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第三章
『最後の選択』
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着々と既成事実を積み上げられて行く中、魔物討伐会議を始めた。
そこには戻って来たウラジミール他、我が領の兵士たちだけではなく、遊牧民の戦士も混じっている。
それはこれから倒すべき魔物が彼らにも大きな影響を与える存在だからだ。
「説明を始めるが集めた情報の内容、相手の正体と場所の特定、その対処法の三段階に成る。思う所は在れど、最後まで聞いてくれ」
「おおっ」
「ふんっ」
俺が口火を切ると部下は賞賛の声を、マーゴットは鼻を鳴らした。
何というか我儘姫対策の予習をしている気分になるが、ひとまず置いておこう。もしかしたらユーリ姫は素直かもしれないし、マーゴットももしかしたら素直に成れないだけかもしれない。
それはそれとして、彼女の行動を観察して判った事がある。
外を出歩いているのに肌が焼けていないことを考えると、おそらくだが防御系の加護を持っている。『楯の乙女』は欠点付きで複数の能力か強力な能力を持っているので、少なくとも防御系を有しているのは間違いが無さそうだ。それなりに引き締まっている体を考えれば弓を使うか、さもなければ剣技で戦うタイプなのだろう。
「まず情報の精査だが、これまで目撃例が無かった」
「第二に穴が空いてからその奥で目撃されたうちの一つ」
「第三にゴルビー地方上方の蟻地獄と違い、その後も出てこない」
「これらを総合し、餌となる存在を求めて姿を現さない事から、水棲のケイブワームであると推測される。要するに巨大ミミズだが、サンドワームと違って先端部分しか装甲に覆われていないのが特徴だ。比較的に倒し易いが、見つけ難い相手という典型的な例だな」
そう言って場所を描いた地図と、特徴を描いたメモを見せる。
遊牧民たちはこちらの手駒ではないが、このまま婚姻政策を進めるなら味方と言う扱いに成る。なので『君たちを信頼しているぞ』というスタンスを見せる為にも、そして情報だけでそこまで掴んだという事を認識してもらわなければならない。俺に対して敬意を抱く必要はあまりないが、情報収集が重要だという事は覚えておいてもらわなければならないからだ。
ちなみにマーゴットは情報を重視している事にあまり関心はなく、かわりにワームの絵姿に気味悪げな顔をしていた。まあ姫騎士と触手生物って相性悪そうだから、大人しくしていてくれるのはありがたい事だ。
「あの。相手が地下から出てこないから見つけるのが難しいのですよね? 調べるにしても戦うにしても、かなり無理があると思うのですが」
「その通り。だからこの作戦は、場所の特定に関わる者が最も功績を得ると言っても過言ではないな」
「「……っ」」
よく考えれば判る事なので、褒めはしないが肯定して置く。
その際にうちの兵士たちはともかく、遊牧民たちはざわつき始めた。頭では難しい状況だと判って居ても、素直に認めることが出来ない。見えている相手なら『やってみないと分からん! 一戦してみるべきだ!』と言えても、相手が何処にいるか判らないのだから当然だろう。
とはいえそれが何処の陣営でも同じこと。まさか俺がここで予め『特定した奴が一番』だなどというとは思いもしなかったに違いない。
「さて、奴らの活性化はは地下水脈の水量が増えたことによる」
「押し流されると同時に、より心地良い空間を求めて下流域に移動した」
「水は上から下に流れるからな、普通は下の方が水量が多い事に成る」
「連中は今ごろ思っている筈だ。上層よりも下層の方が居心地が良いと。では、此処でいきなり水が干上がったらどうなる? もちろん、俺たちは水を汲んで置いて困らない様にした上だ。そうだな。一か所くらいはタメ池を作って待ち構えても良い」
今もって目撃例が少ないのは、上層から中層には居なくなったからだ。
そして下層には広い水たまりが残ったままで、ケイブワームには居心地が良い空間が広がっている事だろう。仮に完全な水棲じゃないにしても、広い水を確保した上で、そこそこ水量が少ない部分に顔(?)を出せば済むだけの話だ。
ここからが重要なのだが、相手が自由自在に移動できるのは水があるからだ。水が無くなれば干上がったミミズと変わらない。流石に道路側溝に出て来た連中と同じには出来ないだろうが。
「馬鹿な! そんな事が出来る筈がない!」
「俺は短い期間で用水路を敷いた。上に居る領主次第で可能さ。だろう?」
「このような使い道とは知りませんでしたが、御二方も快く認めておいでです」
情報の精査に数日掛けたのはウラジミールや領主たちに伝令を送る為だ。
魔物対策ではなく、あくまで遊水池を満たすための実験としか伝えてないが、取水場を封鎖して用水路に水が流れないようにするのは難しくない。もちろんこれまで存在した小川や湧き水の様に、従来通りに地下水路を流れる水は何処からかやって来るだろう。だが、連中は現在水が豊かな下層域に移動してしまっているのだ。
現在を十と仮定して、それが八・七と減り、最後には五とか四になってしまうと思われる。早い段階で中層に分散移動すれば話は別だが、ミミズでしかない連中にそれほど我慢が出来るだろうか?
