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7 魔王の都の春の祭り(2)

7―9 乱入ですか?

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 7ー9 乱入ですか?

 婚姻の儀がすんで魔王城へと帰る途中に、俺は、サティ様と話した。
 「すいませんでした。本当なら、あなたが『花送り』に選ばれるはずだったのに」
 「いいんですよ、ティル様」
 サティ様は、可愛らしく微笑んでいた。
 「それにどうせなら私は、あなたから『花送り』をしていただきたいですわ」
 マジですか?
 俺は、かぁっと頬が熱くなった。
 サティ様は、いたづらっぽく俺を見上げた。
 「あなたと魔王様たちは、愛の女神の祝福を確かに受けておられますもの」
 俺は、いたたまれなくなっていた。
 そんな俺を待ち構えていたテオが駆け寄ってきて、俺は、さらに頬が火照ってくるのを感じていた。
 なんか、俺は、奇妙な多幸感に包まれていた。

 「何か、いいことがおありでしたか?『聖王』様」
 祭りの終わりに皆が魔王城前の広場に集まって踊り歌い、騒いでいるのを魔王城のバルコニーから見ていた俺にルーミッジ辺境伯が声をかけてきた。
 ルーミッジ辺境伯は、貴族とも思えない気さくで地味で平凡な外見のおっさんだ。
 ここ最近のカナンの村の変化に戸惑いつつも、それを喜んで受け入れようとしてくれている。
 俺は、ルーミッジ辺境伯に小声で答えた。
 「実は、知り合いの『花送り』に立ち会っていたので」
 「それは、素晴らしい!」
 どっと観衆が声をあげて俺たちは、そちらへと意識を戻した。
 ガイが祭りの終わりを告げた後、俺とサティ様の婚約を発表したのだ。
 俺とサティ様は、ガイに呼ばれてバルコニーの前に出た。
 観衆のうねりに圧倒される。
 「おめでとうございます!『聖王』様!」
 「サティ様!」
 わっと盛り上がる人々を前に俺とサティ様は、並んで手を振るようにと促された。
 そのときだった。
 天空から雷鳴が轟き、雷がバルコニーの俺たちの前に落ちた。
 な、何?
 驚いている俺の前に藍色の瞳と闇色の髪を持つ大男が立っていた。
 大男は、俺を見てにやり、と笑った。
 「迎えに来た。我が花嫁よ」
 はい?
 俺は、はっと気づいてサティ様のいる方を見た。
 アストレイがすでにサティ様の前に出て男と対峙していた。
 しかし大男は、サティ様には見向きもしないで俺に向かって手を伸ばすと抱き寄せた。
 「ティル!」
 ガイが俺に向かって叫んだ。
 ガイ!
 俺は、大男の腕に抱かれながらガイの方へと手を伸ばしたがそれは叶わなかった。
 ぐわん、と辺りの景色が歪んで、俺は、意識が遠退いていくのを感じていた。
 
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