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第一章
『見え始めた足元』
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ようやく全ての村に命令が行き届き、徐々に良くなるはずだった。
領主間の話がまとまり次第に上流での治水を行い、こちらにも水が引き込める算段にもなっていた。用水路を引き竹で作った水道を設置すれば、それだけで砂漠と荒野だけのゴルビー地方は文字通りに潤うだろう。そんな夢が抱けた頃に問題がやって来たのだ。
キッカケは魔物の存在が散見されたという報告である。
「魔王軍の残党だと? また随分急な話だな」
「いんや、どうも姿を見た事自体は前からあったそうなんですだ」
勇者軍出身者に難民を付けた巡検隊。
彼らが俺たちの元に報告を持って来た。オーガを頭にした典型的な亜人の小グループで、軍隊と言うよりは用心棒を連れた亜人の集落といったイメージである。ただ、それでも村人にとっては脅威であり、魔王軍と亜人でそれほど差があるわけではないだろう。
ただ、そこに別の問題も挟まっていたというだけだ。
「誰かが報告を握り潰していた? 闇司祭なんかこの地方に居たか?」
「おそらくは辿り着けない内に元の棲み家に戻るから、報告を上げる必要が無いと判断したのではないでしょうか? 何しろ御覧の通り砂漠以外は荒野ですから」
それは報・連・相が滞った常態的な問題であった。
食料を採れる場所もないので、補給の概念が無い亜人たちだけでは辿り着けない。見晴らしも良いので最初に見かけたら一目散に村まで戻り、避難を促せばそれで済む。場所によっては自警団を組織している場所もあるだろうし、みんなで石を投げてから応戦すれば迎撃くらいは可能だと思ったのだろう。何しろ隠れもせずに飢えてフラフラのゴブリンなど、村人だけでも倒せる相手なのだから。
ただ、それは報告しない理由にはならない。
「今は良いが根本的には問題だな」
「はい。先日の壁の件や、用水路の作業に魔物の事を考慮に入れておりません。実行段階では無かったのが幸いですが、同様の事は他にもあり得ると見るべきでしょう」
大過無いから良かったとは言い切れない。
上の者が下す決定に、下の者が知っている問題が考慮されて居ない。それは今ではない何処かで新しい問題を引き起こすだろう。一回だけなら魔物を退治すれば済む話だが、次々とやって来るならば警備隊だって組織した方が良いのだ。村に自警団がある場所もあるだろうが、それに頼るのは二重の意味で危険である。彼らに対処できなかった時だけでなく、妙に自信を付けた時、反抗的になるだけならまだ良いが他所の領地に盗賊として向かいかねないのだ。
それはそれとして、遠大な展望よりも先にすべきことはある。
「襲って来る距離じゃないなら、ひとまず放置というのはマズイよな?」
「ええ。ここはこちらで討ち取ってから、近隣の領主と協議すべきでしょうね。次から始末するとなれば、隣領からすればこちらに追い込めば良いと言う既成事実になってしまいます。ミハイル様は大戦の英雄ですので猶更でしょう」
念のために尋ねておいたがやはりマウントの話になった。
攻撃呪文は専門じゃないが、転生後に十年も経っているので、メジャーなファイヤーボールくらいは使える。主にマジックアイテムを作れるような余裕が出来た時に、装備を増やすのに良いと思ったからだ。そのくらいの呪文があればオーガくらいはゴーレムなしでも倒せる。しかし、代官であったアレクセイの意見では少し違うらしい。
こういった知識はないので、想像はついても整理して考えられないから実に助かる。
「どちらが先に、どのようなタイミングで話を切り出したかも影響してきますが、それに託けて別の話も混ぜ込めます。『そちらの領境から魔物が入り込んで来た、こちらに嗾けたのではないか?』などと素直に言えば領主間の争いごとになります。しかし、帰属の怪しい土地を左右するには使えるでしょう。今はともかく、今後に発展するならば重要な問題かと」
