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10 旅は道連れ、世は情けっ!

10―1 クロノス亭

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 10ー1 クロノス亭

 王都を出てから俺たちは、街道にそって走り続けた。
 この馬車の旅のためにアザゼルさんは、魔王連合ギルドにいる一番気立てがよくって、足の速い地竜を貸してくれていた。
 とはいえ、所詮、馬車の、いや、竜車の旅だ。
 1日に進める距離には限りがあるわけで。
 俺たちは、予定では、王都ルミニスからトリムナードまでを約一週間かけて旅することになっていた。
 その間、俺たちが通る予定の町は、12。
 内、宿泊予定の町は、6つ。
 その6ヶ所にそれぞれ魔王連合ギルドに所属している魔王たちがいるわけで。
 俺は、すでに嫌な予感でいっぱいだった。
 とにかく。
 安全に、何事もなく、トリムナードへと到着することを俺は、祈っていた。
 だが、アザゼルさんが貸し出してくれた地竜のおかげか、御者が優秀だったのか、どうも、予定より速いペースで進んでいる様だ。
 俺たちは、馬車に乗ったままいくつもの魔王領を越えていった。
 うん。
 これなら1日ぐらい速く到着しそうだな。
 この辺りは、比較的領主がしっかりしているからか、街道は、安全だった。
 だからか、道行く馬車や、旅人の数は、多かった。
 夕方。
 まだ、日が高いうちに御者がアルバートおじさんに次の町で今夜は宿泊する旨を伝えてきた。
 俺は、それをきいてアルバートおじさんに訊ねた。
 「もう1つぐらい進めそうだけど?」
 「御者のダイは、ここで宿泊した方がいいといっているし、俺もそう思う」
 アルバートおじさんが告げた。
 「お前の体調もあるし、何より、ダイが言うには、もうすぐ雨が降るらしい」
 御者竜車を停めたのは、ララミアという街だった。
 ここは、魔王ラミー・ララミアが治める街で規模としては、中ぐらいの街だった。
 そこそこに賑わっているし、かなりいい街のようだった。
 俺たちは、宿の前に停められた竜車から降りると、美しい女将が迎えてくれた。
 「いらっしゃいませ」
 女将は、俺たちをじろじろと値踏みするように見つめた。
 そして、踵を返すと俺たちを宿へと案内した。
 「ここは、『クロノス亭』このララミアの街で一番の宿屋です」
 女将は、にっこりと微笑んだ。
 「ごゆっくりと休まれてくださいませ」
 
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