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厄介な事故現場
狼よりも怖いモノを克服する
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●
事故現場における面倒な問題は最後までそうだった。
隣領の反応を見て、沢山の狼が出るだろうという予想の元に対策を始めたのだが……連中は更なる馬鹿な事をした。
いや、同じことをこっちの領地でもしかねなかったのだ。
そんな馬鹿馬鹿しい事を、こっちの身内がしなかっただけでも良しとすべきなのかもしれない。
「ここからも煙が見え始めたな」
「燻すだけならそこまで必要ないと思うんですがね。最悪の展開を考えておきましょうか」
作業を進めて行く中、隣領の煙が見えた。
煙で燻して獣を追い立てているという事で、俺は狼の群れが居ると判断したのだ。大雨で上流にある丘の土砂が崩れ森から逃げ散り、向こうの領地とこっちの領地を荒らして、食える方で好き勝手をやってるのだろうと判断した。これを追い立てるために煙を使ってるわけだな。
ただ、どうも向こうはまともな対策が採れていないようだ。
あるいはこちらに確実に追い立てるために、生木を盛大に燻しているのかと最初は思ったのだが……。
「その方が良さそうだ、ドンドン煙が増えている」
「森に火が点いたかもしれません。雨で湿気ってると思って無茶したんでしょう」
「羨ましい事だ。故郷には見える範囲の木も無いくらいだぞ」
木は水分が多いので、生木を燃やせば普通は煙が出る。
火は思ったよりも大したことはなく、焚火の中に放り込んでようやく薪の代わりになるくらいだ。だから薪を作る時は乾燥させるし、森というのはそのままでは中々燃えたりはしない。ただし、それは普通ならばの話である。
おそらく向こうの連中は、煙を増やすために火を盛大に焚いたのだ。
「あるいは狼の被害が許容量を超えたのかもしれませんね」
「自分達を守るために猟師小屋の一つも燃やして見せたのかもしれない」
「するとどうなるか……ですが、大惨事ですよ。場合によっては山火事です」
「この辺りは山って程の山は無いので、丘に面した森が風上に向かって一気に燃え広がりますよ」
燃やす必要があるのに燃えないから、苛立って大火災になったわけだ。
とはいえこちらも笑ってはいられないので、ひとまず地面に地図を描いて簡単に示した。最初の地点だと川を挟んで領地があるから良いし、下流もまあ向こうの方が主体だから問題ない。問題があるとすれば上流の方である。そもそも林家盛は上流の方が多いしな。
丘は風を遮るほどの高さは無く素通りするだろう。
つまり風上から風下に掛けて、一気に燃え広がるわけだ。雨で湿気ていても燃えているうちに乾燥して行くし、そうなったら大火災の延長である。おそらく燃えている部分も、乾燥が早い場所であるとか、葉っぱが多くて雨が下に落ちている枯れ葉が濡れていない場所だと思われた。
「こっちはまだ大丈夫ですが作業を中断しましょう。当初の予定通りに籠りつつ、浮いたホムンクルスで木を切り倒しに行きます。延焼しなければ火災はこっちに来ませんからね」
「もったいない。だが、仕方がない事なのだろうな」
燃えてないからと作業して居たら、事態は進まない。
イザ狼が来た時に避難が間に合わないし、その間に燃えないようにする努力が出来ないからだ。ジャンの所で作業を覚えている連中を一か所に固めて守り、それに必要な個体を残して、間伐どころか燃えそうな場所を切り倒す必要があるだろう。
「ジャンさん。守るための指示が出来る人を残して付いてきてください。狼退治も気になるでしょうが、木を切ってから移動させる作業が優先です」
「判った。この状況で異論はないよ」
休憩所兼作業場に皆を固め、柵の内側にホムンクルスを数体立たせる。