「目撃例を示した地図、大昔の水脈図。後はそうだな……そちらに水使いが居るなら、協力を仰げるかな? 数日後に水脈探知の呪文を使ってくれれば、大規模な水たまりの位置が判る」
「何!? 功績を譲る気か? ありえん!」
「お前の中ではそうなのだろうな。マーゴット、俺の話を覚えているか?」
「……皆が困っている。だから確実に行く……と? 判った。私が話をする」
特定こそが功績と言った後なので、遊牧民の若者が声を上げる。
だがそんなものは無視してマーゴットを見つめた。すると彼女は言葉に詰まりながらも俺が言いたいことを理解したようだ。流石にこの辺りは族長家の娘であり、祭祀としての扱いされる楯の乙女の面目躍如というところだろう。俺への反感よりもみんなの生活を重視できる辺りやはり素直な子なのだと思われた。
「よし、数日後に作戦を決行する! 各地へ送る伝令を用意」
「従来の水は流れる筈だが、砂の崩落で減る可能性がある」
「それまでの間に水を汲んで、生活に支障がない様にしろ」
「最終的には囮のタメ池のほか、水使いが特定した大規模な水脈をゴーレムで掘る! 万が一に備えて取水場にも監視を付けるが、、おそらく連中は溜め池に来るぞ。弓矢や投擲用の石を用意して置け! 俺が真っ先に向かうが、その時に相手の様子を確認する。それ以後は誰がやっても確実に倒せるように相手の死体を確保するのを忘れるなよ!」
水利を利用する以外は、流れそのものは蟻地獄とあまり変わらない。
ゴーレムを盾にしつつ、俺が切り込んだり連弩を放って相手の戦闘力を見る。そして死体を拾ってデータを確認し、確実に倒す方法を編み出したら、あとは部下に任せるだけだ。その上で、功績は水使いなり、何かの情報に気が付いて特定してくれた奴に渡して置こう。その上で、戦いに参加した者には一時金なり塩の塊でも渡してやればいいさ。
「民の為なら仕方がない……他に何かして欲しい事は無いか?」
「そうだな。羊の脂と灰はあるか? 食事に使って残った物で良い。石鹸を作りたいだけだからな」
せっかくだ、最後の切り札も使ってしまうか。
これまでみみっちく第三の切り札として温存してきたが、意識的に前向きに行くなら気分を変えるべきだろう。さっさと切り札を切り、新しい手札を用意することにしよう。貧すれば鈍するというが、消極的に動いていてもアイデアは湧いてこないからな。
マーゴットが手配している間に、セシリアを呼んで準備を整えておく。
「セシリア、魔導の真髄を見せてやろう。他言無用以前に、まとめて秘密厳守の呪いを使うから、そこは覚悟しておくように」
「それって……はい……判りました」
もう遠慮は止めよう。弟子はセシリアとし、詳しい事を教えてしまう。
代わりに愛人にするし、秘密を喋れない様に呪いの呪文を使う事になる。それは他の弟子より特別扱いするという意味であり、元から愛人候補としてセシリアにとって悪い事では無かった。一生囲い込んで手元から出さないならば、呪いの呪文まで使う必要はない。愛人にするし、秘密の呪文まで使うから、ある程度の自由裁量を任せるということでもあるのだ。
「原初のゴーレムは泥や岩であったのを覚えているな? だから指定する対象は水車でも閘門でも何でも良い。そいつらを遠隔で動かせば、自在に水路を動かせることになる。ゴーレム魔法はアイデア次第であることを覚えておくようにと言ったな?」
「はい。それらを組み合わせれば、驚くほど過ごし易くなると」
以前にセシリアへ告げたことをちゃんと覚えているようだ。
おかげで説明から入らなくて良い。この確認自体で、ソレに連なる事を教える事は判るだろう。ここで俺は用意していた第三の切り札を判り易く見せる。
そこに在ったのは、以前と同じ植物由来の染料で色を付けた水だ。
「何でも良いとは言いつつ判り易いイメージがないと人間は術を行使し難い」
「そこでコイツを使って色を変えてやると途端に区分できてしまう感じだな」
「つまり『俺の呪文はこの色の変化した部分に仕掛けるぞ』となるからだ」
