13 / 115
青空の下にて
10.(※)
しおりを挟む「なになになになになに待って待って待って待って」
「なんでお前はそう……セレネは素直に受け入れたぞ」
顔を近づけてこようとするヘイデル王と、その両肩を鷲掴んで押し返そうとする俺。しかしやはり、上からの圧力と下からの圧力では前者の方が優勢である。徐々に壁と国王との間に圧迫される形となっていく。
だがしかし俺は絶対に諦めない。そう意気込んで今一度力を入れ直し、押し返そうとしたその時ーーふ、と相手の力が抜ける。
「ぇ、うわ、」
当然前のめりになった俺の身体は、目の前にある男の身体にぶつかる訳で。彼はぼすっとガタイのいい身体に収まってしまった俺を、抱き締めたままくるりと向きを変えてベットに押し倒した。
「ーーもう逃げられないな?」
「は?舐めてんのか逃げれるわこんな、ーーーーぁ?」
「はァ……漸く効いたか」
かくん、と力が抜ける。寝具に完全に倒れ込んだ俺の様子を見て、もう力を加える必要が無いと判断したらしいヘイデル王はうっすら浮かんだ汗を拭う。
身体を起こそうとしても、全く動かない。文字通り指1本も動かない。
いつ盛られた?起きてからじゃない。魔法の気配もない。なら寝てる間か。それなら仕方ない。……いや仕方なく無いわふざけんな。
抵抗できなくなったのをいい事に、彼はとっくにはだけかけた俺のガウンに手を伸ばし、その間からするりと手を入れてくる。他人の手が自分の肌に触れる感覚が気持ち悪くて身動ぎするも、上から覆い被さられているため、殆ど効果はなかった。
「手こずらせてくれた分、楽しませてやろう」
チュ、…じゅる、
「……う、ん、んぐ、…や、んんッ、」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!
呼吸もままならないまま続けられる口付け。早々に唇を開かされ、口腔内を舐め回す下品な音が耳に響く。薬物のせいで力が抜けているのもあって、完全に相手の思うがまま。魔法を使おうにも、恐らく妨害装置でもついているのだろう。全く使えない。両腕はいとも容易く頭上で拘束され、もう片手で腰骨や湧きをなぞられては過敏に反応する自分の身体が憎らしい。
「はぁ、あ…や、も、ンん」
「思い出したか?」
「は、も、もぅ、思い出したからぁ、やめ…んんッ……」
唇を離し、俺が呼吸しようとしたところをまた塞ぎ、を繰り返してくるせいで、酸欠で頭が朦朧とする。視界が霞み、目を瞑れば生理的な涙が零れる。分厚い舌に上あごを擦られるだけであられもない声が出てしまい、思わず赤面してしまう。そこを擽られると、なんか、腰が変な感じになる。
何とか目を開けて王を睨みつければ、ずっと俺を観察していたらしい彼は漸く唇を離した。
ツゥ、と二人の舌が銀糸で繋がり、ふつりと切れる。王の真っ赤な舌がぺろりと涎をなめとる様がひどく扇情的で、目を逸らす。ぜぇ、ぜぇ、と必死に酸素を取り入れようと胸が上下する。口はだらしなく開いたまま、頬を涎が伝っていくのを感じる。
どうやら茶会で知らぬ存ぜぬを通したことが気に入らなかったらしい奴は、俺が白状したことで満足したのか、わしわしと俺の頭を撫で、額に軽く口付けを落とす。
「みと、みとめたから、終わりですよね、ぇ」
みっともなく息を荒げながらも彼の金の目を見上げれば、奴はしたり顔で俺のガウンの腰帯をするりと抜く。今度こそガウンとしての役目を失った布は、はらりと寝具の上に広がった。ぽかん、とその素早い動きを見つめていた俺は、完全に裸体を晒していることに気付いて慌てて陰部を隠す。かーっと顔が熱くなる。
その様子を黙って見ていたヘイデル国王は、いまだ力の入らない俺の腰をがしりと掴み、ぐるりと一回転させた。
「ひっ」
「寧ろここからが本番だろう。どうやら伽の経験はないようだが……仕置きだからな」
「――ッ、ツぅ、…ッグ」
クソみたいな抵抗などなんのその。俺を己の膝の上に乗せて無理矢理足を開かせ、どこから取り出したのか甘ったるい香りのする香油をドロリと手に垂らして陰茎をぐちゅぐちゅと上下に擦る。嫌だやめろと叫び続けた俺に機嫌を損ねたらしい奴が、脱がした下着をそのまま俺の口の中に突っ込んできたせいで、吐き気が永遠に襲っている。
もう片方の手では俺の乳首を摘まみ、無理矢理コリコリと動かすせいで、痛みに呻き声が漏れる。しかし、奴は相当嗜虐壁があるのか、むしろ楽しそうに俺を痛めつけてくる。
「どうやら痛いのがお好みらしい」
「ンンッ”、ンンン”ン”!!」
――グチュグチュグチュッ!!!
