赤瓦屋根の古民家≪カーラヤー≫暮らし

華世良せら

文字の大きさ
上 下
6 / 22
一章 《カーラヤー》暮らし一日目。

仏壇。(2024.6.29追加)

しおりを挟む
「ごちそうさま」
「はーい」
「洗い物は、やるよ」
「ありがとー」

 ヒラヤーチーを食べ終え、あかりーと台所仕事を交換する。

 洗い物くらいならできるからな。ちゃんと調理実習でもやったし、できるできる。うん。

 自分を奮い立たせながら食べるのに使った皿と調理道具を泡立てたスポンジで洗い、流しの横に置いてある水切りカゴへと並べていく。

 正面にある窓から入ってくる風が心地よく、洗い物しているだけなのにまったりとした気分になるから不思議だ。

 全ての洗い物を終え、手をTシャツで拭きながら三番座に戻るとあかりーが仏間でもある二番座の仏壇を拭いていた。

「手伝うか?」

 備え付けの仏壇は、なかなかに大きく、身長の低いあかりーが台に乗りながら拭いているのは、大変そうに見えた。

「ううん、もう終わるから大丈夫。あっ、一緒にウートートーだけしよ」 

 付近を仏壇の端に置き、その隣に置いてあった線香を箱から一本取ると縦に割って、一緒に置いてあったライターで火を着ける。

「はい」

 割られた半分の黒線香を受け取って線香立てに差した後、両手を合わせて目を瞑った。

 おばぁ、おじぃ。しばらくこの家で暮らす事になったんだ。一人暮らし不安だけど頑張るよ。

「……よし」

 先祖に挨拶を済ませ、目を開ける。視線を隣に抜ければ、少し遅れてあかりーが目を開けていた。

「おばぁ達にヒカルーにーにー見守ってってお願いしといたよー」
「俺も挨拶しといた」

 二人で笑いあって仏間の欄間にかかっているおばぁやおじぃ達の遺影を見上げる。

 白黒の遺影に混じるカラーの遺影がおばぁとおじぃの遺影だ。

 おじぃは、俺が保育園の時に亡くなったからあんまり覚えていない。それでも優しかったのは覚えている。

 おばぁは、五年前。中学の入学式の後に亡くなった。学ラン姿にすごく喜んでくれて、それを見せれただけでも祖母孝行になったんじゃないかと思っている。

 遺影の中の二人は、穏やかに笑っていて俺の覚えている二人の姿のままだ。

「おじぃもおばぁも喜んでるかもね。ヒカルーにーにーがここに住むの」
「どうだろうなぁ……まあ、怒られないようにボチボチ頑張るよ」

 沖縄に残った二人の孫の内の一人として。この家を任された孫として不甲斐ない姿を見せたくないからな。

 ……昼飯をあかりーに任せきりになったのは、見逃してほしいところだ。

「さーて、怒られないように掃除の続きするか」
「じゃあ、キッチンの整理しておくね」
「頼む。俺は……風呂とトイレしてくる」

 掃除をして汗もかいているし風呂は、大事だし、トイレも使えないと困るからな。

 虫がいない事を祈りつつ頑張ろ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

処理中です...