「更に術を行使し易くしたい時は、付与魔法用の素材を混ぜ込んでいく。ゴーレム作成の呪文は元もと付与門派の一系統だから相性は良い。水という媒介だから混ぜ易いし、四大の中の水呪文というのもそこから来ている」
そういって適当な土に水を染み込ませて泥に行を作る。
するとその泥人形がゴーレムと成るわけだ。まあ、このレベルの呪文を単純に使っても俺は失敗しないが、説明用には成るし、高度な術を使う時に少しでも精度を上げたい時に使ったりする。
その上で、俺は別の呪文を重ね合わせた。
「さて、ゴーレムに別の呪文を重ねてはならんという法はない。例えば『使い魔』の呪文を使えば使い魔として備える行動の大半を備える。欠点として自由意志が無いから動物と違って命じるのは無理だけどな。ここでは『視界の共有』という呪文を使う訳だ」
「あ……先生は何もいてないのに……」
俺が目を閉じて呪文を掛けると、ゴーレムの視界に切り替わる。
目ではなく魔法知覚なので慣れが必要だが、勇者軍に居た頃は囮兼探知用によく使ったものだ。なので即座には無理でも、違和感なく使いこなすことが出来るし、応用として伝達用に色々と出来るようになるわけだ。
俺は此処で、目を閉じたまま周りの動きを書き込んでいった。
「これは勇者軍に居た時に多用した偵察用の術だな。罠を踏んでも痛くないし、ちょっと先の光景を見ることが出来る。コウモリなら音も視れるし、鳥ならば遠くの景色を、ゴーレムなら狭い範囲だが見えない物も見れる訳だ。これは秘密じゃないが、イザと言う時に実行すると感心される『見せても良いコツ』になる」
「凄いですね。こんな事を先生は沢山……秘密にするわけです」
猫を見たら使い魔だと思え、人形を見たら付与魔術師だと思え。
ゲームでは常識的な流れだが、普通はこんな知識を外には出さない。基本的には魔導の秘儀を秘密とし、その手前のコツを代価と引き替えにちょびっと見せているわけだ。身内だけで成立するなら問題ないが、相手が魔王軍とかだったりすると秘匿し続けても勝てないからな(それでも隠そうとした連中は一杯居る)。
そんな説明をしている間に、壺を抱えたマーゴットが戻って来た。
「……その女、誰?」
「ニコライという大商人の所から来た夫人候補の一人で、感心な事に魔術を習得しようとする娘だから弟子にしているところだな。それとセシリア、この娘はマーゴットと言って、見ての通り遊牧民の族長家に属するお嬢さんだ。彼女もまた嫁候補なんだが……俺はいい加減この流れに不満でな。娶るとしても、この娘を最後にしたいと思っている」
よく考えたらこれも修羅場の様なものかもしれない。
だが、今後も関係が続くのならばここで尻込みしても仕方がない。思い切って関係性を説明し、ここでこの話を終了させることにした。マーゴットが『他の女が居るのは嫌だ!』というならその話もそこでお終いだ。そこまで遠慮していても仕方がないし、流され続けるのは真っ平ごめんだという思いが強かった。
その態度が良かったのか、悪かったのか、マーゴットは目を白黒させ始める。
「わ、私で最後……?」
「やっぱりそうなんですね……」
「ああ。流石に王家みたいに断り切れない相手はユーリ姫やマーゴットの話だけだろう。それ以上の嫁は要らない。昔の女と蒸し返すことはあるかもしれないが……いや、多分ないな。セシリアの妹であるアンナは断って良い相手を探すつもりだし、あの子は幸せな結婚が出来るなら相手は選らばないようだしな。そうだセシリア、お前も留学だけなら好きにして良いぞ。そのくらいの甲斐性はあるつもりだ」
この話を聞いた二人の反応は微妙に違う。
セシリアは察していた事を確認し覚悟を改めてしたという風情だ。それに対してマーゴットの方は顔が段々赤くなっていく。こないだまでのプリプリ怒っていた擁するとは大違いだ。もしかしたら彼女視点では喧嘩状態でお流れに成る話だと思っていて、俺がある程度認めたことでプロポーズした扱いになるのだろうか?
