上 下
46 / 110
4 おっさんは、誰のもの?

4―5 お仕事ですか?

しおりを挟む
 4ー5 お仕事ですか?

 俺は、今、ベッドで座って飯を食っていた。
 理由は、腰が抜けて動けなかったからだ。
 魔王は、かいがいしく俺の世話をしてくれた。
 トレーにのせた朝食を運んでくると俺にそれを食べさせてくれた。
 朝食は、粥のようなものだった。
 たぶん、俺が最近何も食べられてなかったから奥様が消化にいいものを用意してくれたんだろう。
 俺は、久しぶりに吐き気もなく空腹を感じていた。
 だけど。
 魔王は、俺に向かってスプーンを差し出した。
 「口を開けろ!」
 「いや、いや、いや」
 俺は、彼を手で制した。
 「自分で食べるから」
 「私に逆らうか!」
 魔王が俺を威嚇した。俺は、仕方なくしぶしぶ口を開いた。魔王は、満足した様子で俺の口へと粥を運んで食べさせた。
 ほんのりと甘い。
 粥は、おいしくって。
 俺は、完食していた。
 食べ終えた俺に、魔王は、ゆっくりと休むようにと告げて部屋から出ていった。
 1人になった俺は、いつしかうとうととまどろんでいた。
 子供の頃に感じていた幸福感を感じて、俺は、静かに目を閉じた。
 あれ?
 微かに体に伝わってくる振動を感じて、俺は、目を開いた。
 なんだか、すごい嫌な予感がする。
 俺は、なんとかベッドから出るとよろよろと窓辺へと近づき外を見た。
 家の隣に大きな建物が建っている?
 この家の5倍は、でかいお屋敷だった。
 なんですと?
 俺は、建物の側に立っている奥様たちを見つけて窓を開いて叫んだ。
 「奥様!」
 奥様は、笑顔で俺に手を振った。
 いや。
 挨拶じゃねぇし!
 俺は、深いため息をついて部屋を飛び出した。
 「奥様!」
 俺が家から駆け出して側に近づくと奥様は、驚いた表情を浮かべた。
 「今日は、1日、ゆっくりしてるってガイが言ってたんだけど?」
 「いったい、何をしてるんです?」
 「何って」
 奥様は、あっけらかんとして答えた。
 「お仕事してるのよ、お仕事」
 はい?
 俺は、周囲を見回した。
 俺の家の周囲には、村中の人が集まっているようだった。人々は、土を運んだり木材を運んだりし働いていた。
 「仕事って」
 「ティル兄ちゃん!」
 背後からサナが声をかけてきて、俺は、振り向いた。
 そこには、満面の笑みを浮かべたサナと村人たちの姿があった。
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

鳥籠の花

BL / 連載中 24h.ポイント:320pt お気に入り:6

ぽっちゃり悪役令息はテンプレを邁進する

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:199

生きるのが下手な僕たちは、それでも命を愛したい。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,385pt お気に入り:442

リオ・プレンダーガストはラスボスである

BL / 連載中 24h.ポイント:30,992pt お気に入り:1,869

月夜の小鳥は哀切な嘘をつく

BL / 連載中 24h.ポイント:1,456pt お気に入り:48

婚約破棄された俺の農業異世界生活

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:1,239

二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

BL / 連載中 24h.ポイント:420pt お気に入り:5

処理中です...