ぎゅっと陰茎を強く握りこまれ、思わず身体を縮こまらせるが、赦さないとばかりに顎に手を掛けられ顔を上げさせられる。ヘイデル国王は俺の目に浮かんだ涙を舐めとると、さらに陰茎をこする手を速めた。快感など一切ない、痛みを与えるためだけの行為に絶叫するが、我関せず。ニヤニヤと悪辣な笑みを浮かべているだけだった。
しかし、人間だれしも性器を触られていれば襲ってくるものがあるわけで。
「ん、んん、ンぐ、ン、」
「気持ちいいか?」
せりあがってくるゾクゾクとした感覚に、ぶるりと身体を震わせる。楽しそうに声を上げて笑う男が憎らしくて睨みあげれば、亀頭をグリッと抉られまた見悶える。口を塞がれていなければ霰のない声が漏れていただろうと思うと、羞恥で涙が出そうだった。
いやだ、やめろ、という声も全て、呻き声としてしか出てこない。ぐちゅぐちゅというはしたない音が耳を犯す。恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。
「ーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」
ぱたた、と滴り落ちる白濁が、白い布を汚していく。同時に襲う倦怠感に、ヘイデル王の身体に凭れるように倒れ込む。最早声も出す気になれず、俯いて虚空を見つめていると、男が顔を覗き込んできた。
口の中に突っ込まれた下着を抜き取られ、溜まった涎が口に違和感を残す。
白濁に濡れた太ももを見つめ、失笑してしまう。
あーあ、みっともない。気持ち悪い。何がって、俺が。敵地で敵に触られて快感を拾ってる自分が。皆は戦ってしんでいったのにおれはこんなとこでどれいのように。
がり、と手首を掻く。掻く。掻く。
それを見ていた男は何故か布で俺の陰部を拭き取ると、立ち上がった。
「……てっきり、拷問までされるのかと」
「そのつもりだったが」
壁に埋め込まれるようにして置かれた洋服棚から新しいガウンを取り出して座り込んでいた俺にかけると、奴は温度のない目で俺を見下ろした。
「萎えた」
「……そりゃ良かった」
かけられたガウンを気直し、ぼんやりと相手の顔を見返すと、何故か彼はくしゃりと顔を顰めた。……その顔は、初めて見たな。ーーあぁ。
「セレネとは違いました?今のでももっと可愛らしく喘ぎました?気持ちいい気持ちいいって啼きました?」
「……レーネ」
「だから言ったじゃないですか。俺はセレネじゃないって」
「わかっている」
「わかってないですよーーッッ"」
顎を掴まれ、無理やり上を向かされる。骨が軋む痛みに顔を顰めたが、すぐに俺は驚きに目を見張った。
「ーーわかっていないのはお前だ」
なんでそんな。
「うるさい」
「レーネ」
「うるさいうるさい」
「レーネ落ち着くんだ」
ーーバシッ!!!