そう思えば判る気がしたが、実際にはアンジャッシュであった。
アンジャッシュとは文化や価値観など前提条件の違いで、お互いの認識がすれ違っている事を言う(概ね喜劇に成る)。
「留学を……ありがとうございます!」
「え、ええと……おめでとうじゃなくて……はい。お受けします。す、末永く……」
「おっと。倒れる程じゃないだろうに。脂なんかどうでも良いが、気を付けた方が……あれ? まあいいや。先ほどの講義の続きと、俺の切り札公開を先に済ませておこう」
セシリアはほぼ予想通りだがマーゴットは予想外である。
顔を赤らめているのを通り越し、まるで酔っぱらっているかのように視線が整っていない。倒れそうになったので失礼と走りつつも、腰に手を回して支えることにした。するとポーっとし始めたので、仕方なく続きを行う事にした。
さて、用意したのは羊の脂、木の灰、そして色を付けた水である。
「原初の石鹸は、神に捧げられた羊の脂が祭壇の木灰に混ざったモノとされる。ゆえに、御神事に使う事もあるわけだが……、ここではこの色のついた水を使って『不定形型ゴーレム』にするんだ」
「え? ……あ、何でも良いという事は形が無くても良い!?」
俺は三つの素材を混ぜ合わせて簡単な石鹸を作った。
勿論では別の材料で作られるくらいである、それほど綺麗な石鹸には成らない。汚れを落とすだけならもっと別の材料を使った方が良いくらいだ。花なり香草を混ぜれば良い香りの石鹸にもなるしな。だが、俺は別に金策用の高級石鹸が作りたいわけじゃない。
グルグルと混ぜ合わせて行く間に、僅かばかりの泡を持つ石鹸が出来上がる。
「泡立て、その血潮。神に捧げられし羊は神の血肉に成った。ゆえに、この血潮は神の血に等しい、イーコールである」
「ああ……石鹸が立ち上がった……凄い」
続けて呪文を使用し、特殊形状を指定し耐久性を与える。
基本的に不定形だから、殴られても壊れないが、石鹸だから水に溶けて消えてしまう。将来的には証拠隠滅するので良いのだが、持続時間とエネルギー収集に比重を高めたレシピにすることで長時間使用できるようにする。理論上はずっと使える筈だが、どこかで千切られて再生にエネルギーを使って壊れてしまうはずだ。
その上で、使い方を考えて特殊な命令を幾つ与えるかを考慮し始めた。
「先生。これは一体何に使うのですか?」
「さっきやって見せた事の複合だよ。不定形のゴーレムなら何処にでも入り込めるし、偵察能力を与えて居れば有用だろ? こいつを地下水脈に放り込んで、ワームの姿を探し出す一助にするんだ」
こうして最後のピースが当てはまり、特定した場所を直に確認する。
すると全部掘り起こさなくとも、ワームの姿を確認できるはずだ。その上で、いると判った所を掘り起こせば無駄手間にはならなくて済むよな。そいつらを倒した後も、何処かに潜んでいないか確認するのに丁度良いのだ。
そこまでの準備を終えて、俺達はワーム退治へと出撃したのである。
着々と既成事実を積み上げられて行く中、魔物討伐会議を始めた。
そこには戻って来たウラジミール他、我が領の兵士たちだけではなく、遊牧民の戦士も混じっている。
それはこれから倒すべき魔物が彼らにも大きな影響を与える存在だからだ。
「説明を始めるが集めた情報の内容、相手の正体と場所の特定、その対処法の三段階に成る。思う所は在れど、最後まで聞いてくれ」
「おおっ」
「ふんっ」
俺が口火を切ると部下は賞賛の声を、マーゴットは鼻を鳴らした。
何というか我儘姫対策の予習をしている気分になるが、ひとまず置いておこう。もしかしたらユーリ姫は素直かもしれないし、マーゴットももしかしたら素直に成れないだけかもしれない。
それはそれとして、彼女の行動を観察して判った事がある。
外を出歩いているのに肌が焼けていないことを考えると、おそらくだが防御系の加護を持っている。『楯の乙女』は欠点付きで複数の能力か強力な能力を持っているので、少なくとも防御系を有しているのは間違いが無さそうだ。それなりに引き締まっている体を考えれば弓を使うか、さもなければ剣技で戦うタイプなのだろう。
