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第三章
『一つの決着』
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問題は何時の間にか『全て』、片付いていた。
最後に残っていたはずの遊牧民たちとの折衝が、気が付いたら盛大な結婚式に置き換わっている。
しかも俺が熱烈なプロポーズをしたことに成っており……。
オアシスを作って捧げ、将来的にもう一つプレゼントする(おそらくは生れて来る子供に)なんて、壮大な話に『成って』いた。
「随分と気前がよろしい事で」
「嫌味かニコライ? オルバの奴に嵌められたんだよ。あの野郎、最初から和平で時間稼ぎってところまでは同じ腹積もりだったんだ。より積極的に食い込むだけの話でな」
こちらは砂漠の緑化までの時間稼ぎの心算だった。
同じことを遊牧民たちも考えており、荒野と砂漠ばかりのゴルビーを狙うよりも、西を伺いながら隙あれば奪いに行く方が利益が高いのは当然だ。ゆえにオルバは大戦の英雄である俺が自分たちの領域に手を出してこないかを探り、あわよくば補給地点を作りたかったというところだろう。友好関係になってしまえば、仮に西と戦争に成って傷ついたとしても、こちらに下がって治療や補給が出来るのだから。
だからこそ、脈があると踏んでマーゴットを推して来た。
そして俺の勘違いを話を大げさにして拡大再利用したのだ。ワーム退治の為に空けた穴も、マーゴットへの贈り物ということにしてしまえば身内を黙らせられるし、こっちの民衆も腹を空かせているから持参金としての羊で事が足りてしまう(遊牧民同士だと殖やすが、難民は食って終わりだから都合が良い)。
「起きてしまった事は仕方ありません。それよりも言いたいことがあるのでは?」
「そうですな! セシリアを迎えてくださりありがとうございます。ところでアンナはあちらにというのはいかがでしょう?」
「どうせなら最後まで政治利用しろって? 良い性格してるよ」
アレクセイの目がニコライ、次いで俺に向いた。
この度、正式にセシリアを弟子であり妾として迎え入れることにした。もちろん遊牧民風に重婚可能であるとしたら、第三夫人になる正式な物にしただろう。その上で手を付けない妹のアンナに関して、遊牧民に嫁がせた羅どうだと言い始めたのだ。どうせ政治利用すると決めた娘だから、最後までしゃぶりつくそうというのだろう。
そこには彼らと友好関係を結んで商機を得たいという逞しい根性と、どうせ結婚するならその辺の若者ではなく、向こうの有力者の子弟の方が良いという上から目線の親心であると思われた。
「ありがとうございます。あちらの風習に合えば良いのですが」
「アンナは受け身だから問題はないだろ。それとあの事が覚え始めたのは比較的に覚え易い精霊魔法だが、水使いや風使いが高く評価している連中だから大切に扱われるはずだぞ。薬草や錬金術を収めてポーションを作れるようになったら猶更ありがたがられるだろう」
望まれて嫁ぐだけが幸せとは言わないが、良条件ではある。
肉体を駆使する遊牧民たちは男性社会だから、基本的には男性がリードすることが多い。その上で女性を尊重するわけだが、精霊魔法の方が楽だからソレにすると決めたアンナは、色々な意味で適性が高い。おそらく旦那の言う事をハイハイ聞いても、そこにストレスを感じず、覚えた精霊魔法も有益に使いこなして尊敬されるレベルまで行くだろう。
将来的にはこの間であった、元水の巫女の老婆がイメージに近いのではないだろうか。
「それは良い事を聞きました。贈り物には何が良いでしょうか? あちらの文化にはあまり詳しくなくて」
「精霊魔法だけでも十分だとは思うが、基本的には家畜だな。後は遊牧生活では手に入り難い鉄器の類か。それと全財産を身に着けて移動するから、意外と宝飾品も好まれるはずだな。イザと言う時の身代金にも、その場で調達できる資金代わりにもなる」
政略結婚という物にいまだ慣れないが、封建社会では仕方がない。
そもそも女性が出歩いたりせず、村と言う狭いコミュニティの中だけだったり、更に手狭な屋敷の中で過ごすことは当たり前だ。その中で数名の顔見知りの中から相手を選ぶなんて良くある話である。だから政略結婚とはいえある程度選べる状態になるというのは、まだ幸せな方なのだろう。そもそも父親のニコライが考えを変える気が無い様だしな。
