赤瓦屋根の古民家≪カーラヤー≫暮らし

華世良せら

文字の大きさ
上 下
7 / 22
一章 《カーラヤー》暮らし一日目。

風呂掃除。

しおりを挟む
 裏庭にある農具用倉庫からホウキとチリトリを探しだして、母屋の横にある風呂とトイレに向かう。

「うわ、クモの巣張ってる……」

 中を確認すると、長い間使われていなかった風呂場の天井付近にクモの巣が張っていたり、いつ入り込んだのかわからない葉っぱが転がっていた。

「トイレは、盆と正月で使うけど……風呂場は、おばぁ死んでから使ってないだろうからなぁ……」

 掃除は、していたと思うけどそれでも使うことがなければ、汚れが見落とされるのも仕方がない。

 水色の小さいタイルと白塗りの壁で構成されている風呂場に足を踏み入れ、正面に置かれた水色のバスタブを覗き込めば中がうっすらと黒ずんでいる。

「うわ……カビ? 埃? やだなぁ……」

 これは、母屋以上に気合いを入れないと行けないかもしれない。

「洗濯機は……動くっと」

 風呂場の片隅に置かれた洗濯機の電源を差し込めば、ピッという機械音が響き安心した。

 使えない物があったら中古を買ってくれるらしいけど……中古とはいえいつまで住むかわからないのに買ってもらうというのは、申し訳ないんだよな。

「冷蔵庫も無事だったし、レンジも大丈夫って言ってた……後で連絡しておこう」

 あかりーに伝えてもらうって方法もあるけどそれは、ちょっと責任感が無さすぎると思うし報連相は、大事にしていこう。小遣いにも関わるかもしれないしな。

 任された人間としての使命を燃やしつつ、電気着くことも確認し、掃除に取りかかる。

 床を掃き、外からホースを伸ばしてきてザックリと壁や天井付近の汚れを落としていく。もちろん、電源や電球を濡らさないように気をつけつつ。

「あ゛ぁ゛ーーーーー! やっぱりこびりついてるーーーーー!」

 一通り壁と床を流してからデッキブラシで擦るもバスタブと同じような汚れがこびりついて、なかなか落ちない。

「うぉおおおおおお!」

 雄叫びをあげ、洗剤を振り撒き、ひたすらにデッキブラシで擦る。擦る。擦る。

 白い泡と黒い汚れが混じってグレーの泡を量産し続け、一通り壁と床を擦ったところで水を流す。

「うん、いいんじゃない」

 敷き詰められた小さい青いタイルと白い壁が澄んだ色になったことに満足し、額の汗を腕で拭う。

「後は、バスタブと……」

 なぜだか一際汚れているバスタブにため息を吐き、洗剤とスポンジを構える。 

「だが、俺の敵じゃなーーーーーい!」

 実家の俺の部屋……六畳より大きい風呂を磨ききった俺にとっていくら汚れていようとバスタブなど、敵じゃないのだ!

「落ちろーーーーー!」

 ごしごしごしごしごしごし……っとバスタブを擦り続け、やや泡にまみれながらもなんとか強敵を倒すことができた。

「いいねいいね。ここまで綺麗になったら気持ちよく風呂にはいれるだろ」

 輝く水色のバスタブに満足しながら腕を組む。なんというか本当に大仕事を終えた気分だ。

「最後にトイレっと」

 掃除用具を片手に隣のトイレの扉を開ける。

 開けた。

「ぎゃあああああああ!」

 トイレの中に落ちる黒光りする羽を持ったそれに俺は、叫び声をあげたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ご飯を食べて異世界に行こう

compo
ライト文芸
会社が潰れた… 僅かばかりの退職金を貰ったけど、独身寮を追い出される事になった僕は、貯金と失業手当を片手に新たな旅に出る事にしよう。 僕には生まれつき、物理的にあり得ない異能を身につけている。 異能を持って、旅する先は…。 「異世界」じゃないよ。 日本だよ。日本には変わりないよ。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

処理中です...