「まず情報の精査だが、これまで目撃例が無かった」
「第二に穴が空いてからその奥で目撃されたうちの一つ」
「第三にゴルビー地方上方の蟻地獄と違い、その後も出てこない」
「これらを総合し、餌となる存在を求めて姿を現さない事から、水棲のケイブワームであると推測される。要するに巨大ミミズだが、サンドワームと違って先端部分しか装甲に覆われていないのが特徴だ。比較的に倒し易いが、見つけ難い相手という典型的な例だな」
そう言って場所を描いた地図と、特徴を描いたメモを見せる。
遊牧民たちはこちらの手駒ではないが、このまま婚姻政策を進めるなら味方と言う扱いに成る。なので『君たちを信頼しているぞ』というスタンスを見せる為にも、そして情報だけでそこまで掴んだという事を認識してもらわなければならない。俺に対して敬意を抱く必要はあまりないが、情報収集が重要だという事は覚えておいてもらわなければならないからだ。
ちなみにマーゴットは情報を重視している事にあまり関心はなく、かわりにワームの絵姿に気味悪げな顔をしていた。まあ姫騎士と触手生物って相性悪そうだから、大人しくしていてくれるのはありがたい事だ。
「あの。相手が地下から出てこないから見つけるのが難しいのですよね? 調べるにしても戦うにしても、かなり無理があると思うのですが」
「その通り。だからこの作戦は、場所の特定に関わる者が最も功績を得ると言っても過言ではないな」
「「……っ」」
よく考えれば判る事なので、褒めはしないが肯定して置く。
その際にうちの兵士たちはともかく、遊牧民たちはざわつき始めた。頭では難しい状況だと判って居ても、素直に認めることが出来ない。見えている相手なら『やってみないと分からん! 一戦してみるべきだ!』と言えても、相手が何処にいるか判らないのだから当然だろう。
とはいえそれが何処の陣営でも同じこと。まさか俺がここで予め『特定した奴が一番』だなどというとは思いもしなかったに違いない。
「さて、奴らの活性化はは地下水脈の水量が増えたことによる」
「押し流されると同時に、より心地良い空間を求めて下流域に移動した」
「水は上から下に流れるからな、普通は下の方が水量が多い事に成る」
「連中は今ごろ思っている筈だ。上層よりも下層の方が居心地が良いと。では、此処でいきなり水が干上がったらどうなる? もちろん、俺たちは水を汲んで置いて困らない様にした上だ。そうだな。一か所くらいはタメ池を作って待ち構えても良い」
今もって目撃例が少ないのは、上層から中層には居なくなったからだ。
そして下層には広い水たまりが残ったままで、ケイブワームには居心地が良い空間が広がっている事だろう。仮に完全な水棲じゃないにしても、広い水を確保した上で、そこそこ水量が少ない部分に顔(?)を出せば済むだけの話だ。
ここからが重要なのだが、相手が自由自在に移動できるのは水があるからだ。水が無くなれば干上がったミミズと変わらない。流石に道路側溝に出て来た連中と同じには出来ないだろうが。
「馬鹿な! そんな事が出来る筈がない!」
「俺は短い期間で用水路を敷いた。上に居る領主次第で可能さ。だろう?」
「このような使い道とは知りませんでしたが、御二方も快く認めておいでです」
情報の精査に数日掛けたのはウラジミールや領主たちに伝令を送る為だ。
魔物対策ではなく、あくまで遊水池を満たすための実験としか伝えてないが、取水場を封鎖して用水路に水が流れないようにするのは難しくない。もちろんこれまで存在した小川や湧き水の様に、従来通りに地下水路を流れる水は何処からかやって来るだろう。だが、連中は現在水が豊かな下層域に移動してしまっているのだ。
現在を十と仮定して、それが八・七と減り、最後には五とか四になってしまうと思われる。早い段階で中層に分散移動すれば話は別だが、ミミズでしかない連中にそれほど我慢が出来るだろうか?