「そいつがあったか。確かに十年後の問題には出来ないな」
俺は貴族になったのであって、傭兵でも冒険者でもない。
だから今だけ対処すれば良いのではなく、十年後どころか百年以上続く問題を後には残せないのだ。もちろん自分では解決できない問題を後の世代に託し、そのための準備を続けることも出来る。だが、現在進行形である魔物の対処と同時に、領地の帰属問題は先に済ませておくべきだろう。
俺としては魔術師であるとか研究者の興味に転生者目線の視線があるが、現地の目線や貴族の意識がない。こういったところは見習わないといけないだろう。
「俺が知らないことを補ってくれて助かる。その上で聞くんだが、この件は『対処して置いたが、今後について協議しよう』と持ちかけて、責任と分担を決めて正式な書類に残すって感じで良いのか? 互いに分担するとして、俺が戦力を多めに出し代わりに食料を貰う流れになる感じで行くとか」
「はい。『知らぬ。そちらも追い返せ』の場合には別の想定をしておけば良いかと」
協議を受ける・断るどちらの場合でも、領地の帰属を書類に残せる。
おそらく今回の件で最も大きな利益はそこだろう。こういった場合、自分たちの領地に他領の者を入れたくない場合もあるだろうし、好きにしろと言う場合もある。だが、どちらにせよ『うちの領地は代々、あの山の辺り』などと言う自己主張だけではいつか喧嘩になるのだと思われた。『あの山』というのが村から見た場所なのか、それとも街道なり有名な景勝地から見た場所とかでも違うしな。
もちろん魔物など知らんし、辺境に興味など無いと突っぱねられた時は、別の利用方法を考えるという事なのだろう。
「と言う事はアレか。水利の話も今の段階からやっておいた方が良いんだな?」
「当然です。ゴルビー地方には水があるだけでも有り難いですが、それはそれとして無条件に退くべきではありません。最初は労力や費用の代わりに材料を貰うとしても、何処までが我らの領地なのか、水が流れ込む場合の負担の問題にも目を向けるべきでしょう。あちらであれば向こうの開拓地の候補が減りますし、こちらもそれは同様です。しかし、助かるから耕作面積が減って良いとはなりません。利益と引き替えに、何かを得た結果とすべきでしょう。例えば『水は誰の物ではない知らぬ』と言われた場合は、あちらの都合でこちらの取水を止められないことに出来ます」
要するに、川を領境にしていた場合、水量が増えた事だけを喜べない。
川の幅が広く成れば成るほど、こちらの領地が減るという訳だ。だから川の半ばを境にするとか、洪水の場合はこちら側に遊水地を作って引き込むが、領地を譲ったわけではないと明言が必要な訳だな。遊水地がそのまま溜池になるし、洪水になりかねない水が用水路を満たすから負担を受け入れているが、その事を明確に記載し、その後の問題にならない様にしろと言う事だと思う。
この考えで行くと……もちろん逆の時は逆になるわけだ。
「……つまり、警戒すべきは向こうが引き受けるが『水の権利はうちの物。だから利益を寄こせ』という論調にされないようにすべきなんだな?」
「その通りです。複数の領地にまたがるのでそれを利用しましょう」
結局のところ、うちは水の問題に弱い。だから最後には退く。
だが、押して押しまくられては後々の問題になる。素直に全てを受け容れると、水の面積の分だけ領地が減るし、突っぱね過ぎても『じゃあ水はやらん。欲しかったら金で買え』ということになってしまうのだ。洪水が頻繁に起きる暴れ川だから、ようやく周辺の領主と話し合いが出来るだけで、普通は水利一つとっても利権だから水利って言うんだしな。
面倒な話位なって来たが、あと一つだけ片付けてから魔物退治といこう。
「残る問題として、ユーリ嬢が姫として輿入れして来た時に起きる問題で面倒がありそうだな。継承するとして何処まで負担すべきか、無視して良い部分があるのか、無視できるが受けておいた方が良い部分があるのか調べておいてくれるか?」
「承知しました。王領に組み入れられた時に放棄した筈の案件ですね」
ゴルビー地方も王領に組み入れられたが、姫のアンドラ領もだ。