ならばここでウダウダ考えるよりも、より良い条件を身につけさせ、その上でアンナの気持ち(好みともいう)を重視できるようにしてやるのが俺に出来る何よりの援助であろう。
「出来るだけあちらの生活で望まれる呪文でも覚えさせておくが……」
「網を頼んでいたと思うが、獲れる魚を数種加工して遊牧民にも売る」
「後は貝でも養殖でもするか? 貝を育てれば産物が安定するぞ」
「魚の養殖は餌の問題で難しいが、貝は生育環境を整えるだけだからな。筏を用意して置いて貝殻でも吊るして置けば良い。それで駄目でも魚の棲み家には使えるし無駄にはならんと思う。貝殻を使った装飾品……中に薬草を練ったモノを詰めておくだけでも面白いな」
どれも直ぐには無理だが、数年後に嫁入りするなら問題ない。
他にアイデアが無いわけではないが、ニコライは食料系の商人の筈なのでこの辺でまとめておく。後半は出すだけ出したアイデアだが、基本的には魚を獲って加工するだけでも良いだろう。遊牧民が食べるかどうかは別として、いつもと違う食料供給減を用意しておくことは重要だ。羊がバタバタと死んで、殖やすことを重視して食べたくても食べられないなんて事は良くあるからである。カマボコになるかフィッシュソーセージに成るかは別にして、非常食はいくつあっても良い。
これにはニコライも食いつき話が弾むことに成った。
「それは良いですな。手近なところで干し魚や塩漬けですか」
「他にも蒸して練り物にするのもアリだな。今は燃料が足りないが、アンナが火の呪文を覚えたらやり易くなる。塩の窯から余熱で試すだけなら今でも出来る筈だ。まあそれに関してはアンナの次の弟子というか、最初から火の呪文専門で職人を育てた方が楽だが。そういった品々があれば、後は向こうで好みの物を食うだろうよ」
おれたちはどちらも、遊牧民に漁村を造らせようとは言わない。
その方が楽な筈だが、そんな事をしたら重要な交易品が売れなくなってしまうからだ。もちろん彼らが遊牧を好むので、職人に育て難いというのもある。体を痛めて遊牧生活が無理な者や、家畜のアレルギーで駄目な者に関しては、こちらで引き取る方が速いからな。なにも親切に教えてあげるというのが善行ではないのだ(少なくとも押し付けたら喧嘩になる)。
ちなみに貝の養殖や装飾品に関しては、ダメもとで当ってみることに成った。少なくとも手元に存在しない産業だから、期待はしない方が良いよな。
「そういえば領主さま例の件、一応見つかりましたよ」
「例の……ああ、淡んでいた植物か。何が見つかった?」
「豆ですね。綿花は流石に手に入りませんでした。食用ですが一応、絞れば油も採れるそうですよ。味も出ないし堅いのであまりやらないそうですが、領主さまなら問題ないでしょう」
アレクセイが旅立つ時に幾つかの種を頼んでいた。
芋や豆などの雑に収穫できる食料や、売り物に成る綿花に油が採れる何らかの植物。それらの中で何が一番かと尋ねられ、油と答えたんだったかな。そういう意味では食い物としての豆であり、頑張れば油も採れるというなら十分以上だと言えるだろう。
現物を見た感じだが……。転生前に植物を育てた事なんか小学校だけなので良く知らないが、落花生を乾燥に強くした代わりに豆が一つしかない感じに思えるな。
「助かったよ。これで食料問題と肥料、それと資金の足しに成るな」
「持参金として贈られてくる家畜に関しては、基本的に少数だけ残そう」
「騎乗用の馬とミルク用の山羊。後は余裕の範囲で羊ってところか」
「うちで育てきれないなら……一部をアンドラに送って雑草でも食わせておこう。増えた肉は向こうの領民にも分けるなら、許容範囲だよな? じゃ、そんなところで」
俺はアレクセイに礼を言いつつ今後の計画を練ることにした。
もはやこの状態でマーゴットの嫁入りは避けられないし、ここで嫌だと言ったら険悪になる未来しか見えない。それに新しい嫁はもう要らないと周知できたと考えれば、悪い結果ではない。
ただ、これまでの流されて居る状況と同じでは業腹なので考え方を変えることにする。
「水の利用は避けられん。だが、ここで日除けと風除けを認めさせたことは大きい。それとゴルベリアスの近くにワームが棲んで居なかったこともな」
「西と合わせて防御陣地にするんですね。悪くありません」
掘り起こした地下水道はそのままため池にする。