狼がやって来たらクロスボウを撃たせ、接近して来たら柵を越えないように盾で防がせる。後は盾を持っていない個体が射撃し続けるだけで、基本的には問題ないだろう。仲間が次々と殺されて居るのに、平然とできる獣はいないからな。まるで成果が上がってないのであれば猶更である。
本当は石弾を撃ち出すアーバレストがあれば良かったんだが、あれは秘密兵器なので持って来てはいない。もしフェーデになったら貴重な戦力だしな。
●
森に来てやることはそう多くない。
しかし、本当に狼が出始めたので面倒なことになった。炎と煙から逃げつつ、木々を伐って行くのは手間が掛かる。昨日までならもっと簡単だったんだが、その時は火災になるとか想像しても無かったしな。
とはいえ此処で泣き言を言っている余裕はないので、何とかするしかないだろう。
「クロスボウを持たせている一体は森を抜けそうな狼を狙撃」
「動かさずに同じ場所から撃たせる。全部を倒す必要はないです」
「残りは斧を持って前進。目の前にいる狼だけを始末、木を伐ります」
「狼が居る間は木は後回し、基本的に動かずに対処。こうすることで同士討ちを避けます。人間みたいに倒そうという欲がないし、狼が向かって来ても恐れずに作業できるのが良い」
まずは身の安全が優先、次に狼の総数減らし。
冷静なホムンクルスならば普通に倒せるし、自分ならば倒せるからと移動もしない。はた目から見ると滑稽であるが、木を伐る作業と狼を退治する作業を適宜に行ってくれるだろう。
もちろん作業効率など上がるはずもないが、これは仕方のないことだと言える。
「火勢が強い。間に合わないんじゃないか?」
「完全に風下の場所は少ないですし、燃える物が減れば問題ないですよ。問題なのは、慌てて同士討ちしたり、狼が居るのに気が付かずに作業する事ですからね。なので基本は狼対策、次に伐採です」
仮に百頭居ても、全部が襲ってくることはない。
おそれて戦えなくなるし、死体が山積みになれば迂回するしかないからだ。第一優先は被害が減る事、次に火災の危険性を下げる事である。というか、火の粉が散って燃える可能性もあるので、伐採して燃える物を減らすことがどこまで有効か分からねえんだよな。やらないよりマシだと言えよう。
その事を『目の前以外』も合わせて説明しておく。
「この場には俺達しかいませんが、戻れば開拓民たちが居ますからね。彼らの事を考えれば、伐採は控えめでも良いくらいですよ。まずは狼を減らしましょう」
「判った。民たちを危険な目には合わせられないからな」
こういうと流石にジャンへも通じるらしい。
柵に守られた安全地帯の筈だが、それでも危険が無いわけでもない。だからこの場所で前衛防御をする事自体に意味がないわけではないのだ。そしてその事を前提にすると、だんだんハッキリと見えてくることがある。
今までは野外であったからこそ意識が薄かったが、別にダンジョンで培った経験は、外で活かせない訳でもないのだ。
「縄張りを思い出してください」
「あれは何も無い場所を区切る物だった」
「同様にこの場所と、狙いを区切りましょう」
「ダンジョンでそうであったようにエリアを区切ります。人々の居る安全地帯、狼と炎のいる向こう側、そして中間地点である此処です。我々の役目は、後方の拠点を可能な限り危機的状況から減らす事ですよ。狼は直接的な危険、そして炎は間接的です」
放っておくとこのエリアを越えて狼が確実に来る。
同時にそれなりの確率で、炎の勢いが今日明日に此処を通るだろう。しかし狼は今日直ぐだし、炎対策で伐採するのは最悪安全地帯の周囲だけでも何とかなるわけだ。ここで伐採をするのは、切り倒した木々がバリケードになるとか、狼を減らしながら作業できるという事でしかない。
こうなってくるとやるべきことはシンプルだ。
手持ちの戦力が無事な間は、ここで前衛防御。可能な限り被害を出さずに敵戦力……この場合は炎の危険も減らす訳だ。斧が両者に対する武器であり、炎の媒介である木々が、邪魔であると同時に防衛用の小道具になるのだから面白い。