こちらは存在していた商人も一緒に殺されて大分部分が壊滅して居たし、商会の形で残っている連中にも、王領になった時に王家への貢献として放棄したり接収された財産の範疇で収まっていた。だが、アンドラ領もそうだとは限らないし、同じ状態の筈なのに改めて主張してくる可能性がある。王家には強く出られないが、地方領主にはそうでない場合が多い。それでなくとも手元不如意なので、借金の継承と引き替えに投資する話は山ほどある物と思れた。
ともあれ、これで頭の痛い案件は終了だ。残りの問題を片付けるとしよう。
「後は魔物か。他の魔物が居ないかも調べておいてもらうとして、まずは亜人たちだな。俺が魔法で処理しても良いが、今度を考えると兵士を選抜してゴーレムを付けた方がいいな。久しぶりに今回はこいつで戦うか」
「おや。剣も使われるとは思いませんでしたね」
「いや、こいつもゴーレムさ」
こうしておおよその案件を片付けた俺は部下たちと共に魔物退治に向かう。
その時に傍らから取り上げたのは、剣と呼ぶには大仰な代物だった。それは俺の相棒と言うべきゴーレム。三大ゴーレムには入らないが傑作のひとつ。蛇腹剣という名のゴーレムである。
「こいつはゴ-レムと言う程に強くなく、出来ることは形状を覚える事と、指示した動きをする事だけ」
「剣としての形状と、蛇の様な形になり鞭の如くにしなる形状へと姿を変える能力。ただそれだけのゴーレム」
「ゴーレムの機能を研究する過程で出来ただけの代物だが……。俺の意思で動くってのが重要だな」
要するに剣のスキルではなく、ゴーレム魔法のスキルで振るえる武器である。
転生前に漫画やアニメで見たロマン武器の一つであり、ロボットをゴーレムで再現できるんじゃないかと思った時に追い求めたモノの一つだ。思えば蛇腹剣なんか武器としてまともに機能するはずがないが、剣の形をしたゴーレムに俺が指示を出して自在に動くならば、十分に面白いと言えるだろう。
え? 「パンチだゴーレム!」で一撃で粉砕する方が強いんじゃないかって?
まあ、そうなのだが、これはロマン兵器であり、夢の一つを叶えたって事が重要なんだよな。
ようやく全ての村に命令が行き届き、徐々に良くなるはずだった。
領主間の話がまとまり次第に上流での治水を行い、こちらにも水が引き込める算段にもなっていた。用水路を引き竹で作った水道を設置すれば、それだけで砂漠と荒野だけのゴルビー地方は文字通りに潤うだろう。そんな夢が抱けた頃に問題がやって来たのだ。
キッカケは魔物の存在が散見されたという報告である。
「魔王軍の残党だと? また随分急な話だな」
「いんや、どうも姿を見た事自体は前からあったそうなんですだ」
勇者軍出身者に難民を付けた巡検隊。
彼らが俺たちの元に報告を持って来た。オーガを頭にした典型的な亜人の小グループで、軍隊と言うよりは用心棒を連れた亜人の集落といったイメージである。ただ、それでも村人にとっては脅威であり、魔王軍と亜人でそれほど差があるわけではないだろう。
ただ、そこに別の問題も挟まっていたというだけだ。
「誰かが報告を握り潰していた? 闇司祭なんかこの地方に居たか?」
「おそらくは辿り着けない内に元の棲み家に戻るから、報告を上げる必要が無いと判断したのではないでしょうか? 何しろ御覧の通り砂漠以外は荒野ですから」
それは報・連・相が滞った常態的な問題であった。
食料を採れる場所もないので、補給の概念が無い亜人たちだけでは辿り着けない。見晴らしも良いので最初に見かけたら一目散に村まで戻り、避難を促せばそれで済む。場所によっては自警団を組織している場所もあるだろうし、みんなで石を投げてから応戦すれば迎撃くらいは可能だと思ったのだろう。何しろ隠れもせずに飢えてフラフラのゴブリンなど、村人だけでも倒せる相手なのだから。
ただ、それは報告しない理由にはならない。
「今は良いが根本的には問題だな」
「はい。先日の壁の件や、用水路の作業に魔物の事を考慮に入れておりません。実行段階では無かったのが幸いですが、同様の事は他にもあり得ると見るべきでしょう」
大過無いから良かったとは言い切れない。