日陰側をなだらかに掘り下げて、土は日が照る方向に積んでおく。煉瓦に余裕が出来たらそれも積むとして、太陽と風を遮る壁だと言いつつ『タメ池』込みで防御を行う場所にするわけだ。同じ戦う場合でも、こちらは壁越しに射撃を前提に出来るからな。もちろん遊牧民相手だと騎兵が回り込んで来るが、その対策はこちらが村でも作って置けば柵くらいは用意して置けるだろう。
既に煉瓦を積んで壁を作っている西側も合わせれば、かなり守り易い地形になるはずだ。
「何だったらもう一か所くらい同じ場所を作り、集団で耕す畑を日陰側に延ばしていくぞ。俺たちは前言を守っているだけだし、要塞化しなければ不審に思う事はあっても抗議はしてこないだろう」
「やはり相手が利用する可能性はありますけれどね」
豆や魚の加工と合わせて、食糧問題は解決できる。
荒野と砂漠ばかりの地方にこれ以上難民がなだれ込んだりする可能性は低い。後は『気が付いたら遊牧民に占拠されていた』なんて状況を避けつつ、領地を少しずつ富ませて行く感じだな。
「このままいけば時間経過は俺達の味方の筈だ」
「万が一に備えて新ゴーレムの研究くらいはするが、人材やら産業を優先する」
「海は筏と桟橋で漁業を整備し、砂糖なり香辛料が手に入る程度の交易を目指す」
「人材は最優先だが現実的路線で行く。弟子にはやるなと言ったが、精霊魔術で火使いや水使いの初歩で良いだろう。配下に組み入れた勇者軍出身者や難民たちの中で、適性がありそうな奴を促成栽培で育てておこう。もちろん、兵士や文官としての採用が基本に成るけどな」
アンナは手放すし、セシリアも学院に行く可能性が高い。
それを考えたら鍋を温め、水を移動させる程度の初歩の呪文までだと覚悟するべきだろう。あるいはゴーレムを修理するだけなら出来る、ゴーレム魔術を分岐させ、それを誰かに習得させても良い。もはや専門の魔術師を養育するというよりは、魔術を使える職人を数人育てる感じになるな。この際、贅沢は言って居られないだろう。
ただ、寒い地方で領主が火使いを暖房用に確保できている程度には、ちょっとした呪文の使い手と言うのは育てられるものだ。今後に十年・二十年単位で考えれば、そう難しくはないだろう(その単位で考えると、余計に姉妹は出ていく可能性が高いのだが)。
「交易や探索に関しては手配だけなら出来るでしょう。実際に来てくれるかは予算次第です。人材を育てるのは……そうですね。私塾で読み書きや簡単な計算を教えるのが先ですね。呪文に関してはお任せします」
「やっぱりそうなるよな。金の余裕が出来たらだな。後は何かあったっけ」
そんな感じで相談を終えるとひとまずやる事が無い。
セシリアは呪文を一生懸命覚えている所だし、エロイ事の為に呼び出すにはタイミングが悪過ぎる。手は既に出しているので無理に続けるよりも、お互いに気分が乗った時にまたやるのも良いだろう。授業の延長上でセシリアが尊敬してくれてるようなときとか、何かおねだりで聞いてみたいことが在ったらピロートークで答えるとかそう言う感じだな。
ということは、俺がすべき事は一つな訳だ。
「特にありませんね。いえ、判っているとは思いますが花嫁のご機嫌を取ってきてください。いま彼らと戦う訳にはいかないのですから」
「へいへい。判ってるよ」
と言う訳で俺はマーゴットの所に向かった。
別に式までは逢ってはいけないとか言う決まりはない。というか、遊牧民である彼らは『一定の期間を互いに知りあう準備段階』として設けている。日本の平安で言うと三日三晩通った後で餅を食べてお披露目するような感じだな。ワームとの戦闘も『俺の武勇や指揮能力を示す』という一環と見なされてるわけだ。
「婿殿……何か用か? いや、用が無ければ逢ってはならぬという訳ではないが……忙しいのだろう? まだ明るいから……そういう気分でもないだろうし」
「せっかくだから二人で遠乗りに行こうと思ってな。ワームを倒した場所を見に行こう。どうだ?」
「判った。直ぐに支度をする」
あれからマーゴットは妙にしおらしくなった。
女は男に傅く物……なんて古臭い慣習もあるのだろう。だが、彼女の理想像とかけ離れた俺の情報を聞いて、ちょっと腹を立てていた部分のカドが取れたという所か。まさに『お互いを知る』ことで、俺の事を悪くないと思い直したのだろう。あるいは最初に聞いた話が級で、素直になれなかっただけかもしれない。
こういうところは可愛いな、と思う。ずっとこうしてくれるとありがたいと思いつつ、元気に噛みついて来た時も、それはそれで可愛かったというか……まあ、あれだ。ギャップ萌えとか、格差があると可愛く感じるというやつかな?
