赤瓦屋根の古民家≪カーラヤー≫暮らし

華世良せら

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一章 《カーラヤー》暮らし一日目。

従妹。

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 引き戸を開けたので今度は、中に入って廊下兼縁側にある窓を全部開けると家の中の埃っぽさと蒸し暑さが解消される。

「次は、掃除……」

 あまり汚れている感じは、しない。けど、今日から住むのだ。埃っぽさが残ったままというのは、勘弁願いたい。

「掃除道具掃除道具……」

 物置として使われている三番裏座の窓を最後に開けたので少し探せば掃除機やバケツ、雑巾が出てくる。

 どれも年季が入っているがおそらく使えるだろう。その中から掃除を手に取り、今回の相棒として任命する。

 畳の掃除は、ホウキでやった方がいいとか聞くけど、この広さの家を一人で掃除するのにホウキは、キツイ。

 母屋が表座三部屋、裏座三部屋、台所。離れに風呂とトイレ。いわば6Kで風呂トイレ別。一人暮らしには、あまりにも広すぎる家だ。

 こんな広い家を掃除するには、掃除機は必須。仕方のない事なのだ。

 家の至るところにある後づけコンセントを探して、相棒となる掃除機に命を与える。

 スイッチを入れれば、唸り声のような響きが上がる。

「いくぞ相棒」

 掃除機片手にノリノリで一番座に向かえば、開いた窓の向こうに固まる人影が一つ。

 手にビニール袋を持った日焼けした肌にラフなTシャツとハーフパンツを着こなしたポニーテールの少女。

「……ひ、ヒカルーにーにー?」

 俺にとっては、去年の旧盆ぶりになる……

「あ、あかりー……」

 正徳おじさんの娘で三歳下の照屋朱里あかりだった。

「な、なんでここに……」
「父さんと母さんが掃除手伝っておいでって……」

 恥ずかしい姿を見られて、顔が熱くなるのを感じながら言葉を絞り出せばそんな答えが返ってきた。

 考えてみれば高校の入試は、三月の始めに終わっているし、中学の卒業式も俺の合格発表と同じくらいには、終っている。

 そして、この家から正徳おじさんの家までは、徒歩二十分程度……さらにあかりーの後ろにある自転車を見る限り、もっと必要時間は短くなるだろう。
 
 俺が今日ここに来る事を正徳おじさんの家族は、皆知っている。

  イコール。誰かしら手伝いに来る可能性は、十分にあったということだった。

「おあぁああああ!」

 羞恥心と予想できなかった事に掃除機を放り出し、頭を抱える。

「ヒカルーにーにー!?」
「すまん! 羞恥心でどうにかなりそうだからしばらく放っておいてくれ!」

 驚くあかりーに叫びながらうずくまり、羞恥心をやり過ごす。

「だ、大丈夫ねぇ?」
「大丈夫、大丈夫……」

 叫び終った頃には、ぐったりした俺と心配するあかりーという光景が出来上がっていた。

 いや、しかし……高校卒業してから年下の女の子にあんな姿見られるってホント恥ずかしいな。

「……あー、その……手伝いに来てくれてありがと」
「ううん。ホントーは、あかりーがしないといけないのにヒカルーにーにーにお願いされてるから手伝わんとーと思って」

 あかりーは、正徳おじさんの一人娘だから将来的には、この家の相続人になる。

 その責任の為か、どことなくやる気を感じる姿にしっかりしてると思う。

「俺は、今無職だからなぁ……あかりーは、中学卒業して春休みだけど、高校受かったんだろ? 正徳おじさん的には、あかりー一人だけに任せる事は、したくなかったんじゃないのか?」
「そうなのかねー?」

 ご近所さんがあるといえど裏が山の家。中学を卒業したばかりの女の子を一人で行かせるのは、心配だろう。

 たぶん、今日手伝うように言ったのも俺がいるからだと思う。

 正徳おじさん、あかりーのこと結構溺愛してるからなぁ……。

 それなのに俺と二人っきりにさせるのは、信頼されているのか……それとも何かする度胸のない男だと思われているのか……考えないようにしよう。

「まぁ、手伝いに来てくれてすっごい助かる。この家でっかいからさー」
「だよねー」
「とりあえず掃除機かけるからモップお願いしていい?」
「はーい。荷物置いたらやるねー」

 ひとまず人手が増えてくれるのは、大歓迎。あかりーを新たな戦力として迎え、この広い家の掃除へと乗り出すのだった。
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