上の者が下す決定に、下の者が知っている問題が考慮されて居ない。それは今ではない何処かで新しい問題を引き起こすだろう。一回だけなら魔物を退治すれば済む話だが、次々とやって来るならば警備隊だって組織した方が良いのだ。村に自警団がある場所もあるだろうが、それに頼るのは二重の意味で危険である。彼らに対処できなかった時だけでなく、妙に自信を付けた時、反抗的になるだけならまだ良いが他所の領地に盗賊として向かいかねないのだ。
それはそれとして、遠大な展望よりも先にすべきことはある。
「襲って来る距離じゃないなら、ひとまず放置というのはマズイよな?」
「ええ。ここはこちらで討ち取ってから、近隣の領主と協議すべきでしょうね。次から始末するとなれば、隣領からすればこちらに追い込めば良いと言う既成事実になってしまいます。ミハイル様は大戦の英雄ですので猶更でしょう」
念のために尋ねておいたがやはりマウントの話になった。
攻撃呪文は専門じゃないが、転生後に十年も経っているので、メジャーなファイヤーボールくらいは使える。主にマジックアイテムを作れるような余裕が出来た時に、装備を増やすのに良いと思ったからだ。そのくらいの呪文があればオーガくらいはゴーレムなしでも倒せる。しかし、代官であったアレクセイの意見では少し違うらしい。
こういった知識はないので、想像はついても整理して考えられないから実に助かる。
「どちらが先に、どのようなタイミングで話を切り出したかも影響してきますが、それに託けて別の話も混ぜ込めます。『そちらの領境から魔物が入り込んで来た、こちらに嗾けたのではないか?』などと素直に言えば領主間の争いごとになります。しかし、帰属の怪しい土地を左右するには使えるでしょう。今はともかく、今後に発展するならば重要な問題かと」
「そいつがあったか。確かに十年後の問題には出来ないな」
俺は貴族になったのであって、傭兵でも冒険者でもない。
だから今だけ対処すれば良いのではなく、十年後どころか百年以上続く問題を後には残せないのだ。もちろん自分では解決できない問題を後の世代に託し、そのための準備を続けることも出来る。だが、現在進行形である魔物の対処と同時に、領地の帰属問題は先に済ませておくべきだろう。
俺としては魔術師であるとか研究者の興味に転生者目線の視線があるが、現地の目線や貴族の意識がない。こういったところは見習わないといけないだろう。
「俺が知らないことを補ってくれて助かる。その上で聞くんだが、この件は『対処して置いたが、今後について協議しよう』と持ちかけて、責任と分担を決めて正式な書類に残すって感じで良いのか? 互いに分担するとして、俺が戦力を多めに出し代わりに食料を貰う流れになる感じで行くとか」
「はい。『知らぬ。そちらも追い返せ』の場合には別の想定をしておけば良いかと」
協議を受ける・断るどちらの場合でも、領地の帰属を書類に残せる。
おそらく今回の件で最も大きな利益はそこだろう。こういった場合、自分たちの領地に他領の者を入れたくない場合もあるだろうし、好きにしろと言う場合もある。だが、どちらにせよ『うちの領地は代々、あの山の辺り』などと言う自己主張だけではいつか喧嘩になるのだと思われた。『あの山』というのが村から見た場所なのか、それとも街道なり有名な景勝地から見た場所とかでも違うしな。
もちろん魔物など知らんし、辺境に興味など無いと突っぱねられた時は、別の利用方法を考えるという事なのだろう。
「と言う事はアレか。水利の話も今の段階からやっておいた方が良いんだな?」
「当然です。ゴルビー地方には水があるだけでも有り難いですが、それはそれとして無条件に退くべきではありません。最初は労力や費用の代わりに材料を貰うとしても、何処までが我らの領地なのか、水が流れ込む場合の負担の問題にも目を向けるべきでしょう。あちらであれば向こうの開拓地の候補が減りますし、こちらもそれは同様です。しかし、助かるから耕作面積が減って良いとはなりません。利益と引き替えに、何かを得た結果とすべきでしょう。例えば『水は誰の物ではない知らぬ』と言われた場合は、あちらの都合でこちらの取水を止められないことに出来ます」