「侍女には伝えた。私には護衛は不要だ。いつもで行けるぞ」
「そうか。じゃあちょっと失礼するぜ」
謝るのはマーゴットというよりは、周囲の人間とお馬さんである。
二人乗りで遠出して、一路、あの時の戦場へ。特に何か話すで無く、俺の背中にマーゴットがしがみ付いている感じだ。彼女の方が馬術は得意なのだろうが、様式美と言う感じだな。
それほど遠くない事もあり、やがて掘り下げられた地下水路に辿り着く。時間の問題でゴーレムたちは街に戻っているが、作業の大半は終えていた。
「凄い……私も見た時はまだ穴だったのに……」
「戦闘用以外に、作業しか出来ないゴーレムも使ったからな。後は綺麗な石を割れば、ちょうど良い階段も作れると思うぜ」
そこには片面がスロープ状になった傾斜が存在した。
ただの穴を斜めに削り、なだらかに滑らかに加工したんだ。最初はワームの死体を引き揚げる為だったが、途中からは水を汲み易くする為に掘り下げた形になる。
俺達は兵士が建てた棒へ馬を繋ぎ、地下水路の一番下に降りてみる。
「これからこの近くには畑が出来る。これから平和に成れば同じような場所を二つでも三つでも作れるだろう。その内の一つをマーゴットとその子供にやることになるな」
「……そうか。一族の者がたくさん利用するだろう。ありがたい」
プレゼントの約束だが、どちらかといえば一族の問題だ。
マーゴットも顔を赤らめはするが、当然の贈り物として考えている。持参金として持ち込んだ家畜のお返しの様なものだ。これからこの地方を経由する旅があれば、格段に楽になるし、ゴルビーが発展すればバザールで商売をする為にやってくるようになるだろう。
ただ、そんな事を話すためにやって来たわけじゃない。
「別に秘密って訳じゃないが、俺は遠くから来たんだ。魔法がまるで発展してなくて、技術が高い。夏王朝をもっと極端にしたような場所だな」
「……遠いのだな。海の向こうの、そのまた向こう?」
「そんなところだ」
お互いの事を知りあう期間なので、そうしておこう。
だから俺は地球出身とは言わないが、改めてプロフィールである来訪者としての事を語る。だから色んなことを知っているし、年齢割りに魔力が低いとか、ゴーレムなんてマイナーな呪文を研究しているのはその為だとか言う情報を話す。代わりにマーゴット自身の話を聞いたりしながら。
その中に、彼女が持つ『楯の乙女』としての能力もあった。
「私は鎧が身に付けられない代わりに、動きが人より素早く、ちょっとした事なら傷がつかないんだ。どっちか片方だけなら英雄に成れたとも言われたが……鎧を着た方が強かったんじゃないかと思わなくもない」
「なんだよソレ。教えた奴は言い方が悪いな。そういう時は『君だけの戦い方を身に付ければ何時だって英雄に成れる』と言うんだ。俺自身、魔王を倒せと呼ばれたが別に強くはなかった。だから勇者軍を組織したんだ」
愚痴っぽく語るのは、本人が弱さも曝け出そうとしているのだろう。
後から言われるとグサっと苦し……思うんだが、教えた奴はマーゴットの鼻っ柱をへし折って、素直になる様に教育しただけのような気もする。実際、楯の乙女の先輩が導いたんだろうしな。我が強いだけじゃいけない時がある。
だが、せっかくなので、今は利用させてもらおう。
「私が英雄に? なれたかな……」
「これからでも成れるさ。戦争以外でもその能力は有用だ。伝令や探索、あるいは危ない場所に踏み入る時。沢山の虫に囲まれたりするなら、君は一人で勝てる。まあ、俺がそんな不利な状況にはさせないけどな。それと、もう一つ忘れてることがある」
「?」
慰めではなく、能力傾向として評価しておこう。
素早さ全体が高く、オートの防御力があるとか日常生活では結構便利だ。今だって肌が日に焼けてないしな。おそらく弓矢で狙撃したくらいでは死なないだろうし、毒を噴霧しても効かない筈だ。為政者としてはかなり有用な加護であるような気がする。王様だったら欲しい能力の一つだろう。
それはそれとして、盾の乙女の欠点を忘れているような気がするな。
「もし代償として触れただけで相手が砕けるとかだと困るぞ? 特に俺がな」
「それはそうだけれど……その時は英雄として一生を過ごすだろう」
「そうか? マーゴットは可愛いからもったいないぞ」
「なっ!? 不謹慎な……いや、夫婦なら良いのか?」
なんて会話を続けて親密になっておくことにした。
あまり長居しても仕方がないし、ここで一戦おっぱじめるのも違う気がする。俺はロマンチストなので、このシチュエーションでするべきことをしよう。