「まずは目の前の狼を倒す。そして木だな」
「ええ。優先順さえ間違えなければホムンクルスは暴走しません。自分でも持てるからと伐採した木を持たないならね。ひとまずはどっちも倒しておき、折を見て移動させましょう」
木々も敵であると認識してからは、ジャンも聞き分けが良くなった。
ひとまずは狼退治に専念するが、それが終わればホムンクルスに指示を出す。狼を倒し続け、減ってきたら伐採、また来たら倒してまた伐採だ。暫くすると周囲から木が無くなって来る。
ここでホムンクルスの数を適宜に調整し始めた。
端っこにいる何体かを前進させ、そこで迎撃に専念。また数体を中間で迎撃専念。残りの数体を使って木々やら狼の死体を移動させていく。
「我々は指示を優先にして、暇があったら回り込んで来る奴が居ないかを確認しましょう。倒しに行くよりもそれで作業が回るはずです」
「判った。正直心もとないがな……倒して行く方が余程簡単だ」
今日の作業はジャンを指揮官として鍛える事にはなったと思う。
こういっては何だが彼は戦士として前に出たがる気質が隠せないでいたが、倒す事よりも任務の為に動くことを自覚し始めたからだ。そして火の粉が俺たちの近くまで降り注ぎ始め、狼が半狂乱で逃げまどい始めた段階で作業は終了した。
これ以上は危険だし、風向きが同じでも風の強さがこのままなら大丈夫だろう。
「念のために風を和らげる凪の結界を可能な限り張っておきます。終わったら撤収しましょう」
「そうだな。みなが無事かを確かめることにしよう」
俺達は作業を終えた後、クロスボウの射界を迂回。
仲間に撃たれないようにして、安全地帯であり作業場に戻った。火災が強く成りはしたが、間を伐採したことで飛び火は減った様だ。数日は様子を見つつ、残しておいた浚渫作業を再開。俺たちの事故処理は何とか無事に終わったのである。
こうして面倒な修復作業はそれなりの成果を挙げた。
任務成功もあるが、問題児であるジャンが成長した事で損はある程度補えたと思いたい。あとは下層攻略の目的に戻るだけだな。
事故現場における面倒な問題は最後までそうだった。
隣領の反応を見て、沢山の狼が出るだろうという予想の元に対策を始めたのだが……連中は更なる馬鹿な事をした。
いや、同じことをこっちの領地でもしかねなかったのだ。
そんな馬鹿馬鹿しい事を、こっちの身内がしなかっただけでも良しとすべきなのかもしれない。
「ここからも煙が見え始めたな」
「燻すだけならそこまで必要ないと思うんですがね。最悪の展開を考えておきましょうか」
作業を進めて行く中、隣領の煙が見えた。
煙で燻して獣を追い立てているという事で、俺は狼の群れが居ると判断したのだ。大雨で上流にある丘の土砂が崩れ森から逃げ散り、向こうの領地とこっちの領地を荒らして、食える方で好き勝手をやってるのだろうと判断した。これを追い立てるために煙を使ってるわけだな。
ただ、どうも向こうはまともな対策が採れていないようだ。
あるいはこちらに確実に追い立てるために、生木を盛大に燻しているのかと最初は思ったのだが……。
「その方が良さそうだ、ドンドン煙が増えている」
「森に火が点いたかもしれません。雨で湿気ってると思って無茶したんでしょう」
「羨ましい事だ。故郷には見える範囲の木も無いくらいだぞ」
木は水分が多いので、生木を燃やせば普通は煙が出る。
火は思ったよりも大したことはなく、焚火の中に放り込んでようやく薪の代わりになるくらいだ。だから薪を作る時は乾燥させるし、森というのはそのままでは中々燃えたりはしない。ただし、それは普通ならばの話である。
おそらく向こうの連中は、煙を増やすために火を盛大に焚いたのだ。
「あるいは狼の被害が許容量を超えたのかもしれませんね」
「自分達を守るために猟師小屋の一つも燃やして見せたのかもしれない」