「目撃例を示した地図、大昔の水脈図。後はそうだな……そちらに水使いが居るなら、協力を仰げるかな? 数日後に水脈探知の呪文を使ってくれれば、大規模な水たまりの位置が判る」
「何!? 功績を譲る気か? ありえん!」
「お前の中ではそうなのだろうな。マーゴット、俺の話を覚えているか?」
「……皆が困っている。だから確実に行く……と? 判った。私が話をする」
特定こそが功績と言った後なので、遊牧民の若者が声を上げる。
だがそんなものは無視してマーゴットを見つめた。すると彼女は言葉に詰まりながらも俺が言いたいことを理解したようだ。流石にこの辺りは族長家の娘であり、祭祀としての扱いされる楯の乙女の面目躍如というところだろう。俺への反感よりもみんなの生活を重視できる辺りやはり素直な子なのだと思われた。
「よし、数日後に作戦を決行する! 各地へ送る伝令を用意」
「従来の水は流れる筈だが、砂の崩落で減る可能性がある」
「それまでの間に水を汲んで、生活に支障がない様にしろ」
「最終的には囮のタメ池のほか、水使いが特定した大規模な水脈をゴーレムで掘る! 万が一に備えて取水場にも監視を付けるが、、おそらく連中は溜め池に来るぞ。弓矢や投擲用の石を用意して置け! 俺が真っ先に向かうが、その時に相手の様子を確認する。それ以後は誰がやっても確実に倒せるように相手の死体を確保するのを忘れるなよ!」
水利を利用する以外は、流れそのものは蟻地獄とあまり変わらない。
ゴーレムを盾にしつつ、俺が切り込んだり連弩を放って相手の戦闘力を見る。そして死体を拾ってデータを確認し、確実に倒す方法を編み出したら、あとは部下に任せるだけだ。その上で、功績は水使いなり、何かの情報に気が付いて特定してくれた奴に渡して置こう。その上で、戦いに参加した者には一時金なり塩の塊でも渡してやればいいさ。
「民の為なら仕方がない……他に何かして欲しい事は無いか?」
「そうだな。羊の脂と灰はあるか? 食事に使って残った物で良い。石鹸を作りたいだけだからな」
せっかくだ、最後の切り札も使ってしまうか。
これまでみみっちく第三の切り札として温存してきたが、意識的に前向きに行くなら気分を変えるべきだろう。さっさと切り札を切り、新しい手札を用意することにしよう。貧すれば鈍するというが、消極的に動いていてもアイデアは湧いてこないからな。
マーゴットが手配している間に、セシリアを呼んで準備を整えておく。
「セシリア、魔導の真髄を見せてやろう。他言無用以前に、まとめて秘密厳守の呪いを使うから、そこは覚悟しておくように」
「それって……はい……判りました」
もう遠慮は止めよう。弟子はセシリアとし、詳しい事を教えてしまう。
代わりに愛人にするし、秘密を喋れない様に呪いの呪文を使う事になる。それは他の弟子より特別扱いするという意味であり、元から愛人候補としてセシリアにとって悪い事では無かった。一生囲い込んで手元から出さないならば、呪いの呪文まで使う必要はない。愛人にするし、秘密の呪文まで使うから、ある程度の自由裁量を任せるということでもあるのだ。
「原初のゴーレムは泥や岩であったのを覚えているな? だから指定する対象は水車でも閘門でも何でも良い。そいつらを遠隔で動かせば、自在に水路を動かせることになる。ゴーレム魔法はアイデア次第であることを覚えておくようにと言ったな?」
「はい。それらを組み合わせれば、驚くほど過ごし易くなると」
以前にセシリアへ告げたことをちゃんと覚えているようだ。
おかげで説明から入らなくて良い。この確認自体で、ソレに連なる事を教える事は判るだろう。ここで俺は用意していた第三の切り札を判り易く見せる。
そこに在ったのは、以前と同じ植物由来の染料で色を付けた水だ。
「何でも良いとは言いつつ判り易いイメージがないと人間は術を行使し難い」
「そこでコイツを使って色を変えてやると途端に区分できてしまう感じだな」
「つまり『俺の呪文はこの色の変化した部分に仕掛けるぞ』となるからだ」