足元に流れる水脈に両掌を漬け、水を掬い取った。
「この地の住人になる君に祝福を」
「はい……末永くよろしくお願いします」
掬い取った水をマーゴットの額に掛け流す。
よくある祝福の儀式のソレだが、攻撃とはみなされてないので特には弾かない。もし弾くならば、直接触れて香油の様に濡らすつもりだったけどな。
そして彼女の唇にキスをして、この日のデートを終えたのである。やがて結婚式当日に成り、ケーキなどはないが、盛大な披露宴になるだろう。
問題は何時の間にか『全て』、片付いていた。
最後に残っていたはずの遊牧民たちとの折衝が、気が付いたら盛大な結婚式に置き換わっている。
しかも俺が熱烈なプロポーズをしたことに成っており……。
オアシスを作って捧げ、将来的にもう一つプレゼントする(おそらくは生れて来る子供に)なんて、壮大な話に『成って』いた。
「随分と気前がよろしい事で」
「嫌味かニコライ? オルバの奴に嵌められたんだよ。あの野郎、最初から和平で時間稼ぎってところまでは同じ腹積もりだったんだ。より積極的に食い込むだけの話でな」
こちらは砂漠の緑化までの時間稼ぎの心算だった。
同じことを遊牧民たちも考えており、荒野と砂漠ばかりのゴルビーを狙うよりも、西を伺いながら隙あれば奪いに行く方が利益が高いのは当然だ。ゆえにオルバは大戦の英雄である俺が自分たちの領域に手を出してこないかを探り、あわよくば補給地点を作りたかったというところだろう。友好関係になってしまえば、仮に西と戦争に成って傷ついたとしても、こちらに下がって治療や補給が出来るのだから。
だからこそ、脈があると踏んでマーゴットを推して来た。
そして俺の勘違いを話を大げさにして拡大再利用したのだ。ワーム退治の為に空けた穴も、マーゴットへの贈り物ということにしてしまえば身内を黙らせられるし、こっちの民衆も腹を空かせているから持参金としての羊で事が足りてしまう(遊牧民同士だと殖やすが、難民は食って終わりだから都合が良い)。
「起きてしまった事は仕方ありません。それよりも言いたいことがあるのでは?」
「そうですな! セシリアを迎えてくださりありがとうございます。ところでアンナはあちらにというのはいかがでしょう?」
「どうせなら最後まで政治利用しろって? 良い性格してるよ」
アレクセイの目がニコライ、次いで俺に向いた。
この度、正式にセシリアを弟子であり妾として迎え入れることにした。もちろん遊牧民風に重婚可能であるとしたら、第三夫人になる正式な物にしただろう。その上で手を付けない妹のアンナに関して、遊牧民に嫁がせた羅どうだと言い始めたのだ。どうせ政治利用すると決めた娘だから、最後までしゃぶりつくそうというのだろう。
そこには彼らと友好関係を結んで商機を得たいという逞しい根性と、どうせ結婚するならその辺の若者ではなく、向こうの有力者の子弟の方が良いという上から目線の親心であると思われた。
「ありがとうございます。あちらの風習に合えば良いのですが」
「アンナは受け身だから問題はないだろ。それとあの事が覚え始めたのは比較的に覚え易い精霊魔法だが、水使いや風使いが高く評価している連中だから大切に扱われるはずだぞ。薬草や錬金術を収めてポーションを作れるようになったら猶更ありがたがられるだろう」
望まれて嫁ぐだけが幸せとは言わないが、良条件ではある。
肉体を駆使する遊牧民たちは男性社会だから、基本的には男性がリードすることが多い。その上で女性を尊重するわけだが、精霊魔法の方が楽だからソレにすると決めたアンナは、色々な意味で適性が高い。おそらく旦那の言う事をハイハイ聞いても、そこにストレスを感じず、覚えた精霊魔法も有益に使いこなして尊敬されるレベルまで行くだろう。
将来的にはこの間であった、元水の巫女の老婆がイメージに近いのではないだろうか。
「それは良い事を聞きました。贈り物には何が良いでしょうか? あちらの文化にはあまり詳しくなくて」
「精霊魔法だけでも十分だとは思うが、基本的には家畜だな。後は遊牧生活では手に入り難い鉄器の類か。それと全財産を身に着けて移動するから、意外と宝飾品も好まれるはずだな。イザと言う時の身代金にも、その場で調達できる資金代わりにもなる」
政略結婚という物にいまだ慣れないが、封建社会では仕方がない。
そもそも女性が出歩いたりせず、村と言う狭いコミュニティの中だけだったり、更に手狭な屋敷の中で過ごすことは当たり前だ。その中で数名の顔見知りの中から相手を選ぶなんて良くある話である。だから政略結婚とはいえある程度選べる状態になるというのは、まだ幸せな方なのだろう。そもそも父親のニコライが考えを変える気が無い様だしな。
