上 下
75 / 110
6 魔王の都の春の祭り

6―6 しばらくお待ちください!

しおりを挟む
 6ー6 しばらくお待ちください!

 俺と勇者様は、サティ様に呼ばれて彼女らのテーブルへと移った。
 近くで見るとサティ様は、ごく幼い美少女だった。
 「寛ぎの時、お邪魔して申し訳ございません、『聖王』様。初めてお目にかかります、私は、ジストニア王国第3王女サティ・ジストニアでございます」
 俺は、サティ様の挨拶をきいて、いたたまれなく思っていた。
 『聖王』って、誰が言い出したわけ?
 俺、神子様から『聖王』とか呼ばれちゃうようなこと何もしてませんけど?
 「ご丁寧なご挨拶をありがとうございます。俺は、カナンの村のティル・ソニアです」
 俺は、サティ様ににっこりと微笑んだ。
 「この度は、『雪花の祭り』においでくださりありがとうございます」
 「いえ、こちらこそ、お招きをいたたきましてありがとうございます。とても盛大なお祭りのようで楽しませていただいております」
 「それは、よかったです」
 俺は、やんわりと問いかけた。
 「で、何か俺にご用ですか?」
 「ええ。その、少し『聖王』様にご相談があって」
 サティ様がぽぅっと頬を赤らめた。
 「たぶん、もうすぐ父王からの知らせがくると思いますが、この度、私、サティ・ジストニアは、『聖王』様の婚約者となることになりました」
 はいぃっ?
 俺は、驚いたなんてもんじゃなかった。
 なんですと?
 サティ様のお相手は、ロリコン勇者様じゃなかったんですか?
 なんで、俺?
 驚きを隠せない俺にサティ様は、さらに頬を赤らめた。
 「驚かれるのは無理もありません。『聖王』様は、私のような小娘よりもその、ここにいるアストレイのような方がお好みだとか。まだ成人もしていない私のようなものなど、ご興味もないかもしれませんが」
 はい?
 俺は、目が点だった。
 なにその誤情報。
 まるで、俺が男が好きだというようなこと、誰が言ってるの?
 俺は、女が好きなんだよ!
 俺は、プチパニックになっていた。
 いったい、この子にどこから突っ込んでいけばいいわけですか?
 俺は、軽く咳払いをした。
 「あの、失礼ですがサティ様」
 「はい?」
 その怯える小動物のような目は、やめてくれ!
 俺は、サティ様のことを凝視した。
 「あの、誤解があるようなので。俺は、間違いなく異性愛者なんでお間違いなく」
 俺は、サティ様にお伝えした。すると、サティ様の顔がみるみる青ざめた。
 「本当ですか?」
 「本当です!」
 俺が言うと、サティ様は、ますます顔を真っ青にした。
 「すみません!こちらに不手際がござました。しばらくお待ちください!」
しおりを挟む

処理中です...