり前になった冒険者ギルドであるが、その大元は各地の傭兵団にある。これらは大戦時にはあちこちで戦力として期待されたり、使い捨ての駒として用いられてきた。その多くは食い詰め者の農民が多少の訓練で兵士化したものであり、徴兵した雑兵よりマシなレベルであったという。これらは戦争が無くなると帰農したり、あるいは盗賊となるのが定番であったが、ゴルビー男爵らが提唱した、情報調査や護衛に魔物退治専門の『ミニマムな傭兵集団』として出発した。後に魔物由来の素材などに価値が見出されることに成ったことで、冒険者ギルドの財源にも一定の弾みがついたという。なおこの組織を形だけ真似た西部諸国では自営の代わりに無税、教国と呼ばれる信仰系国家では完全国営と言う風に、各国ごとに大きな差がある。オロシャや当方の夏王朝では半官で補助金を出す代わりに政府の依頼は優先度が高い物に成っている。
『登場人物の追加』
ヨセフ・スティーリン・ジュガス伯
西にあるゲオルギア地方の雄であり国内でも大きな派閥の盟主。
野心を隠そうともせず、力こそが正義とばかりの言動を繰り返すマッチョな男。本人の自称は『鉄のヨセフ』でありセカンドネームもそのためのペンネームであるが、その剛腕ぶりと蓄えた髭と豊かな髪の毛から渾名は『熊公』である。なお、野心的で我儘な性格から嫌われてもいるが、力こそが全てと考えるタイプなので部下を身分で差別などしない為、それなりに慕われてはいる模様。
クレメンス・クリメント・ヴォロス。ウッラール伯(騎士団長)
東部を守るウッラール騎士団の長。
いかついモノクルの老紳士で、軍歴の為か外見に反してその言動はやや厳つい。わがままを言う国内貴族に振り回されたタイプで、付き合ううちに殴り合って押さえつける様な論調に成ったのだと思われる。
アンドリオ。ウッラール子爵(副団長)
ウッラール騎士団の副団長。
以前にも言った通り、子爵と言うのは後継者や副長など次長を示す言葉なので、彼がウッラール騎士団の次代の長である。物腰が柔らかく人の話をよく聞くことから、クレメンス団長を支える形で経験を積んでいたものと思われる。家名を名乗らbない事ととネーミングセンス的にはオロシャの形式ではない為、主人公は何かあるのかと考えていた。実際、その通りで母親は滅びたイラ・カナンから嫁入りした後妻である。ただし、彼自身はオロシャで生まれた事もあり、特に向こうの貴族としての継承権はない。兄であるアンドレアスと継承権争いを避ける為、早めに家を出て独立したようだ。
ナスターシャ
バルガス同胞団の王都での口利き役。
流域出身者で固められた傭兵団を運営する為、王都で取次ぎをやっていた。同胞団はその団結で優良な傭兵として温存されるタイプだったが、能力も信頼性も高い分だけ報酬も多額を要求しており、そのコスト的に次第に仕事が減りつつあった。ペレストロイカ計画で冒険者ギルドに関して一枚噛むと同時に、新規の開拓地を得たという。ちなみに先代バルガス伯爵の三男を婿に迎えており、その三男が現在の同胞団団長であるという。
イゴール
バルガス同胞団の王都での構成員。
上記の流れに従ってペレストレイカ計画に必要な情報を集め、同時に魔物を狩って冒険者ギルドとしての実績を稼いでいた。このままギルドが順調に発足すれば、彼が初期の冒険者パーティを率いるものとして期待されている(そして何代目かのギルドマスターも)。
ガブリール・ボーゼス
学院出の魔術師で王都魔術師団の一人。
付与魔術の使い手で、肉体系の強化呪文や錬金術なども多少ながら嗜んでいる。推測域へアタリを付けて行う大胆な研究と、自分のやりたい事への好奇心が旺盛で、なんにでもすぐ首を突っ込みたがるタイプ。そう言った経緯から共同研究やら協力の申し出などには直ぐに飛びついてくる。ただし、後述のエリーに技術をパクられた経緯から、ややトラウマになっているのか、流石に情報管理には気を付けるようになったようだ。なおガタイがでかくて筋肉質な事から、紙を刈り上げにして鎧を着たら騎士に間違われるだろう。もちろん戦闘に用いる技はないので強いわけではない。
