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3 おっさん、故郷へ帰る

3―13 追っ手ですか?

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 3ー13 追っ手ですか?

 「すごくいい感じ」
 ミミル先生が感心したように呟いた。
 「まるで聖域みたいに空気がきれい」
 「ここなら、きっと、ティルの体調も回復するわね」
 奥様は、サナが帰るとすぐにいつもの銀色の板を取り出して『通販』を始めた。
 「当分暮らすのに必要なものを揃えなきゃね」
 奥様が板をポチっと押す度に何もない空間から真新しい品物が現れた。
 奥様とミミル先生は、いろいろ2人で話ながら『通販』を続けていた。
 キュウは、ソファでうたた寝を始めた。
 俺とテオは、台所にいってなんか食べ物がないか調べていた。
 もちろん、そんなものがある筈もないんだが。
 俺たちは、奥様が『通販』で手に入れた食材で夕飯を調理した。
 夕食を食った後も、奥様とミミル先生は、なにやら密談していた。
 俺は、旅の汚れを落としたくって近所の湖へと水浴びにいくことにした。
 この家には、風呂はないからな。
 俺が出掛けようとするとテオがついてきた。
 「俺も行く」
 俺たちは、夜道を二人で湖まで歩いた。
 月が出ていて。
 俺は、子供の頃にじいちゃんと水浴びにいったときのことを思い出していた。
 「何を考えている?」
 テオがきいてきたので、俺は、ふっと笑った。
 「子供の頃にもこうして水浴びに行ったなと思ってさ」
 夜の湖は、月明かりに輝いていた。
 俺は、岸辺で服を脱ぐと湖の中へと入っていった。
 水が苦手なテオは、岸に残って俺が水浴びしているのを見ていた。
 この時期、湖の水は、水浴びするには少し冷たい。
 俺は、体をぶるっと震わせた。
 水の冷たさに鳥肌がたつ。
 「あんまり遠くには行くな!」
 テオが言ったが、俺は、笑い飛ばした。
 「ここは、俺のガキのときから知ってる水浴び場だぞ」
 俺は、湖の中央辺りへと泳いでいった。
 月に輝く水面が揺れて美しい。
 そのとき、急に何かが俺の足に巻き付いた。
 「!」
 俺は、湖へと引き込まれた。
 苦しい!
 俺の足を引っ張っている何かから逃れようと暴れたが、それは、強く俺の足を掴んで離そうとはしない。
 もう、ダメだ!
 俺が諦めかけたとき、誰かが俺の足元に現れて、俺の足を掴む何かを剣でないだ。
 溺れかけていた俺をその誰かは、抱き抱えると水面へと泳いだ。
 「ぷぁっ!」
 水面へと浮かび上がった俺の前には、あのとき銀髪の魔族がいた。
 「探したぞ、ティル」
 はい?
 四本角の魔族は、俺を抱き締めて囁いた。
 「もう、離さない。我が番よ」
 
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