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二章:ジャンという少年
19.将来が楽しみな子
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「クロネの524ー。ブラシしてあげるよー」
ブラシを持って訪れたのは、クロネの524の馬房。
他の子のブラシもするつもりだけど、午前中に約束した彼を待たせている自覚があったからだ。
「うわっ、ごめんごめん」
掃除した時はいい子にしてたのに、ブラシを持っている僕を見て、じゃれていいと判断したのか僕の腕に擦り寄ってくる。
子馬といえど、体重は僕より重い。本気でじゃれつかれて転んだことがあったからか、それ以降は僕がよろけない程度の力に加減してくれてくれているこの子はやはり賢い。
「ブラシしようね」
母馬であるクロネが居ないこともあって、寂しさもあるんだろうなと思いながらその頭を撫でれば、もっと撫でろと軽く頭を押しつけられた。
「これじゃ、ブラシできないよー」
子馬らしい甘えた動きに笑いながら、頭や首を撫でてあげる。
撫でるついでに、ブラシを持った手で、首筋をブラッシングしてあげたら嬉しそうに鼻を鳴らし、尻尾が緩やかに揺れた。
クロネの524とじゃれながらブラシをかけていく。
こういう時、名前を呼んであげたいのだけど、僕らが彼らに名前をつけることはできない。
競走馬になる子の名前は、領主様が。乗用馬になる子や軍馬になる子達は、その主達が名前をつけるからだ。
僕達が名前をつけれるのは、この牧場で繁殖に回る子達だけ。ヴァロワラファールの母馬リラや、この子母馬のクロネは父さんが付けている。
まあ、繁殖に入る前に競走馬だった牝馬とかは、領主様が名付けた子もいるんだけど。
そういう子は、領主様の競走馬とわかるようにヴァロワという冠名が個別の名前の前についている。
ヴァロワラファールのヴァロワが冠名、ラファールがその子の個別の名前となるわけだ。
だから、ヴァロワラファールの管理を任されているシルヴァン様はラファールと普段は呼んでいるらしい。
「君は、なんて名前になるんだろうね」
ブラッシングを終え、僕の周りを甘えるように回るクロネの524を見ながら呟く。
僕は、彼がすごい競走馬になると思っているけど、領主様に選ばれるかはわからない。
ただ、牡馬だから、ずっとこの牧場にいる事はないだろう。
乗用馬や軍馬、馬車馬になったらこの牧場に戻ってくる事はない。
競走馬だったら、繁殖用の種牡馬として戻ってくる可能性もあるが、種牡馬は領地の別の牧場で飼育されているから難しいかもしれない。
「でも……君が、競走馬になれたら、また会えるかもね」
僕がシルヴァン様と王都の近くにある厩舎街に行ったとしても、この子が競走馬になれれば、その活躍をすぐ側で見る事ができるかもしれない。その事がただただ、楽しみだった。
ブラシを持って訪れたのは、クロネの524の馬房。
他の子のブラシもするつもりだけど、午前中に約束した彼を待たせている自覚があったからだ。
「うわっ、ごめんごめん」
掃除した時はいい子にしてたのに、ブラシを持っている僕を見て、じゃれていいと判断したのか僕の腕に擦り寄ってくる。
子馬といえど、体重は僕より重い。本気でじゃれつかれて転んだことがあったからか、それ以降は僕がよろけない程度の力に加減してくれてくれているこの子はやはり賢い。
「ブラシしようね」
母馬であるクロネが居ないこともあって、寂しさもあるんだろうなと思いながらその頭を撫でれば、もっと撫でろと軽く頭を押しつけられた。
「これじゃ、ブラシできないよー」
子馬らしい甘えた動きに笑いながら、頭や首を撫でてあげる。
撫でるついでに、ブラシを持った手で、首筋をブラッシングしてあげたら嬉しそうに鼻を鳴らし、尻尾が緩やかに揺れた。
クロネの524とじゃれながらブラシをかけていく。
こういう時、名前を呼んであげたいのだけど、僕らが彼らに名前をつけることはできない。
競走馬になる子の名前は、領主様が。乗用馬になる子や軍馬になる子達は、その主達が名前をつけるからだ。
僕達が名前をつけれるのは、この牧場で繁殖に回る子達だけ。ヴァロワラファールの母馬リラや、この子母馬のクロネは父さんが付けている。
まあ、繁殖に入る前に競走馬だった牝馬とかは、領主様が名付けた子もいるんだけど。
そういう子は、領主様の競走馬とわかるようにヴァロワという冠名が個別の名前の前についている。
ヴァロワラファールのヴァロワが冠名、ラファールがその子の個別の名前となるわけだ。
だから、ヴァロワラファールの管理を任されているシルヴァン様はラファールと普段は呼んでいるらしい。
「君は、なんて名前になるんだろうね」
ブラッシングを終え、僕の周りを甘えるように回るクロネの524を見ながら呟く。
僕は、彼がすごい競走馬になると思っているけど、領主様に選ばれるかはわからない。
ただ、牡馬だから、ずっとこの牧場にいる事はないだろう。
乗用馬や軍馬、馬車馬になったらこの牧場に戻ってくる事はない。
競走馬だったら、繁殖用の種牡馬として戻ってくる可能性もあるが、種牡馬は領地の別の牧場で飼育されているから難しいかもしれない。
「でも……君が、競走馬になれたら、また会えるかもね」
僕がシルヴァン様と王都の近くにある厩舎街に行ったとしても、この子が競走馬になれれば、その活躍をすぐ側で見る事ができるかもしれない。その事がただただ、楽しみだった。
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