「するとどうなるか……ですが、大惨事ですよ。場合によっては山火事です」
「この辺りは山って程の山は無いので、丘に面した森が風上に向かって一気に燃え広がりますよ」
燃やす必要があるのに燃えないから、苛立って大火災になったわけだ。
とはいえこちらも笑ってはいられないので、ひとまず地面に地図を描いて簡単に示した。最初の地点だと川を挟んで領地があるから良いし、下流もまあ向こうの方が主体だから問題ない。問題があるとすれば上流の方である。そもそも林家盛は上流の方が多いしな。
丘は風を遮るほどの高さは無く素通りするだろう。
つまり風上から風下に掛けて、一気に燃え広がるわけだ。雨で湿気ていても燃えているうちに乾燥して行くし、そうなったら大火災の延長である。おそらく燃えている部分も、乾燥が早い場所であるとか、葉っぱが多くて雨が下に落ちている枯れ葉が濡れていない場所だと思われた。
「こっちはまだ大丈夫ですが作業を中断しましょう。当初の予定通りに籠りつつ、浮いたホムンクルスで木を切り倒しに行きます。延焼しなければ火災はこっちに来ませんからね」
「もったいない。だが、仕方がない事なのだろうな」
燃えてないからと作業して居たら、事態は進まない。
イザ狼が来た時に避難が間に合わないし、その間に燃えないようにする努力が出来ないからだ。ジャンの所で作業を覚えている連中を一か所に固めて守り、それに必要な個体を残して、間伐どころか燃えそうな場所を切り倒す必要があるだろう。
「ジャンさん。守るための指示が出来る人を残して付いてきてください。狼退治も気になるでしょうが、木を切ってから移動させる作業が優先です」
「判った。この状況で異論はないよ」
休憩所兼作業場に皆を固め、柵の内側にホムンクルスを数体立たせる。
狼がやって来たらクロスボウを撃たせ、接近して来たら柵を越えないように盾で防がせる。後は盾を持っていない個体が射撃し続けるだけで、基本的には問題ないだろう。仲間が次々と殺されて居るのに、平然とできる獣はいないからな。まるで成果が上がってないのであれば猶更である。
本当は石弾を撃ち出すアーバレストがあれば良かったんだが、あれは秘密兵器なので持って来てはいない。もしフェーデになったら貴重な戦力だしな。
●
森に来てやることはそう多くない。
しかし、本当に狼が出始めたので面倒なことになった。炎と煙から逃げつつ、木々を伐って行くのは手間が掛かる。昨日までならもっと簡単だったんだが、その時は火災になるとか想像しても無かったしな。
とはいえ此処で泣き言を言っている余裕はないので、何とかするしかないだろう。
「クロスボウを持たせている一体は森を抜けそうな狼を狙撃」
「動かさずに同じ場所から撃たせる。全部を倒す必要はないです」
「残りは斧を持って前進。目の前にいる狼だけを始末、木を伐ります」
「狼が居る間は木は後回し、基本的に動かずに対処。こうすることで同士討ちを避けます。人間みたいに倒そうという欲がないし、狼が向かって来ても恐れずに作業できるのが良い」
まずは身の安全が優先、次に狼の総数減らし。
冷静なホムンクルスならば普通に倒せるし、自分ならば倒せるからと移動もしない。はた目から見ると滑稽であるが、木を伐る作業と狼を退治する作業を適宜に行ってくれるだろう。
もちろん作業効率など上がるはずもないが、これは仕方のないことだと言える。
「火勢が強い。間に合わないんじゃないか?」
「完全に風下の場所は少ないですし、燃える物が減れば問題ないですよ。問題なのは、慌てて同士討ちしたり、狼が居るのに気が付かずに作業する事ですからね。なので基本は狼対策、次に伐採です」
仮に百頭居ても、全部が襲ってくることはない。
おそれて戦えなくなるし、死体が山積みになれば迂回するしかないからだ。第一優先は被害が減る事、次に火災の危険性を下げる事である。というか、火の粉が散って燃える可能性もあるので、伐採して燃える物を減らすことがどこまで有効か分からねえんだよな。やらないよりマシだと言えよう。
