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二章:旅立ちの夏

28.農奴

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 馬達を牧場の馬房で休ませてもらい、僕とシルヴァン様は牧場の中を見せてもらう。

 基本的な施設は同じだが、この牧場はうちの牧場より綺麗な感じがする。領都が近いからだろうか?

 それに従業員がいっぱいいて、うちのような家族だけでやっている牧場と言うわけではなさそうだった。

「この牧場は、いっぱい人が居ますね」
「ああ、ここは農奴を使っているからな」
「……農奴?」

 聞きなれない言葉に首を傾げる。

「税を納めきれなかったり、犯罪を犯した人間を奴隷として働かせているんだ」
「奴隷……」

 それは、なんとなく知っている。悪い事をしたら奴隷に落とされるぞ。と、言うのは子供を叱る時によく言われる言葉だ。

 人としての権利を奪われ、家畜のように働かされる存在。

 実際見た事はなく。どことなく架空の存在だと思っていたものが、こんな近くで存在している事に目を見開いた。

「あの平和な村出身だったら見慣れないだろうが、領都や王都に近づくほどにああいう存在は増えていく。慣れろとは、言わないが知っておけ」
「……はい」

 人なのに人じゃない。そう言う存在が当たり前に存在していると言うのは違和感がある。だけど、それは平民の僕ではどうする事もできない事だと、頭の隅に置いておく事にした。

 農奴を使い、うちの牧場より大きな牧場を見て回る。

 軍馬となる重種馬は、うちの子と比べても同じくらいに立派で、競走馬の子達も広い放牧場で走り鍛えられているのか綺麗な体をしていた。

「どの子も綺麗な体をしてますね」
「そうだな。この牧場の一歳馬がうちの領の中だと一番出来がいいと思う。まあ、ヴァロワラファールと比べるとまだまだだがな」

 この牧場の子達を誉めながらも、ヴァロワラファールが誉められた事が嬉しくて顔がにやける。

「さて、次の牧場へと向かうとしよう」
「はい」

 牧場を見て回り、クロネ達も十分休めただろう時間が経ったと判断したのか、次へ向かおうと言ってきたシルヴァン様に僕は頷く。

 クロネ達を引き取り、牧場の主人にお礼を言ってから、牧場を後にした。

 次の目的地は、領都を経由して、この領で一番大きな競走馬の牧場を見に行くことになっている。

 初めて訪れる領都も楽しみだけど、それ以上に競走馬の牧場と言うのが楽しみで仕方がなかった。
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