赤瓦屋根の古民家≪カーラヤー≫暮らし

華世良せら

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一章 《カーラヤー》暮らし一日目。

仏壇。(2024.6.29追加)

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「ごちそうさま」
「はーい」
「洗い物は、やるよ」
「ありがとー」

 ヒラヤーチーを食べ終え、あかりーと台所仕事を交換する。

 洗い物くらいならできるからな。ちゃんと調理実習でもやったし、できるできる。うん。

 自分を奮い立たせながら食べるのに使った皿と調理道具を泡立てたスポンジで洗い、流しの横に置いてある水切りカゴへと並べていく。

 正面にある窓から入ってくる風が心地よく、洗い物しているだけなのにまったりとした気分になるから不思議だ。

 全ての洗い物を終え、手をTシャツで拭きながら三番座に戻るとあかりーが仏間でもある二番座の仏壇を拭いていた。

「手伝うか?」

 備え付けの仏壇は、なかなかに大きく、身長の低いあかりーが台に乗りながら拭いているのは、大変そうに見えた。

「ううん、もう終わるから大丈夫。あっ、一緒にウートートーだけしよ」 

 付近を仏壇の端に置き、その隣に置いてあった線香を箱から一本取ると縦に割って、一緒に置いてあったライターで火を着ける。

「はい」

 割られた半分の黒線香を受け取って線香立てに差した後、両手を合わせて目を瞑った。

 おばぁ、おじぃ。しばらくこの家で暮らす事になったんだ。一人暮らし不安だけど頑張るよ。

「……よし」

 先祖に挨拶を済ませ、目を開ける。視線を隣に抜ければ、少し遅れてあかりーが目を開けていた。

「おばぁ達にヒカルーにーにー見守ってってお願いしといたよー」
「俺も挨拶しといた」

 二人で笑いあって仏間の欄間にかかっているおばぁやおじぃ達の遺影を見上げる。

 白黒の遺影に混じるカラーの遺影がおばぁとおじぃの遺影だ。

 おじぃは、俺が保育園の時に亡くなったからあんまり覚えていない。それでも優しかったのは覚えている。

 おばぁは、五年前。中学の入学式の後に亡くなった。学ラン姿にすごく喜んでくれて、それを見せれただけでも祖母孝行になったんじゃないかと思っている。

 遺影の中の二人は、穏やかに笑っていて俺の覚えている二人の姿のままだ。

「おじぃもおばぁも喜んでるかもね。ヒカルーにーにーがここに住むの」
「どうだろうなぁ……まあ、怒られないようにボチボチ頑張るよ」

 沖縄に残った二人の孫の内の一人として。この家を任された孫として不甲斐ない姿を見せたくないからな。

 ……昼飯をあかりーに任せきりになったのは、見逃してほしいところだ。

「さーて、怒られないように掃除の続きするか」
「じゃあ、キッチンの整理しておくね」
「頼む。俺は……風呂とトイレしてくる」

 掃除をして汗もかいているし風呂は、大事だし、トイレも使えないと困るからな。

 虫がいない事を祈りつつ頑張ろ。
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