その事を『目の前以外』も合わせて説明しておく。
「この場には俺達しかいませんが、戻れば開拓民たちが居ますからね。彼らの事を考えれば、伐採は控えめでも良いくらいですよ。まずは狼を減らしましょう」
「判った。民たちを危険な目には合わせられないからな」
こういうと流石にジャンへも通じるらしい。
柵に守られた安全地帯の筈だが、それでも危険が無いわけでもない。だからこの場所で前衛防御をする事自体に意味がないわけではないのだ。そしてその事を前提にすると、だんだんハッキリと見えてくることがある。
今までは野外であったからこそ意識が薄かったが、別にダンジョンで培った経験は、外で活かせない訳でもないのだ。
「縄張りを思い出してください」
「あれは何も無い場所を区切る物だった」
「同様にこの場所と、狙いを区切りましょう」
「ダンジョンでそうであったようにエリアを区切ります。人々の居る安全地帯、狼と炎のいる向こう側、そして中間地点である此処です。我々の役目は、後方の拠点を可能な限り危機的状況から減らす事ですよ。狼は直接的な危険、そして炎は間接的です」
放っておくとこのエリアを越えて狼が確実に来る。
同時にそれなりの確率で、炎の勢いが今日明日に此処を通るだろう。しかし狼は今日直ぐだし、炎対策で伐採するのは最悪安全地帯の周囲だけでも何とかなるわけだ。ここで伐採をするのは、切り倒した木々がバリケードになるとか、狼を減らしながら作業できるという事でしかない。
こうなってくるとやるべきことはシンプルだ。
手持ちの戦力が無事な間は、ここで前衛防御。可能な限り被害を出さずに敵戦力……この場合は炎の危険も減らす訳だ。斧が両者に対する武器であり、炎の媒介である木々が、邪魔であると同時に防衛用の小道具になるのだから面白い。
「まずは目の前の狼を倒す。そして木だな」
「ええ。優先順さえ間違えなければホムンクルスは暴走しません。自分でも持てるからと伐採した木を持たないならね。ひとまずはどっちも倒しておき、折を見て移動させましょう」
木々も敵であると認識してからは、ジャンも聞き分けが良くなった。
ひとまずは狼退治に専念するが、それが終わればホムンクルスに指示を出す。狼を倒し続け、減ってきたら伐採、また来たら倒してまた伐採だ。暫くすると周囲から木が無くなって来る。
ここでホムンクルスの数を適宜に調整し始めた。
端っこにいる何体かを前進させ、そこで迎撃に専念。また数体を中間で迎撃専念。残りの数体を使って木々やら狼の死体を移動させていく。
「我々は指示を優先にして、暇があったら回り込んで来る奴が居ないかを確認しましょう。倒しに行くよりもそれで作業が回るはずです」
「判った。正直心もとないがな……倒して行く方が余程簡単だ」
今日の作業はジャンを指揮官として鍛える事にはなったと思う。
こういっては何だが彼は戦士として前に出たがる気質が隠せないでいたが、倒す事よりも任務の為に動くことを自覚し始めたからだ。そして火の粉が俺たちの近くまで降り注ぎ始め、狼が半狂乱で逃げまどい始めた段階で作業は終了した。
これ以上は危険だし、風向きが同じでも風の強さがこのままなら大丈夫だろう。
「念のために風を和らげる凪の結界を可能な限り張っておきます。終わったら撤収しましょう」
「そうだな。みなが無事かを確かめることにしよう」
俺達は作業を終えた後、クロスボウの射界を迂回。
仲間に撃たれないようにして、安全地帯であり作業場に戻った。火災が強く成りはしたが、間を伐採したことで飛び火は減った様だ。数日は様子を見つつ、残しておいた浚渫作業を再開。俺たちの事故処理は何とか無事に終わったのである。
こうして面倒な修復作業はそれなりの成果を挙げた。
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