ならばここでウダウダ考えるよりも、より良い条件を身につけさせ、その上でアンナの気持ち(好みともいう)を重視できるようにしてやるのが俺に出来る何よりの援助であろう。
「出来るだけあちらの生活で望まれる呪文でも覚えさせておくが……」
「網を頼んでいたと思うが、獲れる魚を数種加工して遊牧民にも売る」
「後は貝でも養殖でもするか? 貝を育てれば産物が安定するぞ」
「魚の養殖は餌の問題で難しいが、貝は生育環境を整えるだけだからな。筏を用意して置いて貝殻でも吊るして置けば良い。それで駄目でも魚の棲み家には使えるし無駄にはならんと思う。貝殻を使った装飾品……中に薬草を練ったモノを詰めておくだけでも面白いな」
どれも直ぐには無理だが、数年後に嫁入りするなら問題ない。
他にアイデアが無いわけではないが、ニコライは食料系の商人の筈なのでこの辺でまとめておく。後半は出すだけ出したアイデアだが、基本的には魚を獲って加工するだけでも良いだろう。遊牧民が食べるかどうかは別として、いつもと違う食料供給減を用意しておくことは重要だ。羊がバタバタと死んで、殖やすことを重視して食べたくても食べられないなんて事は良くあるからである。カマボコになるかフィッシュソーセージに成るかは別にして、非常食はいくつあっても良い。
これにはニコライも食いつき話が弾むことに成った。
「それは良いですな。手近なところで干し魚や塩漬けですか」
「他にも蒸して練り物にするのもアリだな。今は燃料が足りないが、アンナが火の呪文を覚えたらやり易くなる。塩の窯から余熱で試すだけなら今でも出来る筈だ。まあそれに関してはアンナの次の弟子というか、最初から火の呪文専門で職人を育てた方が楽だが。そういった品々があれば、後は向こうで好みの物を食うだろうよ」
おれたちはどちらも、遊牧民に漁村を造らせようとは言わない。
その方が楽な筈だが、そんな事をしたら重要な交易品が売れなくなってしまうからだ。もちろん彼らが遊牧を好むので、職人に育て難いというのもある。体を痛めて遊牧生活が無理な者や、家畜のアレルギーで駄目な者に関しては、こちらで引き取る方が速いからな。なにも親切に教えてあげるというのが善行ではないのだ(少なくとも押し付けたら喧嘩になる)。
ちなみに貝の養殖や装飾品に関しては、ダメもとで当ってみることに成った。少なくとも手元に存在しない産業だから、期待はしない方が良いよな。
「そういえば領主さま例の件、一応見つかりましたよ」
「例の……ああ、淡んでいた植物か。何が見つかった?」
「豆ですね。綿花は流石に手に入りませんでした。食用ですが一応、絞れば油も採れるそうですよ。味も出ないし堅いのであまりやらないそうですが、領主さまなら問題ないでしょう」
アレクセイが旅立つ時に幾つかの種を頼んでいた。
芋や豆などの雑に収穫できる食料や、売り物に成る綿花に油が採れる何らかの植物。それらの中で何が一番かと尋ねられ、油と答えたんだったかな。そういう意味では食い物としての豆であり、頑張れば油も採れるというなら十分以上だと言えるだろう。
現物を見た感じだが……。転生前に植物を育てた事なんか小学校だけなので良く知らないが、落花生を乾燥に強くした代わりに豆が一つしかない感じに思えるな。
「助かったよ。これで食料問題と肥料、それと資金の足しに成るな」
「持参金として贈られてくる家畜に関しては、基本的に少数だけ残そう」
「騎乗用の馬とミルク用の山羊。後は余裕の範囲で羊ってところか」
「うちで育てきれないなら……一部をアンドラに送って雑草でも食わせておこう。増えた肉は向こうの領民にも分けるなら、許容範囲だよな? じゃ、そんなところで」
俺はアレクセイに礼を言いつつ今後の計画を練ることにした。
もはやこの状態でマーゴットの嫁入りは避けられないし、ここで嫌だと言ったら険悪になる未来しか見えない。それに新しい嫁はもう要らないと周知できたと考えれば、悪い結果ではない。
ただ、これまでの流されて居る状況と同じでは業腹なので考え方を変えることにする。
「水の利用は避けられん。だが、ここで日除けと風除けを認めさせたことは大きい。それとゴルベリアスの近くにワームが棲んで居なかったこともな」
「西と合わせて防御陣地にするんですね。悪くありません」
掘り起こした地下水道はそのままため池にする。
