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6 魔王の都の春の祭り

6―10 誘拐ですか?

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 6ー10 誘拐ですか?

 ハツ様が気がついたのは、翌日の朝のことだった。
 俺は、1人でハツ様が目覚められるまでお側に付き添っていた。
 そのころ城では、ちょっとした騒ぎが起こっていたため、その対応のためにガイとテオは、手をとられて俺を迎えにくるのが遅れていたのだという。
 それは、この村が魔族の結界内にあることもあった。
 この中で俺は、絶対的に安全だった。
 「ここは?」
 目覚めたハツ様に俺は、家に常備していたはちみつ茶を入れて差し出した。
 ハツ様は、それを奪い取るようにして飲み干した。
 かなり、苦労されたのだろう。
 俺は、お湯を沸かしてたらいに湯をはりハツ様の体を洗い清めた。
 着替えがなかったので、ハツ様は、着ていた服を浄化して身に付けられた。
 簡単な食事を用意して、2人で食べる。
 ハツ様は、無言で食事をとられていたが食べながら涙を流しておられた。
 ハツ様は、俺よりはだいぶ若かったがそれでも30才は越えていたはずだ。
 だが、久しぶりに見るハツ様の面影は、俺より老けているように思われた。
 俺は、食事を終えて涙を拭っているハツ様にそっとお茶を入れると、黙ったままハツ様の様子を伺っていた。
 ハツ様は、口を開くと俺に震える声で呟いた。
 「すまない、ティル。許してくれ」
 「ハツ様?」
 次の瞬間、俺の意識は、失われた。

 気がつくと、俺は、見知らぬ場所にいた。
 白い壁に囲まれた窓のない部屋の中央に置かれたベッドの上に俺は、横たわっていた。
 ここ、は?
 俺は、ゆっくりと体を起こすとベッドから出た。
 白い石の床は、仄かに暖かかった。
 俺は、ベッドに腰かけて自分の体を見下ろした。
 俺は、裸だった。
 はいぃっ?
 ちょっと焦って掛布を身に巻き付ける。
 なんで?
 俺は、ざっと体を見た。
 どうやら、服を着ていないだけで何もされてはいない様子だったので、俺は、ほっと息をついた。
 「気がつかれましたか?『聖王』よ」
 俺は、声の方を振り向いた。
 そこには、豪奢な金髪に美しい紫の瞳を持つ白衣の美しい男が立っていた。
 
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