エリー・ティーヌ
学院出の魔術師で、ゴーレム創造魔法の使い手。
既に滅びたミド・ラーンの商人の娘で魔法の才能があったことから学院で修業をしていた。彼女がゴーレム創造魔法の使い手に成ったのは、ミド・ラーンの王族出身の魔術師がおり、その人物の命令で戦力になる物を学ばされていたと言える。主人公であるミハイルたちと共に新型ゴーレムの研究をしていたが、そのデータをパクってミド・ラーンに流出した為に犯罪奴隷となった。その後は競売にかけられるはずだったが『その王族とやらが買って人材にするだけでしょう』という理屈でミハイルが購入する形で賠償権を放棄込みで資金や魔術特許を出した。その後は年季明けか魔王討伐の早い方で解放される契約に成っていたが……。今ではヨセフ伯の元でジュガス2を設計した。
『新作のゴーレム』
・広域魔物探知システム
複数のゴーレムを使った伝達システム。
最初のゴーレムが魔物が来たことを魔法知覚で確認し次第、近くにいるゴーレムに情報を送信する。それは丁字暗号通信と同じで、棒の角度を曲げる程度の暗号通信である。それをリレーしてかなり離れた位置にある詰め所や、そこから更に通信なり早馬で騎士団本部へと情報を送るシステムに成っている。機構の成立状仕方が無いが、誤情報を割り込ませることは一応可能である。
・エアハンマー
送風の呪文を封入したマジックアイテムをゴーレム化した物。
マジックアイテムの時は大丈夫だったのに、ゴーレム化すると最大出力での稼働しかしなくなった失敗作。この為、武装型ゴーレムへと仕様変更された。広範囲に風をばらまくバリアーモードと、一点集中で加速する大打撃モードがある。
・SBー8ソブレメンヌイ
ケンタウルス型のゴーレムの試作機。
名前はオロシャ語で新しい作品とか今風のとか言う意味がある言葉。様々な機構を試しているせいか、やや壊れやすい傾向にある。ウッドゴーレムながら縦4mで全長が5mくらいある為、ストーンゴーレムより強力である。その機動速度は他の追随を許さず、新街道を瞬く間に走り抜ける性能がある。アダマンティンの更新を持ってお役御免となり、ユーリ姫に譲られることに成った。その後は王都で騎乗型ゴーレムの雛形に成る予定である。
・SBー9ルサールカ
人魚型ゴーレムに成る予定の水中用試作機。
重石と浮きを利用することで潜航と浮上を行うが、その要は意外とアナクロな吸気ポンプである。現時点では吸気ポンプの構造上、どうみても首長竜に見える。一応は秘匿兵器で、戦闘よりは海上探索や船の護衛に役に立つはずである。
・ボジャノーイ
水中作業用に若干のカスタムを行われたストーンゴーレム。
・JSー2ジュガス二世
形式番号は主人公が勝手につけた物。重量級ゴーレム。
名前はヨセフ伯の家名から取られているが、虚栄心を満足させると同時に、『ジュガス子爵をお披露目します』というダミー情報で世間を欺くためだった。五つの腕を持ち腹と頭を守りながら、上段からの振り下ろしを行う対軍仕様のアイアンゴーレム。騎士隊長やエース級の騎士くらいの戦闘力だが、その仕様上、彼らまでならば有利に戦う事が出来る。堅いだけではなく、新機軸の魔石による強化システムを付けていた。ただし、現時点では欠点があるのかギリギリまで隠蔽していた模様。
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今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
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