日陰側をなだらかに掘り下げて、土は日が照る方向に積んでおく。煉瓦に余裕が出来たらそれも積むとして、太陽と風を遮る壁だと言いつつ『タメ池』込みで防御を行う場所にするわけだ。同じ戦う場合でも、こちらは壁越しに射撃を前提に出来るからな。もちろん遊牧民相手だと騎兵が回り込んで来るが、その対策はこちらが村でも作って置けば柵くらいは用意して置けるだろう。
既に煉瓦を積んで壁を作っている西側も合わせれば、かなり守り易い地形になるはずだ。
「何だったらもう一か所くらい同じ場所を作り、集団で耕す畑を日陰側に延ばしていくぞ。俺たちは前言を守っているだけだし、要塞化しなければ不審に思う事はあっても抗議はしてこないだろう」
「やはり相手が利用する可能性はありますけれどね」
豆や魚の加工と合わせて、食糧問題は解決できる。
荒野と砂漠ばかりの地方にこれ以上難民がなだれ込んだりする可能性は低い。後は『気が付いたら遊牧民に占拠されていた』なんて状況を避けつつ、領地を少しずつ富ませて行く感じだな。
「このままいけば時間経過は俺達の味方の筈だ」
「万が一に備えて新ゴーレムの研究くらいはするが、人材やら産業を優先する」
「海は筏と桟橋で漁業を整備し、砂糖なり香辛料が手に入る程度の交易を目指す」
「人材は最優先だが現実的路線で行く。弟子にはやるなと言ったが、精霊魔術で火使いや水使いの初歩で良いだろう。配下に組み入れた勇者軍出身者や難民たちの中で、適性がありそうな奴を促成栽培で育てておこう。もちろん、兵士や文官としての採用が基本に成るけどな」
アンナは手放すし、セシリアも学院に行く可能性が高い。
それを考えたら鍋を温め、水を移動させる程度の初歩の呪文までだと覚悟するべきだろう。あるいはゴーレムを修理するだけなら出来る、ゴーレム魔術を分岐させ、それを誰かに習得させても良い。もはや専門の魔術師を養育するというよりは、魔術を使える職人を数人育てる感じになるな。この際、贅沢は言って居られないだろう。
ただ、寒い地方で領主が火使いを暖房用に確保できている程度には、ちょっとした呪文の使い手と言うのは育てられるものだ。今後に十年・二十年単位で考えれば、そう難しくはないだろう(その単位で考えると、余計に姉妹は出ていく可能性が高いのだが)。
「交易や探索に関しては手配だけなら出来るでしょう。実際に来てくれるかは予算次第です。人材を育てるのは……そうですね。私塾で読み書きや簡単な計算を教えるのが先ですね。呪文に関してはお任せします」
「やっぱりそうなるよな。金の余裕が出来たらだな。後は何かあったっけ」
そんな感じで相談を終えるとひとまずやる事が無い。
セシリアは呪文を一生懸命覚えている所だし、エロイ事の為に呼び出すにはタイミングが悪過ぎる。手は既に出しているので無理に続けるよりも、お互いに気分が乗った時にまたやるのも良いだろう。授業の延長上でセシリアが尊敬してくれてるようなときとか、何かおねだりで聞いてみたいことが在ったらピロートークで答えるとかそう言う感じだな。
ということは、俺がすべき事は一つな訳だ。
「特にありませんね。いえ、判っているとは思いますが花嫁のご機嫌を取ってきてください。いま彼らと戦う訳にはいかないのですから」
「へいへい。判ってるよ」
と言う訳で俺はマーゴットの所に向かった。
別に式までは逢ってはいけないとか言う決まりはない。というか、遊牧民である彼らは『一定の期間を互いに知りあう準備段階』として設けている。日本の平安で言うと三日三晩通った後で餅を食べてお披露目するような感じだな。ワームとの戦闘も『俺の武勇や指揮能力を示す』という一環と見なされてるわけだ。
「婿殿……何か用か? いや、用が無ければ逢ってはならぬという訳ではないが……忙しいのだろう? まだ明るいから……そういう気分でもないだろうし」
「せっかくだから二人で遠乗りに行こうと思ってな。ワームを倒した場所を見に行こう。どうだ?」
「判った。直ぐに支度をする」
あれからマーゴットは妙にしおらしくなった。
女は男に傅く物……なんて古臭い慣習もあるのだろう。だが、彼女の理想像とかけ離れた俺の情報を聞いて、ちょっと腹を立てていた部分のカドが取れたという所か。まさに『お互いを知る』ことで、俺の事を悪くないと思い直したのだろう。あるいは最初に聞いた話が級で、素直になれなかっただけかもしれない。
こういうところは可愛いな、と思う。ずっとこうしてくれるとありがたいと思いつつ、元気に噛みついて来た時も、それはそれで可愛かったというか……まあ、あれだ。ギャップ萌えとか、格差があると可愛く感じるというやつかな?