「更に術を行使し易くしたい時は、付与魔法用の素材を混ぜ込んでいく。ゴーレム作成の呪文は元もと付与門派の一系統だから相性は良い。水という媒介だから混ぜ易いし、四大の中の水呪文というのもそこから来ている」
そういって適当な土に水を染み込ませて泥に行を作る。
するとその泥人形がゴーレムと成るわけだ。まあ、このレベルの呪文を単純に使っても俺は失敗しないが、説明用には成るし、高度な術を使う時に少しでも精度を上げたい時に使ったりする。
その上で、俺は別の呪文を重ね合わせた。
「さて、ゴーレムに別の呪文を重ねてはならんという法はない。例えば『使い魔』の呪文を使えば使い魔として備える行動の大半を備える。欠点として自由意志が無いから動物と違って命じるのは無理だけどな。ここでは『視界の共有』という呪文を使う訳だ」
「あ……先生は何もいてないのに……」
俺が目を閉じて呪文を掛けると、ゴーレムの視界に切り替わる。
目ではなく魔法知覚なので慣れが必要だが、勇者軍に居た頃は囮兼探知用によく使ったものだ。なので即座には無理でも、違和感なく使いこなすことが出来るし、応用として伝達用に色々と出来るようになるわけだ。
俺は此処で、目を閉じたまま周りの動きを書き込んでいった。
「これは勇者軍に居た時に多用した偵察用の術だな。罠を踏んでも痛くないし、ちょっと先の光景を見ることが出来る。コウモリなら音も視れるし、鳥ならば遠くの景色を、ゴーレムなら狭い範囲だが見えない物も見れる訳だ。これは秘密じゃないが、イザと言う時に実行すると感心される『見せても良いコツ』になる」
「凄いですね。こんな事を先生は沢山……秘密にするわけです」
猫を見たら使い魔だと思え、人形を見たら付与魔術師だと思え。
ゲームでは常識的な流れだが、普通はこんな知識を外には出さない。基本的には魔導の秘儀を秘密とし、その手前のコツを代価と引き替えにちょびっと見せているわけだ。身内だけで成立するなら問題ないが、相手が魔王軍とかだったりすると秘匿し続けても勝てないからな(それでも隠そうとした連中は一杯居る)。
そんな説明をしている間に、壺を抱えたマーゴットが戻って来た。
「……その女、誰?」
「ニコライという大商人の所から来た夫人候補の一人で、感心な事に魔術を習得しようとする娘だから弟子にしているところだな。それとセシリア、この娘はマーゴットと言って、見ての通り遊牧民の族長家に属するお嬢さんだ。彼女もまた嫁候補なんだが……俺はいい加減この流れに不満でな。娶るとしても、この娘を最後にしたいと思っている」
よく考えたらこれも修羅場の様なものかもしれない。
だが、今後も関係が続くのならばここで尻込みしても仕方がない。思い切って関係性を説明し、ここでこの話を終了させることにした。マーゴットが『他の女が居るのは嫌だ!』というならその話もそこでお終いだ。そこまで遠慮していても仕方がないし、流され続けるのは真っ平ごめんだという思いが強かった。
その態度が良かったのか、悪かったのか、マーゴットは目を白黒させ始める。
「わ、私で最後……?」
「やっぱりそうなんですね……」
「ああ。流石に王家みたいに断り切れない相手はユーリ姫やマーゴットの話だけだろう。それ以上の嫁は要らない。昔の女と蒸し返すことはあるかもしれないが……いや、多分ないな。セシリアの妹であるアンナは断って良い相手を探すつもりだし、あの子は幸せな結婚が出来るなら相手は選らばないようだしな。そうだセシリア、お前も留学だけなら好きにして良いぞ。そのくらいの甲斐性はあるつもりだ」
この話を聞いた二人の反応は微妙に違う。
セシリアは察していた事を確認し覚悟を改めてしたという風情だ。それに対してマーゴットの方は顔が段々赤くなっていく。こないだまでのプリプリ怒っていた擁するとは大違いだ。もしかしたら彼女視点では喧嘩状態でお流れに成る話だと思っていて、俺がある程度認めたことでプロポーズした扱いになるのだろうか?
