奥様は腐っている~やる気ないけどなんとなく玉の輿狙っていたのに婚約破棄されて腹立ちまぎれに通販で買った何かの卵を孵化してみました~

トモモト ヨシユキ

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6 魔王の都の春の祭り

6―9 お前たちだけだ!

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 6ー9 お前たちだけだ!

 俺のハツ様への印象は、いまだに変わってはいない。
 なぜなら、奥様の性格を知っている俺は、ハツ様に同情しているからだった。
 奥様は、いい人だ。
 でも、世間一般からすれば、少し、というかだいぶん普通ではない人だった。
 穏やかで、清廉潔白なハツ様にとっては、不似合いな相手に思われた。
 だから、俺は、ハツ様が聖女ルルぅ様と駆け落ちされたときいたときもたいして驚くことがなかった。
 ただ、お二人が無事であることだけを祈っていた。
 ハツ様は、それから丸一日、眠り続け、俺は、そのままハツ様に付き添っていた。
 俺がこの家にいることは、すぐに魔族たちの知るところになったが、俺たちにとって幸いだったことに、祭りのため、みなが忙しく、魔王城を抜け出した俺が家に帰っていることに安堵していたのか、テオ以外の者が迎えにくることがなかった。
 テオは、ごく幼い頃にハツ様に会ったことがあった。
 だから、ハツ様がどのような方かもだいたいはわかっていた。
 だから、テオは、俺がハツ様に付き添いたいといったときに、不承不承頷いた。
 「でも、お仕置きの覚悟はしといた方がいいぜ、ティル」
 テオは、俺を壁に押し付けてキスしながら耳元で囁いた。
 お仕置き。
 そうきいて俺は、どきん、と心臓が跳ねるのを感じた。
 また、ガイにあんな風に責められるのか。
 俺は、頬が熱くなるがわかった。
 「何?ティルは、お仕置きされたいの?」
 テオが低く耳をくすぐる。
 俺は、あわてて答えた。
 「そんなわけがあるか!」
 テオは、俺がハツ様と一緒だということは秘密にしてくれた。
 そして、俺が1人になりたがっているために家で過ごしていると魔族たちに伝えてくれた。
 「後で、くる」
 テオは、城での用事をすませてからまた、俺のもとへと戻るつもりだった。
 「だから、浮気は、するな!わかったか?」
 テオにいわれて俺は、鼻で笑った。
 「誰が浮気なんか」
 「わかるもんか」
 テオが俺の首もとへと唇を落とした。そこにちゅっと口づけされて俺は、熱い吐息を漏らした。
 「こんなに快楽に弱いんだからな」
 「そんなこと」
 俺は、顔を反らした。
 「お前たちだけ、だ」
 「約束だぞ、ティル」
 テオは、そういうと城へといったん戻っていった。
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