「侍女には伝えた。私には護衛は不要だ。いつもで行けるぞ」
「そうか。じゃあちょっと失礼するぜ」
謝るのはマーゴットというよりは、周囲の人間とお馬さんである。
二人乗りで遠出して、一路、あの時の戦場へ。特に何か話すで無く、俺の背中にマーゴットがしがみ付いている感じだ。彼女の方が馬術は得意なのだろうが、様式美と言う感じだな。
それほど遠くない事もあり、やがて掘り下げられた地下水路に辿り着く。時間の問題でゴーレムたちは街に戻っているが、作業の大半は終えていた。
「凄い……私も見た時はまだ穴だったのに……」
「戦闘用以外に、作業しか出来ないゴーレムも使ったからな。後は綺麗な石を割れば、ちょうど良い階段も作れると思うぜ」
そこには片面がスロープ状になった傾斜が存在した。
ただの穴を斜めに削り、なだらかに滑らかに加工したんだ。最初はワームの死体を引き揚げる為だったが、途中からは水を汲み易くする為に掘り下げた形になる。
俺達は兵士が建てた棒へ馬を繋ぎ、地下水路の一番下に降りてみる。
「これからこの近くには畑が出来る。これから平和に成れば同じような場所を二つでも三つでも作れるだろう。その内の一つをマーゴットとその子供にやることになるな」
「……そうか。一族の者がたくさん利用するだろう。ありがたい」
プレゼントの約束だが、どちらかといえば一族の問題だ。
マーゴットも顔を赤らめはするが、当然の贈り物として考えている。持参金として持ち込んだ家畜のお返しの様なものだ。これからこの地方を経由する旅があれば、格段に楽になるし、ゴルビーが発展すればバザールで商売をする為にやってくるようになるだろう。
ただ、そんな事を話すためにやって来たわけじゃない。
「別に秘密って訳じゃないが、俺は遠くから来たんだ。魔法がまるで発展してなくて、技術が高い。夏王朝をもっと極端にしたような場所だな」
「……遠いのだな。海の向こうの、そのまた向こう?」
「そんなところだ」
お互いの事を知りあう期間なので、そうしておこう。
だから俺は地球出身とは言わないが、改めてプロフィールである来訪者としての事を語る。だから色んなことを知っているし、年齢割りに魔力が低いとか、ゴーレムなんてマイナーな呪文を研究しているのはその為だとか言う情報を話す。代わりにマーゴット自身の話を聞いたりしながら。
その中に、彼女が持つ『楯の乙女』としての能力もあった。
「私は鎧が身に付けられない代わりに、動きが人より素早く、ちょっとした事なら傷がつかないんだ。どっちか片方だけなら英雄に成れたとも言われたが……鎧を着た方が強かったんじゃないかと思わなくもない」
「なんだよソレ。教えた奴は言い方が悪いな。そういう時は『君だけの戦い方を身に付ければ何時だって英雄に成れる』と言うんだ。俺自身、魔王を倒せと呼ばれたが別に強くはなかった。だから勇者軍を組織したんだ」
愚痴っぽく語るのは、本人が弱さも曝け出そうとしているのだろう。
後から言われるとグサっと苦し……思うんだが、教えた奴はマーゴットの鼻っ柱をへし折って、素直になる様に教育しただけのような気もする。実際、楯の乙女の先輩が導いたんだろうしな。我が強いだけじゃいけない時がある。
だが、せっかくなので、今は利用させてもらおう。
「私が英雄に? なれたかな……」
「これからでも成れるさ。戦争以外でもその能力は有用だ。伝令や探索、あるいは危ない場所に踏み入る時。沢山の虫に囲まれたりするなら、君は一人で勝てる。まあ、俺がそんな不利な状況にはさせないけどな。それと、もう一つ忘れてることがある」
「?」
慰めではなく、能力傾向として評価しておこう。
素早さ全体が高く、オートの防御力があるとか日常生活では結構便利だ。今だって肌が日に焼けてないしな。おそらく弓矢で狙撃したくらいでは死なないだろうし、毒を噴霧しても効かない筈だ。為政者としてはかなり有用な加護であるような気がする。王様だったら欲しい能力の一つだろう。
それはそれとして、盾の乙女の欠点を忘れているような気がするな。
「もし代償として触れただけで相手が砕けるとかだと困るぞ? 特に俺がな」
「それはそうだけれど……その時は英雄として一生を過ごすだろう」
「そうか? マーゴットは可愛いからもったいないぞ」
「なっ!? 不謹慎な……いや、夫婦なら良いのか?」
なんて会話を続けて親密になっておくことにした。
あまり長居しても仕方がないし、ここで一戦おっぱじめるのも違う気がする。俺はロマンチストなので、このシチュエーションでするべきことをしよう。
足元に流れる水脈に両掌を漬け、水を掬い取った。
「この地の住人になる君に祝福を」
「はい……末永くよろしくお願いします」
掬い取った水をマーゴットの額に掛け流す。
よくある祝福の儀式のソレだが、攻撃とはみなされてないので特には弾かない。もし弾くならば、直接触れて香油の様に濡らすつもりだったけどな。
そして彼女の唇にキスをして、この日のデートを終えたのである。やがて結婚式当日に成り、ケーキなどはないが、盛大な披露宴になるだろう。
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