そう思えば判る気がしたが、実際にはアンジャッシュであった。
アンジャッシュとは文化や価値観など前提条件の違いで、お互いの認識がすれ違っている事を言う(概ね喜劇に成る)。
「留学を……ありがとうございます!」
「え、ええと……おめでとうじゃなくて……はい。お受けします。す、末永く……」
「おっと。倒れる程じゃないだろうに。脂なんかどうでも良いが、気を付けた方が……あれ? まあいいや。先ほどの講義の続きと、俺の切り札公開を先に済ませておこう」
セシリアはほぼ予想通りだがマーゴットは予想外である。
顔を赤らめているのを通り越し、まるで酔っぱらっているかのように視線が整っていない。倒れそうになったので失礼と走りつつも、腰に手を回して支えることにした。するとポーっとし始めたので、仕方なく続きを行う事にした。
さて、用意したのは羊の脂、木の灰、そして色を付けた水である。
「原初の石鹸は、神に捧げられた羊の脂が祭壇の木灰に混ざったモノとされる。ゆえに、御神事に使う事もあるわけだが……、ここではこの色のついた水を使って『不定形型ゴーレム』にするんだ」
「え? ……あ、何でも良いという事は形が無くても良い!?」
俺は三つの素材を混ぜ合わせて簡単な石鹸を作った。
勿論では別の材料で作られるくらいである、それほど綺麗な石鹸には成らない。汚れを落とすだけならもっと別の材料を使った方が良いくらいだ。花なり香草を混ぜれば良い香りの石鹸にもなるしな。だが、俺は別に金策用の高級石鹸が作りたいわけじゃない。
グルグルと混ぜ合わせて行く間に、僅かばかりの泡を持つ石鹸が出来上がる。
「泡立て、その血潮。神に捧げられし羊は神の血肉に成った。ゆえに、この血潮は神の血に等しい、イーコールである」
「ああ……石鹸が立ち上がった……凄い」
続けて呪文を使用し、特殊形状を指定し耐久性を与える。
基本的に不定形だから、殴られても壊れないが、石鹸だから水に溶けて消えてしまう。将来的には証拠隠滅するので良いのだが、持続時間とエネルギー収集に比重を高めたレシピにすることで長時間使用できるようにする。理論上はずっと使える筈だが、どこかで千切られて再生にエネルギーを使って壊れてしまうはずだ。
その上で、使い方を考えて特殊な命令を幾つ与えるかを考慮し始めた。
「先生。これは一体何に使うのですか?」
「さっきやって見せた事の複合だよ。不定形のゴーレムなら何処にでも入り込めるし、偵察能力を与えて居れば有用だろ? こいつを地下水脈に放り込んで、ワームの姿を探し出す一助にするんだ」
こうして最後のピースが当てはまり、特定した場所を直に確認する。
すると全部掘り起こさなくとも、ワームの姿を確認できるはずだ。その上で、いると判った所を掘り起こせば無駄手間にはならなくて済むよな。そいつらを倒した後も、何処かに潜んでいないか確認するのに丁度良いのだ。
そこまでの準備を終えて、俺達はワーム退治へと出撃したのである。
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