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宴の後・王宮

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 パーティ後、魔導士団団長のライルは、国王と王妃に謁見した。

「そうか……。ミーヤ嬢が付けていたイヤリングに、聖なる魔力が……」

 国王が王妃に訊く。

「ソーニャは確か……」
「聖女の血筋に連なる女性でした」

「なんでラスディと結婚したの? 勿体ない」

 ラスディなんか……って。 
 しかも勿体ないって……。

 真実は、必ずしも周囲を幸せにしないような気がするライルだった。

 国王はハッとする。

「ちょっと待て。ソーニャの娘なら、猫みたいな名前のあのコにも、聖女の資質があるのではないのか?」
「わたくしもそう思ってましたが、ソーニャの話では、動物たちと意思を通わせる位しかないと」

 王妃は何度かミーヤの母ソーニャに、ミーヤの持つ資質について問い合わせていた。
 もしもミーヤに聖女の資質があるのなら、その血を王家に取り入れたいと。
 ソーニャはやんわりと、ミーヤの本質を隠していたようだ。

「はあ……王家に嫁がせたくはないか」

 動物と意思の疎通が出来るのも、聖女の資質の一つであるが、敢えてライルは黙っていた。
 彼女が聖女認定なんかされたら、魔導士との結婚なんて出来なくなるのだから。
 そんなことになったら、氷イタチが泣くじゃないか。

 せっかく、打ち解けられる相手を見つけたというのに。


 
 その氷イタチことフィーザは、久しぶりに、母の実家であるパドロス家へ向かった。
 母はパドロス邸の一室で、意識なく眠り続けている。
 フィーザの魔力は水系ではあるが、父親とは違う氷結系。

『本当に、俺の息子か?』

 フィーザの父のひと言が、引き金だった。
 フィーザの母は、湖に身を投げた。
 助け出されて命は助かったが、今も意識は戻らない。
 

「母さん、ただいま。俺ね、けっけっ、結婚したい女性がいるんだ」

 母の瞼が、風に揺れた。

「変わった子だけど一緒にいると癒されるんだ。……動物と仲良く暮らしていて、編み物や料理も得意なコ。凄く、凄く可愛いコ。……今度、連れて来るよ」

 フィーザは母の手に、小さな布を握らせる。
 パーティの日に、ミーヤに貰ったポケットチーフである。

「ほら、これ。彼女が、ミーヤが俺に作ってくれたんだ。不思議と温かい。母さんの、手みたいに」

 母の手がその布に触れた時、彼女の瞼がピクリと動いた。
 目尻に一粒、涙が流れた。
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