要するに、川を領境にしていた場合、水量が増えた事だけを喜べない。
川の幅が広く成れば成るほど、こちらの領地が減るという訳だ。だから川の半ばを境にするとか、洪水の場合はこちら側に遊水地を作って引き込むが、領地を譲ったわけではないと明言が必要な訳だな。遊水地がそのまま溜池になるし、洪水になりかねない水が用水路を満たすから負担を受け入れているが、その事を明確に記載し、その後の問題にならない様にしろと言う事だと思う。
この考えで行くと……もちろん逆の時は逆になるわけだ。
「……つまり、警戒すべきは向こうが引き受けるが『水の権利はうちの物。だから利益を寄こせ』という論調にされないようにすべきなんだな?」
「その通りです。複数の領地にまたがるのでそれを利用しましょう」
結局のところ、うちは水の問題に弱い。だから最後には退く。
だが、押して押しまくられては後々の問題になる。素直に全てを受け容れると、水の面積の分だけ領地が減るし、突っぱね過ぎても『じゃあ水はやらん。欲しかったら金で買え』ということになってしまうのだ。洪水が頻繁に起きる暴れ川だから、ようやく周辺の領主と話し合いが出来るだけで、普通は水利一つとっても利権だから水利って言うんだしな。
面倒な話位なって来たが、あと一つだけ片付けてから魔物退治といこう。
「残る問題として、ユーリ嬢が姫として輿入れして来た時に起きる問題で面倒がありそうだな。継承するとして何処まで負担すべきか、無視して良い部分があるのか、無視できるが受けておいた方が良い部分があるのか調べておいてくれるか?」
「承知しました。王領に組み入れられた時に放棄した筈の案件ですね」
ゴルビー地方も王領に組み入れられたが、姫のアンドラ領もだ。
こちらは存在していた商人も一緒に殺されて大分部分が壊滅して居たし、商会の形で残っている連中にも、王領になった時に王家への貢献として放棄したり接収された財産の範疇で収まっていた。だが、アンドラ領もそうだとは限らないし、同じ状態の筈なのに改めて主張してくる可能性がある。王家には強く出られないが、地方領主にはそうでない場合が多い。それでなくとも手元不如意なので、借金の継承と引き替えに投資する話は山ほどある物と思れた。
ともあれ、これで頭の痛い案件は終了だ。残りの問題を片付けるとしよう。
「後は魔物か。他の魔物が居ないかも調べておいてもらうとして、まずは亜人たちだな。俺が魔法で処理しても良いが、今度を考えると兵士を選抜してゴーレムを付けた方がいいな。久しぶりに今回はこいつで戦うか」
「おや。剣も使われるとは思いませんでしたね」
「いや、こいつもゴーレムさ」
こうしておおよその案件を片付けた俺は部下たちと共に魔物退治に向かう。
その時に傍らから取り上げたのは、剣と呼ぶには大仰な代物だった。それは俺の相棒と言うべきゴーレム。三大ゴーレムには入らないが傑作のひとつ。蛇腹剣という名のゴーレムである。
「こいつはゴ-レムと言う程に強くなく、出来ることは形状を覚える事と、指示した動きをする事だけ」
「剣としての形状と、蛇の様な形になり鞭の如くにしなる形状へと姿を変える能力。ただそれだけのゴーレム」
「ゴーレムの機能を研究する過程で出来ただけの代物だが……。俺の意思で動くってのが重要だな」
要するに剣のスキルではなく、ゴーレム魔法のスキルで振るえる武器である。
転生前に漫画やアニメで見たロマン武器の一つであり、ロボットをゴーレムで再現できるんじゃないかと思った時に追い求めたモノの一つだ。思えば蛇腹剣なんか武器としてまともに機能するはずがないが、剣の形をしたゴーレムに俺が指示を出して自在に動くならば、十分に面白いと言えるだろう。
え? 「パンチだゴーレム!」で一撃で粉砕する方が強いんじゃないかって?
まあ、そうなのだが、これはロマン兵器であり、夢の一つを叶えたって事が重要なんだよな。
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