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二章 《カーラヤー》暮らし二日目。
整理。
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色々詰め込まれた農具倉庫をあさる。物が多いから探すのに苦戦したけど新しい軍手と鎌を手に入れた。
鎌は、使い込まれており、少し錆が浮いているけど刃の部分は、鋭く研がれ鈍い銀色の光を放っている。
「……鎌使うの初めてだな」
ちょっと不安だけど、気をつけて使えば大丈夫だろう。
……とりあえず家の正面からやるか。
軍手を着け、鎌と草を入れるカゴを手に持って庭に戻る。
「強敵だなこれは……」
目の前には黒木の植えられた花壇。石垣に沿って作られたそれは、あっちこっちに雑草が生え、所々むき出しの土が覗いていた。
「意外と抜ける……」
花壇だからか土が柔らかくて、鎌が必要ないくらいにすぽすぽ抜ける。
ちょっと硬いのもあるけど、力を込めればなんとか抜けた。雑草が人に敵うわけないのだ。
すっぽすっぽと抜いていき、カゴが草で埋まっていく。
カゴがいっぱいになったら裏庭の一角に集め、また草をむしって……花壇を終わらせたところで母屋からあかりーが縁側に出てくる。
「ヒカルーにーにー、しまってたもの出して分別したから確認だけおねがーい」
「ん、わかった」
額に浮かんだ汗を拭い、家にあがる。
「とりあえずこんな感じなんだけど……どんな感じでしまおうか」
二番座の畳に並べられたのは、使ってない皿や花瓶、ザルやカゴの他に古いアルバムや結婚式の引き出物などだ。
引き出物は、昔一番座の床の間に飾られていた気がするけど、おばぁがなくなった頃に片づけられていた気がする。
「これ……母さん達のか」
アルバムや引き出物に写っているのは、母さん達兄弟。
幼い母さん達を見るのは、新鮮な気分だ。母さんの昔の写真は、結婚式くらいの時ものしか見たことがなかったしな。
「だねー。……これの写真のお皿って昔飾ってあったやつだよね? 」
「そうそう、結婚式の引き出物だよ」
「へー……でも、父さんと馨おばさんのは、ないねー?」
「母さんも正徳おじさんも結婚遅めだったから流行りじゃなかったんじゃないかなー」
県外に嫁いだおばさん達は、結婚が早かったから流行りだったんだろう。
今も残っていると思うけど、どうなんだろうか。
「ふーん? でも、飾ってたって事は、おばぁは、大事にしてたんだねー」
「まあ、遠くに嫁いだ子供だしなー」
簡単に会う事のできないところにいる娘達。思い出に浸るには、ちょうどいいものなのかもしれない。
「でも、引き出物ってことには、うちにもあるってこと?」
「あるんじゃないかなー……使いにくいからしまいっぱなしなんだと思う」
「確かに……」
二人して神妙な表情をしながら、引き出物を見る。
「また飾る?」
「……飾らないかなぁ」
「だよねぇ」
仲が悪い訳じゃないんだけど、だからと言って飾るかと言われたら飾らない。写真は、ご先祖様の写真だけで十分だ。
「じゃあ、これはそのまましまってもらって……ザルとカゴは、使うかもしれないから取りやすいところに。花瓶は……落としたら危ないし、下に置こっか」
あかりーに指示を出しながら、一緒に片づけていく。
「アルバムはー?」
「あー……何冊か仏壇にでも置こうか。しまいっぱなしよりは、おばぁ達も喜ぶだろうし」
「はーい」
引き出物は、飾りづらいけど、アルバム置くくらいなら置いといてもいいだろう。
あかりーにアルバムを仏壇の引き戸の内にしまってもらいながら引き出物の入った段ボールを持ち上げたのだった。
鎌は、使い込まれており、少し錆が浮いているけど刃の部分は、鋭く研がれ鈍い銀色の光を放っている。
「……鎌使うの初めてだな」
ちょっと不安だけど、気をつけて使えば大丈夫だろう。
……とりあえず家の正面からやるか。
軍手を着け、鎌と草を入れるカゴを手に持って庭に戻る。
「強敵だなこれは……」
目の前には黒木の植えられた花壇。石垣に沿って作られたそれは、あっちこっちに雑草が生え、所々むき出しの土が覗いていた。
「意外と抜ける……」
花壇だからか土が柔らかくて、鎌が必要ないくらいにすぽすぽ抜ける。
ちょっと硬いのもあるけど、力を込めればなんとか抜けた。雑草が人に敵うわけないのだ。
すっぽすっぽと抜いていき、カゴが草で埋まっていく。
カゴがいっぱいになったら裏庭の一角に集め、また草をむしって……花壇を終わらせたところで母屋からあかりーが縁側に出てくる。
「ヒカルーにーにー、しまってたもの出して分別したから確認だけおねがーい」
「ん、わかった」
額に浮かんだ汗を拭い、家にあがる。
「とりあえずこんな感じなんだけど……どんな感じでしまおうか」
二番座の畳に並べられたのは、使ってない皿や花瓶、ザルやカゴの他に古いアルバムや結婚式の引き出物などだ。
引き出物は、昔一番座の床の間に飾られていた気がするけど、おばぁがなくなった頃に片づけられていた気がする。
「これ……母さん達のか」
アルバムや引き出物に写っているのは、母さん達兄弟。
幼い母さん達を見るのは、新鮮な気分だ。母さんの昔の写真は、結婚式くらいの時ものしか見たことがなかったしな。
「だねー。……これの写真のお皿って昔飾ってあったやつだよね? 」
「そうそう、結婚式の引き出物だよ」
「へー……でも、父さんと馨おばさんのは、ないねー?」
「母さんも正徳おじさんも結婚遅めだったから流行りじゃなかったんじゃないかなー」
県外に嫁いだおばさん達は、結婚が早かったから流行りだったんだろう。
今も残っていると思うけど、どうなんだろうか。
「ふーん? でも、飾ってたって事は、おばぁは、大事にしてたんだねー」
「まあ、遠くに嫁いだ子供だしなー」
簡単に会う事のできないところにいる娘達。思い出に浸るには、ちょうどいいものなのかもしれない。
「でも、引き出物ってことには、うちにもあるってこと?」
「あるんじゃないかなー……使いにくいからしまいっぱなしなんだと思う」
「確かに……」
二人して神妙な表情をしながら、引き出物を見る。
「また飾る?」
「……飾らないかなぁ」
「だよねぇ」
仲が悪い訳じゃないんだけど、だからと言って飾るかと言われたら飾らない。写真は、ご先祖様の写真だけで十分だ。
「じゃあ、これはそのまましまってもらって……ザルとカゴは、使うかもしれないから取りやすいところに。花瓶は……落としたら危ないし、下に置こっか」
あかりーに指示を出しながら、一緒に片づけていく。
「アルバムはー?」
「あー……何冊か仏壇にでも置こうか。しまいっぱなしよりは、おばぁ達も喜ぶだろうし」
「はーい」
引き出物は、飾りづらいけど、アルバム置くくらいなら置いといてもいいだろう。
あかりーにアルバムを仏壇の引き戸の内にしまってもらいながら引き出物の入った段ボールを持ち上げたのだった。
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