「触んじゃねぇよ!!!!使い捨ての塵屑だって憐れんでんだろうが!!!俺はセレネじゃない!!!」
なんなんだもう。俺はただ戦って戦って国に勝利をーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おや、随分とお早い」
若かりし頃の自分とそっくりの声に振り返れば、ロバル王子の元から帰ってきたらしい息子がにこやかに此方を見つめている。特に返事をすることも無く歩みを再開すると、彼も引き止めたりはせず、斜め後ろを着いてきた。
「最後までなさらなかったので?」
「発狂したから寝かせた」
「……はぁ……お優しい」
今までにも、望んでいない行為に絶望する顔や泣き叫んで赦しを乞う顔を見てきたが。あんな顔は初めて見た。あんな、なにも見えていないかのようなーーいや、どこか違うところにいるような。
「17歳……か」
「セレネは好みではありませんでしたか?それなら俺にくれてもーーおっと、失礼」
「ルキナ」
「はい」
「心を手に入れるにはどうしたらいい」
28
お気に入りに追加
2,740
あなたにおすすめの小説
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
愚者×無精者のアイテムハンター ~学園ワーストワンツーがバディを組んだらSランクになりました~
サエトミユウ
ファンタジー
ジミー・モーガン(15)は、魔物討伐の養成学園に通っている。
その学園でバディを組んでいるのは、ランキングトップの弟。ジミーは弟に手柄をすべて奪われて、ランキング最下位だった。
ところが、ワースト二位のいるチームが解消してしまい、巻き込まれてジミーは弟とバディを解消し、ワースト二位とチームを組むことになる。
新バディであるエドウィン・フォックスの脳筋さに振り回されつつ魔物討伐の任務をこなしたら、互いに秘密があったようで、ワーストから脱出。おまけに二人で組んで以降、なぜかレアアイテムばかり手に入るようになった。
ランキングは爆上がり、教官からは「アイテムハンターにならないか?」と、奨められる。
弟との関係性、卒業後の将来を憂い悩みつつ、ジミーはエドウィンとともにアイテムハンターになるべく任務をこなしていくと、徐々に周りから認められ、馴染んでいくのだった。
――真面目世話焼き陰キャが猪突猛進陽キャのバディを組み、魔物を狩りまくりながら学園生活をなんだかんだ楽しく送っていくお話です!
BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
ハニーローズ ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~
悠月 星花
ファンタジー
「背筋を伸ばして凛とありたい」
トワイス国にアンナリーゼというお転婆な侯爵令嬢がいる。
アンナリーゼは、小さい頃に自分に関わる『予知夢』を見れるようになり、将来起こるであろう出来事を知っていくことになる。
幼馴染との結婚や家族や友人に囲まれ幸せな生活の予知夢見ていた。
いつの頃か、トワイス国の友好国であるローズディア公国とエルドア国を含めた三国が、インゼロ帝国から攻められ戦争になり、なすすべもなく家族や友人、そして大切な人を亡くすという夢を繰り返しみるようになる。
家族や友人、大切な人を守れる未来が欲しい。
アンナリーゼの必死の想いが、次代の女王『ハニーローズ』誕生という選択肢を増やす。
1つ1つの選択を積み重ね、みんなが幸せになれるようアンナリーゼは『予知夢』で見た未来を変革していく。
トワイス国の貴族として、強くたくましく、そして美しく成長していくアンナリーゼ。
その遊び場は、社交界へ学園へ隣国へと活躍の場所は変わっていく……
家族に支えられ、友人に慕われ、仲間を集め、愛する者たちが幸せな未来を生きられるよう、死の間際まで凛とした薔薇のように懸命に生きていく。
予知の先の未来に幸せを『ハニーローズ』に託し繋げることができるのか……
『予知夢』に翻弄されながら、懸命に生きていく母娘の物語。
※この作品は、「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルアップ+」「ノベリズム」にも掲載しています。
表紙は、菜見あぉ様にココナラにて依頼させていただきました。アンナリーゼとアンジェラです。
タイトルロゴは、草食動物様の企画にてお願いさせていただいたものです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる